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新世界復活戦!世界に変化をもたらそう!  作者: 小泉
第2章 異世界!新たなる始まり!
14/22

14 状況の本質を変える ー フィナ篇

うん…あの日から、フィナは前よりもずっと私のことを気にかけるようになったみたい…。


それに、あの出来事のせいで、私はうっかり風邪を引いてしまった。


でも、フィナはあの日以来、毎日のように私に心配そうにいろいろ聞いてくる…。


「ねえねえ!林月、何か欲しい物ある?」


「ねえねえ!林月、何か食べたい物ある?食べたい時はいつでも言ってね!」


「ねえねえ、林月、服買いに行くの?どんな服でも言ってくれたら一緒に探すよ!」


「ねえねえ…林月、お手洗い行きたい?」


みたいに、そんな感じのことばっかりで、まるで急に私のことをめちゃくちゃ気にかけてるみたい…


現実世界の生活もだいぶまともになった。毎日のように誰かに罵倒されることもなくなったし、お金の問題で家族が崩壊するようなこともなくなった…


私はベッドに寝転びながら、これまでに起きたことを考えていた。


妹のことを思い出すと、私は前を向くことができなくなり、彼女の写真すらまともに見れない…。


そんな時、フィナが私に一つの質問をしてきた。


「ねえねえ、林月、一つ聞いていい?他の家族はどうしたの?まだ他にも家族がいるんじゃなかったっけ?借金のためだけにここに来たわけじゃないよね?元の家族のところに帰るつもりはないの?」


私は驚いたようにその言葉を見つめて、どう返せばいいかわからなかった。


「それなら…フィナ、みんなもう私のもとを離れていったよ、それだけ…」私は少し落ち着いた声でそう語った。


「そう…ごめんね。でも、大丈夫。だって私もだからさ。過去の傷を無理に掘り返す必要なんてないよ…」そう言って、フィナは私のそばに寄ってきた。


「でもね…時間はもう流れていった。雨が過去の痕跡を洗い流しても、その痛みは心の奥底に刻まれて、消えはしない。でも、もしずっとその痛みに囚われ続けたら、傷はただの苦しみの証になってしまう。私…私、何言ってるんだろう…」


フィナは焦った様子でそう言った。


「なに…何言いたいのよ…」私は少し疲れたように聞いた。


フィナは真剣な表情で私を見つめ、こう言った。


「うーん…じゃあさ、あの老人が言ってた“あの人”って、どうして私がそう呼ばれるようになったか、聞いてくれる?」


「“あの人”?ああ、公主プリンセスのこと?」私はちょっと呆れ気味に返した。


「うぅ…そう、それ…。じゃなくて!あのあだ名マジでダサすぎ!私のこと何だと思ってるのよ…」フィナはちょっとイラつきながら言った。


「うんうん、真面目にさ、何を話そうとしてるの?」私はそう言った。


「うーん…この話、他の人にはまだ言ったことないけど…林月なら、聞いてもいいかなって思って…」


…それは、私が中学生の時のこと。


あの時、お爺様の家で久々の親族の集まりがあった。皆、昔より大人になっていて、前みたいな考えは無くなっていたと思ってた…。


でもその時の集まりでは、久しぶりすぎて、親戚の子たちの目つきが少し変わっていた。集まりも何年も開かれていなかったし、理由があって来られなかった親戚もいた。だから、空気はどこか気まずかった…。


「いやぁ、君もすっかり綺麗になったねぇ。ちょっとイチャイチャしに行かない?」と、一人の男が急にそう言ってきた。


その男は全身から酒の匂いを漂わせていて、タバコの臭いもひどかった…。


その男は私の手を掴みながら、そう言ってきた。その時、隣にいた女の人がすぐに怒って問い詰めた。「最低、あんたもう結婚してるのに、どうして他の女を口説こうとするの!?私のこと何だと思ってるのよ!」


彼女がそう言い終えた瞬間、男は手に持っていた酒瓶を彼女の頭に思いきり叩きつけた…。


「まったく、あんたみたいに歳食った女、誰がまだ相手するかよ。金目当てで俺と結婚したんだろ?ほら、金やるよ!」そう言って金を床に投げつけた…。


「いいじゃん、女なんてみんな金目当てで男と一緒にいるんだろ?なあ、なあ!」と、傍にいた従兄弟が大笑いしながら言った…。


「てかさ、俺たちも久々じゃん?女見つけたか?どうせ女なんて遊び道具なんだからよ、いずれみんなババアになるだけだし。俺はコスプレできる女がいいな~、だってさ……………」


