13章 不穏な予感―――65:00:00
「―――少しいいですか、クランベリー」「ん?」「くーん?」
軽食を終え室内探索を開始した連れ達を残し、一人先に自室へ帰ろうと思い立った所へ声を掛けてきた保護者。口調が硬いのは常だけど、今は加えて緊張がありありと現れていた。
振り返ると、彼は意味ありげに同行者へ目配せ。了解を確認し、話しておきたい事があります、出来れば人に聞かれない所がいいのですが、小声で続けた。
「セミアやレイ達にも?」
「現時点では」
「なら私の部屋へ行こう。ここより大分狭いけど我慢してね」
私は義妹に帰る旨を告げ、一号室を後にした。
六号車まで戻っても三号室、ベアトリーチェの部屋のドアは相変わらず閉まったままだった。ボビーが二、三度鳴くも、室内に気配は無い。
「知人の部屋ですか?」
「まぁね」
ラウンジにでも行っているのだろうか。車窓の景色に飽きたので、コーヒーを飲みながら人間観察。若しくは……ま、いっか。
案内された我ら姉妹の猫の額城に、予想通り天使は不思議そうな顔をした。
「あそこが一番良い部屋なんだよ。こっちはシャンパンもシャワーも付いていないし、ベッドとソファも一緒なの」
「はぁ」
「そう言えば電気ポットもあったよね、確か。いいなあ、温かいお茶飲み放題で」
冷蔵庫の上にちょこんと乗せられた、銀色の丸いフォルムを思い出しながら呟く。
「……とまあ、羨ましがりは程々にしといて。イスラから相談なんて珍しいね」
片眉を上げ、ちょっと間を置いてから『万里眼』(使い勝手が良いので拝借)の片鱗を示す。
「まさか鉄道会社に脅迫状が届いていて、殺人事件で折角の旅行がおじゃんになりそう、ああ困った困った―――なーんて、ミステリー小説みたいな話じゃないよね?」「!ど、どうしてそれを!?一体誰から聞いたんです!!?」
ショックでソファに倒れ伏した保護者は数十秒後、恐る恐る顔を上げた。
「ええ、全くあなたの言う通りです……しかも、捜査のために派遣されているのはあの」
「那美とベルイグおじさんだね。って事は栗花落さんも一緒?」
「はい。三人は三号車、九号室を捜査拠点にしています。しかし何故脅迫だと分かったのですか?私とラント以外の乗客には知らされていない筈」
「いつもの勘だよ。それより詳しく話して。出来ればそうね、スターレイン号に乗る直前から」
私の頼みに、保護者は膝の上で拳を握り締め、無駄に深々と頷いた。
「ええ、分かりました。今日の正午、予定通りセヴォイの入口で合流した私達は―――」




