第三話 輝きたい男
俺の名前はM。19歳のインフルエンサー。
……と言いたいところだが、俺のSNSはまだフォロワーが1桁だ。
他のヤツがバズってる流行りのミームに乗っかっても反応がねえ。いや、反応はあったが「パクりだ」ってリプがあったんで、ソッコーでブロックしてやった。パクりじゃねぇ、オマージュだ。
「なぜ俺の価値に気づかない。俺の良さに気づかないヤツは全部ごみクズだ」
俺は独り言を吐き捨て、地面に唾を吐いた。どいつもこいつも、俺という「本物」を素通りして、安っぽいミームやパクりばかりに反応しやがる。あいつら全員、俺がビッグになったとき、その輝きで見れない存在になってても知らねーからな。
苛立ちを紛らわすために買ったストロング缶を煽った瞬間、そいつはいた。
「こんばんは。私は管理者です」
ベンチの隣に座っていた奇妙な男は、俺が食べようと思っていたフライドチキンを素手で掴んで食べていた。
「……おい、それ俺んだぞ……」
言い終わる前に、”管理者”は指と口の周りをテカテカにしながら平らげていた。
「あなたの性質が善か悪かなんてどうでもいいんです。ただ、あなたが『もっと注目されたい』という不満を持っているのは、このメーターが示している」
管理者の手元には、文字とも記号ともつかない数値が踊る奇妙な計器がある。
「なので、その不満を解消するため、あなたが輝ける世界にご案内いたします!」
その瞬間、視界が白に染まった。
───
気がつくと、俺は人混みの中にいた。 しかし、周りの人間はなぜかすごく地味な格好をし、同じような髪型をしていた。男女の違いもわからないほどに。
派手な服装が好みな俺は、そんな中で異質なぐらい目立つ。
「見て、あの人……ヤバい!」
その瞬間、俺の身体が淡く発光し始めた。
「マジで光りだしたぞ!」
次々と視線が集まる。その「注目」を浴びるたびに、俺の身体はさらに発光し始めた。
これだよ!これ!俺が求めていたのは、この全能感だ。
俺は街の中心で、狂ったように叫んだ。
「俺はここだ! ゴミクズども、ようやく俺の価値に気づいたか!」
視線が集まれば集まるほど、俺の身体はさらに輝きを増していく。
俺はその様子をSNSにアップした。
数秒で10万いいねがついたと同時に──
俺の身体は完全に眩い白い光となり、もはや肉眼で見ることができなくなった。
そして俺自身も、その光で何も見えなくなった。
────
管理者は観測者として、またうまく行かなかった実験結果を見たときのような感想を漏らす。
「また失敗か…。この世界の住人は目立たないように暮らしてきたから、彼が注目を浴びるまではよかったんだがなぁ…」
管理者はメモに書き留めた
「注目を集めるほど身体が発光する世界 失敗」