彼らの言葉を聞いているだけで、私は吐き気がしてきた。体の不快感を抱えてうずくまると、母が私の手をそっと握り、優しく声をかけてくれた。


母の手を見ると、そこには無数の傷があり、見るからに痛々しかった…。


あまりにも突然すぎて、私は母から差し出された手をぎゅっと握り返すことしかできなかった。


その時、横にいた男が怒鳴った。「おい!クソガキ、てめぇのクソ女をこっちに寄越すな!気持ち悪ぃんだよ!」


父は焦ったように笑いながらその場にやってきて、親戚や子供たちは父のことを笑い始めた。


父はそれを見て、自分が笑われたのは私と母のせいだと思い込み、怒って私と母の手を掴み、その場を立ち去っていった…。


私と母は、父に連れられて隅の方へ引きずられた。すると父は、また怒鳴り始めた。


私は知っていた。父は、自分に親しくない人には決して怒らない。代わりに、自分に一番近い人たちに対して怒り、長年溜め込んできた苦しみや不満を、罵倒という形でぶつけてくるのだ。


彼は自分が受けた嘲笑や不公平を、容赦なく私たちに投げつけてきた…。


「いい加減にしてよ……もう我慢できない!あなたみたいな最低な家庭、私はもううんざりなの!お金目当てであなたと一緒にいたわけじゃない、人間性を信じて一緒にいたのに……でも今になって分かったわ。あなたも結局、あの人たちと同じだったって……離婚しましょう!」


母は強い口調で言い放った。


彼女は私の手を強く握り、私が怖がらないようにしてくれた。


母は私に語りかけた。


「怖がらなくていいのよ、こんなことで失望したり悲しんだりする必要なんてないの。どれだけ人に笑われても、自分をあきらめちゃダメ。人を信じて、他人の言葉に潰されないで……私たちは、他人の言葉で作られた存在になる必要なんてないのよ!」


母の強い瞳を見つめると、心が少し楽になった。だがその時、父が母の顔を激しく平手打ちした。


「お、お前……いい加減にしろよ……一体俺にどうしろって言うんだよ、俺は……俺は……」


父はどもりながら言った。


「勝手に他人の言葉に生きてなさいよ!その影の中で一生生きてなさい!私はもう背負いたくないの!勝手に背負ってろ!私たちをゴミ箱扱いしないで!」


母は顔を押さえながら叫んだ。


父は何も言えなくなり、その場をそっと離れた。


私は分かっていた。父はただの臆病者だった。状況を見ては、卑屈にすべてを受け入れるだけの人間だった。


「おいおい、女にボロクソ言われたって聞いたぞ?なにやってんだよ、うちの名を汚すつもりか?マジで何考えてんの…!」


周りの人たちが父を非難し始めた。


その時だった。私は黒髪の少女にぶつかってしまった。彼女は全身黒い服を纏い、長い髪をたなびかせ、まるで幽霊のようだった。


私は彼女のどこか不気味な髪に目を奪われていたが、突然、彼女は私の肩をつかんできた。


「老爺と執事のヴァールには気をつけて。あの人たちは、女に対して病的な執着を持っているの……これだけは覚えておいて。」


少女は陰鬱な声でそう言った。


彼女が立ち去ろうとした瞬間、私は思わず手を伸ばした。なぜか、彼女がもう二度と戻ってこない気がしてならなかった…。


追いかけようとしたその時、執事の大声が響いた。


「皆さん!こちらに集まってください!老爺がお出ましです、全員集合!」


私はその場へ向かおうとしたが、突然誰かに手を引かれ、別の場所へ連れていかれた。


「ちょ、ちょっと!手を掴まないでよ、変態なの?」


私は緊張しながら言った。


「大丈夫ですよ。私はヴァールと言います。老爺があなたに目をつけましたよ。あなたの顔立ち、素晴らしいですね。少し触ってもいいですか?」


ヴァールはいやらしい顔で私を見た。


「はぁ!?何言ってんの?バカなの?一体何がしたいのよ!」


私は怒って彼の手を振り払った。


その瞬間、男は私の胸を触ってきた。私は大声で叫び、彼は慌てて手を引っ込めた。私はその場を必死に逃げ出した。


ヴァールは私が逃げるのを見ながら、にやにやと笑い始めた。


そのまま父のもとへと近づき、こう言った。


「なあ……今の辛い現状から抜け出したくないか?たった一つのことをやれば、金も地位も手に入るんだ。そうすれば、家族も誰にもバカにされなくなるし、奥さんや娘とも幸せに暮らせるようになるだろ?」


