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鮭様大好き♡秀吉絶対ぶっ潰す!  作者: みたらし丹後
最上家細うで繫盛記
24/66

23.羽黒衆その1

〇大崎重雄〇

「はあ。楓の能力と滋野様のことを存じておる。家人ですか? 」

 定直殿が、少し間の抜けた返事をする。


「左様。われらの事を知っている家人を教えてもらいたい。他の家や他国の者が、われらの正体を知れば。さて、如何(いかが)あいなりますかな?」


 今まで落ち着いた表情をしていた。定道、定直殿。叔父甥の顔に緊張が走る。


「ワシがその立場であれば。取り込む。(あた)わぬなら。(しい)します。危険すぎる。」


「これ。伊予守殿。」定道殿が甥っ子に対して、(たしな)めるような目をして、話す。


「流石ですな、伊予守殿。われの考えも、同じです。神世(かみよ)の知恵を持ち、先の世を見通す未来眼。怖いでしょう。われならそんな恐ろしい者。真っ先に殺しますよ。」


「や! これは一大事なのですな。」定道殿は事の重大さに気が付いて。慌てる。

 定直殿はうんうんと頷いている。


「とりあえず。われの把握しているのは、ここのお二方。お八重殿。お清殿。ですな。」

「他におられますかな? 」


「お雅が。感の良い、女子ですので、感づいておるかも。」

 口ひげを撫でながら。定直殿が答える。


「楓殿に対しては、思うところもありそうですな。そこは御使いのわれが、なんとかしましょう。」

「清殿もな。」

「しかし・・・。」

 困った顔をして。扇子を開いたり閉じたり。「パチパチ」と音を立てながら考え込む。


「滋野様。如何なされました? 」

 不思議そうに、定道殿が訊ねてくる。


「八重殿は、定直殿。口止めお願いします。」

 定直殿が頷く。


「われの案じることは。今までの楓殿の行いです。」

「すなわち。脚気の対応でござるよ。」


「あ! 」

 定直殿が、思い当たるようだ。

 みるみる間に、顔色が悪くなる。


「如何された? 」

 叔父が甥に訊ねる。


「実はですな。楓が四方那草姫(よもなくさひめ)様の神域に、(かくま)っていただいてる間。つまり、ここ2年余り間。お雅が、楓の行った脚気の治療を。喧伝(けんでん)しましてな。それが評判を呼びまして。つい先だってお城の殿の耳まで、届いてしまいました。」

「近日中に楓の謁見を義守様は、望んでおります。」

 気まずそうにカミングアウトする。定直殿。


「なんと! 雅子殿が楓の名を広めてしまったと! 」

 無自覚に。甥御を追い詰める叔父御。

 

「左様にて・・・。誠にあいすいませぬ。」

 申し訳なさげに詫びる。定直殿。

 

「お二方しばし、お待ちを。只今。楓殿を起こして、話しをします。」


「楓起きろ! 楓! 」楓を揺り起こすイメージで、話しかける。


『起きてた。見てた。なんか揉めてるみたいだけど。父上悪くないじゃん。母上も悪意で広めたわけじゃないし。』


「そうじゃな。ではワシが算段してよいのか? 」


『爺さんに全部任せるよ。よろしくね。』


「分かった。任せておけ。」


 目を開けて氏家甥御と叔父御を見る。

「お二方。楓殿は今の話なんとも。思ってないようですな。すべての差配を、われに任してくれるそうです。」


「そうですか。すまんな楓。」

 定直殿がうなだれながら、答える。

 

「ただ。われの懸念は、われと楓殿は知力と神力は、正に化け物ですが。武力はただの幼女です。刺客に襲われたら、あっけなく死にます。つまり常に楓殿を守る。者が必要なのです。」

「用人の岡田弥太郎殿は、確かな(つか)い手のようですが、常にわれらに付き従い。守る事のみをお役目にするのは、(あた)いません。」


「確かに。今一番恐れるべきは、滋野様と楓の身の大事。弥太郎は鹿島新當流(かしましんとうりゅう)目録位(もくろくい)ですが、守る事に長けているわけではない。良い案が浮かびませぬ。」

