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流星疾走  作者: 夕霧沙織
28/82

27章 任務達成―――61:00:00



 停車位置の数キロ先、進行方向上で一番近いヘベ駅。その目の前に建つ郵便局へ入ると、受付の外には配達寸前の荷物がうず高く積まれていた。その内の一つ、縦横高さ約五十センチの段ボール箱の宛名を眺めていると、受付の局員に声を掛けられる。

「お嬢ちゃん、お荷物かい?」

 夜勤にしては愛想の良いオジサンだ。

「うん。中身はぬいぐるみだよ。送り状頂戴」

「はい。じゃあちょっと量らせてもらうね」

 早速局員が後ろを向き、抱えた包みを計量器に掛けて料金計算し始める。その間にマクウェル家長兄、文牙お兄ちゃんの現住所(龍商会ビル)をサラサラ。当然クオルへの転送依頼状を同封済みだ。着払い、っと。

「出来たよ」

「はい。じゃあ送料を頂くね」

 財布から紙幣を出し、控えを貰って手続き完了。礼を言って受付を離れた後、わざと集配物の山にぶつかる。

「あ、ごめんなさい!」

 勢いを誤り、目的の物の後方数個もついでに転がってしまった。突然の惨状に、慌てて局員がカウンターから出てくる。

「大丈夫かい?ここはおじちゃんが片付けとくから、早く帰りな」

「ごめんなさい。何も壊れてないといいけど……」

 愁傷に謝る振りをしつつ郵便局を出、線路上を颯爽と戻り始める。そして何事も無いまま数分後、


「くーん!」「この一大事にフラフラと何処へ行ってたんですか、クランベリー!?」


 一号車の外。捜索に行った筈の一匹(大方寒くて早々に引き返して来たのだろう。この根性無しの豚コリーめ)と天使に叱責され、ちょっと夜の散歩、予め用意していた嘘を吐く。と、車両上からも呼び掛けられた。

「くーちゃん、血痕見つけたよ!あそこに梯子あるから登っておいで!」

 屋根で仁王立ちの巨乳ピンク髪に物騒極まりない命令を出され、私は肩を竦めながらも従った。二号車と三号車の間、隠すように設置された鉄の梯子に手を掛けよじ登る。

 そこから屋根伝いに一号車へ到着すると、妹が現場を照らした。私達の席の真上には彼女の言う通り、僅かながら血痕が付着している。ついでに何箇所か、硬く細い物で擦ったような痕跡も。

「見間違いじゃなかった、って事だけは間違い無さそうだね」

「あれを何と間違うの!?もー、くーちゃんは天然さんだなあ!」

 ケラケラ!

「そこまで笑わなくても。で、他には何か見つけた?」

「ううん。一応車掌さんと全部の車両の上を調べてみたけど、あったのはここだけだよ。側面はさっき、イスラとボビーに一周して見てもらったし。後残っているのは車輪ぐらいだけど、特に遺体を踏み潰したような震動は無かったから……うん。車両の外の調査はこんな所かな」

「だろうね」

「だろうね、って!『万里眼』で見えているなら、先に教えてくれればいいじゃない!!」

「まあまあ、一応念のためだよ。じゃあ後は捜索隊待ち―――ああ、噂をすれば帰って来た」

 線路伝いに煌々とライトを焚き、こちらへ戻る一団が見える。先頭は急ぎ足のコック。数メートル遅れてレイとラントが担架で死体を運び、左右にはアスと那美が付き添っていた。

「おーい那美ー!こっちにカメラ持って来て!血痕があるの、雨で流されない内に撮らないと!!」

「何ですって!?分かりました!」

 政府員は駆け足で最も手近な四号車へ向かい、速度を落とさないまま、


「はっ!」タタンッ!!軽やかに車体を蹴って、跳んだ!


「な、何だ今の……!って言うか列車を汚すな!?」

 星空にくっきり付いた足跡を見、追い越されたコックが叫ぶ。

「済みません、何分緊急事態だったので。後で洗っておいて下さい」

 しれっとクレーム応対する那美。そのまま足場の高さと不安定さを物ともせず、私達のいる一号車まで駆けて来た。

「何処ですか?」

「これよ」

 長い人差し指の示す先をパシャッ!ジジジ……現像された写真を確認し、パンパンのポケットに収める。その後助かりました、用済みのカメラを持ち主に返す。

「あ、フィルム全部使っちゃったんだ。まぁ部屋にまだ予備はあるし、街でも補充出来るからいいか。因みにこれって経費だよね?出来れば使った分の代金を返してくれると助かるんだけど」

「勿論です。後で領収書を政府館へ送って下さい」

「はーい。じゃあそろそろ下降りようよ。私も死体見てみたい」

 好奇心旺盛に物騒な言葉を吐き、いそいそと梯子を降り始める義妹。その後ろから足を掛けていると、鬼女が直接地面へ飛び降りる音がした。



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