01 ちかせかい
01 ちかせかい
みーくんの自称・魔法により、水和好樹はおしりの方から落ちた。
下は藁だったので、そこまで痛くもなかった。
(死んだと思ったー。)
好樹の心臓が今にも破裂しそうな状況で、みーくんが静かにつぶやいた。
「あ、まずい。今から五分後にここにはいない方が良い。」
「どうして?」
「理由は分からないけど、嫌な予感がする。」
好樹は立ち上がった。
天井は茶色く、ごつごつとしている。
ところどころに白く明るい丸いものが付いている。
藁があった場所は上の世界でいうところの塀の様なもので囲まれていた。
周りの建物は、レンガ造り。
好樹はみーくんに聞く。
「ところで、どうしたらいいんだろう。」
「ねえ、もしかして上の世界から来た人?」
びっくりして振り返ると女の子がこちらを覗き込んでいた。
白いワンピースの様な服を着ている。髪は肩辺りまである黒髪。顔立ちはよく、女性に疎い僕でも可愛いのは分かるが、少しやせすぎている。
「君は、誰?」
「ああ、ごめんなさい。私はバレッタ。この村の村長の一人娘よ。」
「……そんなことを初対面の人に言っていいの?」
「ここの言葉を話す上の世界の人に悪い人はいないわ。」
「それは誤解だと思うよ。気を付けた方が良い。」
「それは上の世界から来た人、皆が言うわ。」
「いろんな人がこっちに来てるんだ……ところで、ここは何処?なんていうところ?」
「ここは見てわかる通り地下の世界よ。私も空というものを見てみたいわ。上の世界には『おひさま』ってものがあって一日十分くらいはその光を浴びると健康的に過ごせると親から伝え聞いたわ。」
「間違ってはいない…よね?みーくん。」
みーくんは冷ややかに言う。
「『おひさま』についてはね。ってか、みーくんはミントと一心同体なんだから。ミントの心を読めるってこと忘れないでよ。」
好樹は忘れたわけではない。つい可愛い女の子に話しかけられ動揺していたのは否定出来ないが。
「あれ、そのメガネ…。」
「ああ、これはみーくん。話せるんだよ、魔法も使えるし。」
何やらバレッタは思案顔。
「ねえ、私のお父さんのところに行かない?」
「お父さんって…村長?」
「そうそう。」
好樹は特に断る理由もないと思い、ついていくことにした。
二人が歩き始めようとしたとき、藁の真上の天井が円形にへこみ、へこんだ部分がスライドする。
空いた大きな穴から芋虫みたいな生きた何かが大量に降ってきた。