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プロローグ

朝、目が覚めると子供になっていた。


いや、夢じゃなくてリアルに…。


昨日は何時も通りに自分の家の、自分の部屋で寝た。


その筈だ。


おかしな所は何もない、その日に限って身体の調子が悪いとか、急に真っ白い世界に居たとか、交差点でトラックと運命的な出会いをし、強烈なハグも受けていなければ、それこそ究極、神様に会ったとか、妖精や美少女召喚士に呼ばれたとか言うファンタジックな素敵な事は何一つとしてなかった。


それが目を覚ませば、何処の誰とも知らない銀髪ロングの幼児、しかも美少年の体に憑依していて、ボロアパートの畳張りの部屋に寝ていた筈が、流石にこんな家畜小屋みたいな所ではなかった。


今、俺の居る部屋は、レンガを積み立てただけの隙間風がビュンビュンと吹いてくる倉庫ぽっい部屋に居て、その部屋にポツンと置いてある。木で粗雑に組み立てられたベッドに一枚の布切れだけを被って寝ていた。


うん、道理でさむい訳だよ。これで冬なら俺は凍死してたわ。


ってかホントにこれどういう状況ですか神様?


…数分間、何もせずに布団と言う名の幻想をイメージしつつ、ボロ布包まり寒さをしのぐ、そのまま背だけを起してから寝起きでボーッとしている頭をフル稼働させ、今の自分が置かれている状況と、今後の行動について考えてみる。


何がどうなってこんな事になっているのか?


もちろん不明だ。


可能であれば夢の世界にダイブしたいところではあるが、先ほどまでグッスリと寝ていたこの身は、こんな場所で寝ていたにも関わらず、気分爽快で頭も冴えているため、それも出来そうにない。


あと、こんな場所では寝れねぇ。となればこの摩訶不思議な状況を早期に解決する為にも、行動するしかないのだろう。


このまま部屋でジッと考えていても仕方がない。


部屋から出て情報収集に行けば何かこんな事になっている事情が少しは判るかもしれないし、

此処が何処でどんな場所なのかくらいは最低でも分かるだろう。


まずはこの部屋を出る事から始めよう。


「さて、部屋を出てみたのは良いけど…。出た途端、外とか、俺にどうしろと?」


部屋を出てさあ、行こうと歩き出したまでは良かったのだか、部屋を出たと同時に見えた麦畑にポツポツと見えるレンガ作りの掘っ建て小屋。


早速、どちらに行くべきなのか迷ってしまう。畑に行ってみるか、遠くにある小屋に向かってみるか、それともこのまま扉を閉めるべきか…。


こういう場合は下手に動かない方が良いのだろうか?


カッチャ

「何処に行くの兄さん?」


背後から聞こえた声に振り向くと、そこに居たのは、今の俺と同じ髪色をしたこれまた美少年だった。その少年が俺が先ほど部屋から出て来た同じ扉から姿を現した。


「ん… だ、誰だお前は?」


というか俺が最初に居た部屋にもう一つ扉有ったか?


一応、俺はあの部屋の中を一通り見てから、唯一見つけたその扉から外に出て来た筈なのだが…。


「っえ? だ、誰ってティックス……?…だ、よ。……ん?」


ティックスか、うん全く知らない名だな。この子が俺の事を兄さんと言っていることから、俺(俺が憑依している身体の主)とこの子の関係は兄弟と思って良いだろう。


「あぁー、いやすまん。どうやらまだ寝ぼけているみたいだ」


どういうきっかけで俺がこの身体に憑依してしまったのかは不明だが、このリアルさからして夢ということはないだろう。


これからこの身体で生活していくとこととなると、早急にこの身体の主と家族の状況程度は把握しないとな。


「あ、あれぇ?……に、兄さんが喋って、…るの⁉」

「ッへ⁈ 俺が話したら変なのか?」


な、なんだよ、早速何か対応を間違えたか?確かにこの身体の見た目の年齢は恐らく、10〜12歳程度、話し方が少し大人過ぎたかも知れない。


だか、たったそれだけでこんな大仰な反応をするだろうか?

話し方のちがいなど、この程度の年齢の子であれば、それこそ友達、近所の大人等に影響されて、コロコロと変わる時分だと思うんだが…。


「やっぱり喋ってる⁈ と、父さん‼母さん‼ に、兄さんが喋ってるよっ⁉」

「っておい⁈ 何処に行くんだお前⁉」


そんなに驚くことでもないことに驚愕の表情を浮かべて、先ほど開けて出て来たばかりの扉を駆け戻って行った少年、確かティックスと言う名だったかを追いかて、俺も最初に目覚めた部屋の中に戻る。


「…こんなところに扉が有ったのかよ。通りで気付かない訳だ」


最初に意識が戻り探した時には気付かなかった扉が、外へ出る扉とは反対側にあった。

その扉は、壁の一部をくり貫いて、それにそのまま蝶番を取り付け、扉にした様なものだった。


よってドアノブも無ければ、鍵穴すらない、あの少年が通った反動で前後に揺れていなければ、それが扉と気付くのは難しかっただろう。


「ほ、本当だって!本当に兄さんが喋ったんだよ母さん‼」


「そんなわけないでしょう。あの子はティックスと違って、頭が普通じゃないんだから!」


ギィギギ!

「っあ!兄さん⁈」


俺が扉を押し開けて中に入ると、其処には台所とリビングを兼ねた様な部屋であり、その中には先程の少年と、恰幅のいい金髪の女性の二人が居た。格好は俺と同じで小汚いボロ布を着ていることから、俺と少年の母親ではないかと思われる。


何やら少年の方は、困惑した表情で俺を見ているが本当にさっきからなんなんだ?


「あらレックス、おはよう!今日は行かなかったのね?」


俺が少年に対して、今後の対応策を決めかねていると、母親であろう女性が、俺に向かって愛嬌のある笑顔で、和やかに挨拶をしてきた。


さて、どうする?

少年は何やら期待している様な視線で俺を見ている。


また変に大人ぶって話すと、一騒動起きそうだな、しかし、このまま無視というのも、態度が悪いと目の前の女性に怒られそうである。


ここは無難にひとことだけで終わらせるか。


「…おはよ」

「うん!おはよ‼ ……ってええっ⁉ っあ、貴方ぁああッツ‼」

「ね!ね‼ だから僕言ったでしょ⁉」

「うおッツ⁈」


一瞬の間があってからの絶叫に、一体何が駄目だったんだ?とそう思い、俺が頭を抱えるその横で、女性はヨタヨタとした足どりでリビングの奥にある暖簾をくぐり奥へと消える、すると少ししてから奥が騒がしくなり、トム!トム!起きて!という声が聞こえてきた。


取り敢えず今までに解ったことは三つだ。


一つ、俺の名前がレックスということ。


二つ、母親と父親、そして弟がいること。


三つ、俺の頭が普通ではないらしいこと。


「・・・一体どうすれば正解だったんだよ!!?」



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