 腕を組み。思案しながら。こちらをチラチラと見る定直殿。


「では。われの案を聞いていただきたい。」

「定直殿。今家臣を2名。そうですな。年20貫(約300万円)の俸禄(ほうろく)で、増やすこと(あた)いますか? 」


「それにより、滋野様と楓の命の保障がされるならば。安いものです。」定直殿は頷く。


「かたじけない。その2名は羽黒衆(はぐろしゅう)手練(てだ)れを考えております。」


「!!!」

「なんと!」

 氏家叔父甥の声が重なる。


「失礼ですが、滋野様は羽黒衆(はぐろしゅう)というものをよくご存知ではないと思います。残忍狡猾(ざんにんこうかつ)で、怪しい術を遣い。金次第でどちらにも転びます。あのような者を士分(しぶん)に取り立てるなど。」

 目を()いて、反対する。定直殿。


「実は。われの生家。信濃滋野家は、分家に甲賀忍び衆の棟梁(とうりょう)がおりましてな。その名を望月家と申します。甲賀望月家の支流です。つまり、滋野家は忍びの総主(そうしゅ)のようなものでしてな。忍びの扱いに関しては。十分に心得ております。」

「一つこの善盛に、任せてもらえませんかな? 」


「他に良い手だてが、浮かびません。」

 定直殿が、渋々といった感じで頷く。


「くっ! わっはっはっは!!あの厄介な羽黒の忍びを配下に。これはよい。ワシには考えもつかなんだ。」

 今まで静かにしていた。定道殿が大笑いをする。そして、おもむろにすっくと立ちあがる。


「さて。お二方。この爺より、取って置きの物をお見せしよう。丁度外も白んできた。少し付き合ってくだされ。」

 既に夜が明けて、辺りは明るくなっていた。


 龕灯(がんどう)※1のような物を手に持ち。我らを離れから、中庭へと誘導する定道殿。中庭を抜けて、4つある蔵のうちの1つの前に着いた。


「叔父上。これは。」定直殿が少し驚いた顔をして、蔵を下より見上げる。


「左様。お主の父上殿。つまりワシの兄上より、(たまわ)った蔵だ。定直殿も中を見たことが、なかろうな。」

 懐から大きなカギを取り出して、錠前をガチャリと開ける。分厚い蔵の扉をギギギっと開けた。

 蔵内に入り龕灯(がんどう)の火を、備え付けの蝋燭(ろうそく)へと移していく。そして。

「さっどうぞ中へ。」と中から手招きする。


 ワシと定直殿が中に入ると。蔵の奥を指さす。

 そこには蜜柑箱より、ふた回り位大きな木箱が、20箱以上。それと厳重に鉄で回りを補強された。千両箱のような箱が1箱。定道殿は、その木箱と千両箱をそれぞれ1つ開ける。

 木箱には紐を通した永楽通宝の束が、無数に積み上げられていた。千両箱には黄金色の小さな粒塊(つぶかたま)りが、満杯になっている。


隠居銭(いんきょぜに)。おおよそ二千貫(約3億円)でござる。銭が千貫。金が十貫目(約30㎏)ほどあります。」

「返上した領地より。上がった年貢と運上(うんじょう)※2です。これといって銭を使うこともなく。気が付いたら貯まっておりました。」


「叔父上。」あまりの金額に定直殿が愕然としている。


「すまんな、定直殿。この銭ワシが逝ったら、お主に(のこ)すつもりだったのだ。だか、大きな目的が出来た。」

「滋野様。」

 手をつき低頭(ていとう)して、こちらに向けて、土下座の姿勢をとる。

「どうぞ、この銭存分にお使いくだされ。」

「そして一つお願いが。」


「なんでしょうな? 」

 ワシが訊ねると更に頭を下げて。蔵の床に顔を付ける。


「是非とも貴方様の旗下(きか)に加わりたく。何卒。何卒。」


「それは困りますぞ。定道殿。」

 ワシが困った顔をして、扇子をポンポンと首に当てていると。定道殿が残念そうに訊ねてくる。


「なりませんか? 」


「主君が配下から、持参金を得るなど。面目丸つぶれです。この貴重な銭は、是非ともわれに貸してくだされ。」


「や! では! 」

 ぱあと明るい笑みになる。定道殿。


氏家助左衛門定道(うじいえすけざえもんさだみち)殿。この滋野善盛(しげのよしもり)(うけたまわ)った。われの配下になったからには、退屈させぬ。よしなにな。」


「ははー!!」


この日。氏家家に於いて。数え五歳の主君と五十二歳の家臣が、誕生した。

※1龕灯 携帯用ランプの一種。

※2運上 近代の日本における租税の一種。


次回投稿は03/04の予定です。

03/02誤字誤植修正。

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