母に罵倒されたばかりの父だったが、ヴァールの言葉に少し心を動かされたようだった。昔のようにすべてを取り戻したかったのだ。


ヴァールは、母を連れてその場所に行くよう父に命じた。それで許してやる、と。


父はその裏にある陰謀に気づかぬまま、母に頭を下げ、もう一度やり直したいと願い出た。


彼は母を抱きしめ、母も、昔の優しい姿を思い出したかのように、ため息混じりにこう言った。


「もう一度だけ、信じてみる……。本当は、娘と三人で幸せに暮らしたいだけなのよ。こんなことで、全部を失いたくないから……もう一度だけ、チャンスをあげる。」


母はそう言って、父とともにヴァールについていった。


その時だった。老爺が私のことをいやらしい目でじっと見つめているのに気づいた。その視線に全身が震えた。ここから逃げ出さないと、そう思った。


「ドン!!!!」


突然、大きな爆音が鳴り響いた。


私は音のする部屋へ駆けつけた。そして目の前に広がったのは、床一面に広がる血の海だった。


血はまるで塗料のように飛び散り、ぬくもりすら残っていた。そこで私は、猟銃を持ったヴァールが、既に動かない父の遺体に銃弾を何度も撃ち込んでいるのを見た。


父の内臓は破裂し、四方八方に飛び散った。そして傍には、顔が原型をとどめない女性の死体があった。


顔の皮膚と眼球はえぐり取られ、血と肉でぐちゃぐちゃだった。それでも私は確信した——それが母だということを。


「見ちゃったね?老爺から君を殺すなって言われてるんだ。でもね……君みたいな若い女、解剖してみたくて仕方ないんだよね~」


背後から、異様な声が聞こえた。手術刀を持った男が、興奮した声で言った。


彼は地面に落ちていた腸を拾い、勢いよく私に投げつけた。内臓液、血、汚物が飛び散り、鼻を突く腐臭と血の臭いに襲われた。強烈な鉄臭さと、吐き気を催す悪臭。


それは、今まで血の惨劇を見たことがなかった私にとって、衝撃そのものだった。


私は膝から崩れ落ち、喉から胆汁と胃液を吐き続けた。体は震え、力が抜け、息もまともにできなかった。


まさか、自分の人生がここから始まるなんて思ってもみなかった——まさに地獄のような場所から、終わりのない深淵へと。


私はなんとか体を起こそうとした。すると、手術刀の男が私を捕まえようとした瞬間、ヴァールが制止の声を上げた。


「ちょっと待て。こいつには、俺たち男に逆らった代償ってやつを教えてやらないとな……その後、俺の奴隷にしてやる。」


彼の声は冷たく、顔に一切の表情はなかった。それでも声は、氷のように冷たく響いた。


その隙を突いて、私は必死にその場から逃げ出した。


「ドン!!」


再び、大きな衝撃音が鳴り響いた——



私は外に飛び出し、目の前の光景を見て、一生忘れられない場面に出くわした。


それは、以前私に警告してくれた黒衣の少女だった。彼女は上の階から飛び降りたようで、体は血まみれで、骨は折れ、変形していた。血が彼女の服を赤く染め、頭部は重傷を負い、血が止まらず、彼女の顔はほとんど識別できなかった。


私はその場に立ち尽くし、どうすればいいのか分からず、緊張していた。


しかし、すでに息絶えているように見えたその遺体が、ゆっくりと口を開いた。彼女は壊れた手を苦しそうに持ち上げ、私に近づくよう合図した。


「……早く逃げて……今逃げなければ……あなたの人生は空虚でつまらなくなる……操り人形のように、誰かに操られる……」彼女の声は震え、弱々しく、ほとんど聞き取れなかった。


「この人たちは……女性をおもちゃとしか見ていない……もう耐えられない……ごめんなさい……」


そう言い終えると、彼女は完全に息を引き取った。


私は先ほどの衝撃から立ち直れず、胸が痛み、全身に冷や汗が流れた。逃げようと振り返った瞬間、祖父に腕を掴まれた。


彼はいやらしい目つきで私を見つめ、ゆっくりと言った。


「お前の家族は皆死んだ。これからはここで暮らすんだ。最高の生活を与えてやる——ただし、二十歳になるまでだ。二十歳になったら、私と結婚し、子供を産んでもらう。」


そう言うと、彼は私を無理やり邸宅へ引き戻した。


彼は確かに衣食住に不自由のない生活を与えてくれたが、そこでの毎日は兄や姉たちからのいじめや軽蔑に満ちていた。邸宅の男たちや老人たちは、私をいやらしい目で見つめ続けた。


