08 バレッタ寝
08 バレッタ寝
好樹は寝息を立てているバレッタを背負った。
(重い…。)
運動不足の好樹はそう思ったが、声には出さなかった。
「ミント、女の子に対してその感情は失礼だと思うよ。」
「…うる、さい。」
はあはあと息を切らしながら煙が充満した階段を登りきると、そこにはシスターがいた。
「…何があったんですか?」
「爆弾が仕掛けられていたらしく、それが爆発しました。」
「…あの地下室には、いろいろと良くない話が伝わっていますが…まさか爆弾だったとは…。」
「不発弾があるかもしれません。誰も入らせないということを徹底して頂けるとありがたいです。」
「分かりました。…その子は大丈夫なんですか?」
「…普通に寝ているだけです。」
「そうですか。えっと…。」
質問はこの後十数分に渡って続いた。
バレッタの家に着くと村長が出迎えてくれた。
バレッタを寝かせてから、出来るだけ正確に事のあらましを伝えた。
「…それは災難でしたな。バレッタが迷惑をかけました。お詫びします。すみませんでした。」
「そんな。こちらこそバレッタさんを危険な目にあわせてしまってすみません。」
「…それと、バレッタを助けてくれてありがとうございました。このようなことがあった後ではと失礼を承知で申し上げると、これからもいろいろなところにバレッタを連れて行って欲しいのです。」
「…え?で、でもこれからもまた命の危険が及ぶ可能性がありまして…。」
「好樹さんは最初に『責任はとれない』とおっしゃっていましたね。忘れたとは言わせません。」
開きかけた好樹の口を村長は封じる。
(ああ、そういえばそんなことを言った…か。)
好樹はやっと思い出す。
「さて、そういうことで。整理しますと、私はバレッタ・好樹さんの両方の了承を得た場合、旅をしてほしいのです。好樹さん、いいでしょうか。」
「………。分かりました。バレッタが良いというならば。一緒に旅をしましょう。」
好樹は頭を下げてからバレッタの家から出ようとした。
村長が呼び止める。
「好樹君、渡したいものがあるのだが。」
「…お金なら、もう十二分に頂きました。ですからお金ならもう受け取れませんからね。」
そう言いながら、好樹は村長に近付く。
「さて、これはバレッタの分だ。バレッタのために使ってくれ。もちろん、自分のために使っていいんだからね。」
そういって、村長は好樹の手にお金の入った袋を握らせた。
(…また貰ってしまった。)
好樹は宿への道で、そう思った。