彼は私に外で暮らすことも許し、多くの金銭を与えてくれたが、私は少しも幸せではなかった。


なぜなら、私はこのような生活のために生きているわけではないからだ。


私はすでにすべてにうんざりしていた。


そして今、私は二十歳を迎えようとしている——私の人生は、終わりのない暗闇の深淵へと落ちていく。


「私は、お金で得られるものなんて欲しくない……これが私のすべて……ごめんね、こんなに話してしまって……林月。」


私はうつむき、静かに言った。


その時、林月は私の肩を軽く叩き、優しく言った。


「そうだったんだね……ごめん、本当に謝るべきなのは私の方だ。大丈夫?」


彼の目には心配と優しさが溢れていた。しかし、私は彼をこの混乱と苦しみに巻き込みたくなかった。


私は拳を握り、無理に笑顔を作った。「ありがとう……」


林月はあの出来事を覚えていないかもしれないが、私は信じている——彼にはすべてを変える可能性があると。


その時、私の携帯電話が鳴った。


それはヴァルからの電話だった。


「もしもし、坊や、あと数日だけ時間をやる。戻ってこなければ……お前が連れて行ったあの男が無事でいられるとは限らないぞ。来月、お前は二十歳になるんだろ?」


電話の向こうの声は、脅迫と冷酷さに満ちており、私の心の最後の防衛線を切り裂いた……私は電話を置き、どうすればいいのか分からなかった……


数日後、フィナの様子は徐々に良くなっていった。彼女は自ら私の父の数万の借金を返済し、私に言った。「大丈夫、このお金はあなたが使って。だって、もともとあなたの借金じゃないもの。」彼女がこの言葉を言ったとき、顔には無理な笑顔が浮かんでいたが、口調には少しの悲しみが隠しきれなかった。


私は覚えている。あの日、彼女があの電話を受けてから、彼女の様子はおかしくなった。何かに押し潰されそうで、息が詰まりそうだった……私は彼女をどう助ければいいのか分からなかったが、勇気を振り絞って彼女に言った。「大丈夫、フィナ、何ができるか分からないけど、必ずあなたを助け出す方法を見つけるよ!」


彼女は私を見つめ、ため息をつき、諦めたように言った。「無理よ……相手が誰か、よく考えてみて。それに、私は林月さんを巻き込みたくない。だって……あなたはいい人だから。」


現実はそういうものだ。言いたいことがあっても、なかなか相手に伝えられない……


そうして、私たちの日々は過ぎていき、フィナと出会ってから一ヶ月が経った。


その日、風が強かった。私はフィナの住むアパートに戻ったが、彼女はすでにいなかった。空っぽの部屋が目に入り、不安が胸をよぎった。


突然、外から強風が吹き込み、部屋の中の物が舞い上がった。私は急いで手を伸ばし、風に舞った紙切れを掴んだ。


それはフィナが残したメモだった。そこにはこう書かれていた:



---


林月先生へ:


この期間、そばにいてくれてありがとう。私にとって本当に大切な時間でした。だって、私はこれまで友達を作る機会がほとんどなかったから。


でも……ごめんなさい。ここで止まってほしいの。これ以上、私のことに巻き込まれないで。私のせいで、あなたまで巻き込むわけにはいかない。


それでも、本当に感謝しています。あなたのおかげで、少しだけ生きたいと思えるようになった。


覚えていますか? 私たちが初めて会ったとき。あなたも辛い状況だったのに、それでも私を助けてくれた。あなたはもう、そのことなんて覚えていないかもしれないけど……


それから……ごめんなさい。最初、あなたを疑ってしまった。あの人たちと同じだと思ってしまった。本当にごめんなさい。


でも……本当にありがとう。こんな私を助けてくれて。


きっとあなたはこのメモを見つけるはず。でも、読んだらもう私のことは探さないで。


――フィナより



---


私はその紙を握り締めた。インクはすでに乾いていたが、見れば見るほど感情を抑えきれなくなり、近くの机を拳で殴りつけた。血が指から流れ出し、紙を赤く染めた。


「くそっ……そうだったのか……まさか、俺たちはずっと前に会っていたのか……何やってんだ、俺……今、どうすればいい……彼女なら……なんて言うだろう……」


……「パタッ……ギギギギ……」……


「なあ、雪娜――


もし、昔信じてくれて、今では友達と言える人が、困っているときに『手を出さないで』って言ってきたら……お前ならどうする?」


俺は口を開いた。


『え?なにそれ……林月……それって、あの子のこと、だよね?……うん……


確かに難しい問題だけど、今回ばかりは、私も手を貸せないかも。


知ってる?昔、ある人に言われたことがあるの。


“誰かを助けられない時、あるいは同じ苦しみに巻き込みたくない時、一番簡単な選択肢は「断る」こと;


でも、本当にその人のことを思っているなら、それが一番辛い決断なんだ。”』


雪娜の目は優しく、それでいてどこか切なげだった。


『どういう意味だよ……誰がそんなこと言ったんだ?』


俺がそう尋ねると、雪娜は遠くを見つめながら、静かに言った。


『こんな言葉、聞いたことある?


“自分を信じて、可能性をつかみ、自分の信念を貫け。”


ある人はね、自分がすべての痛みを背負ってでも、大切な人には一切の傷を負わせたくないって思うの。


でもね、そんなふうに守ろうとすることで、逆に自分自身がどんどん追い詰められて、もっと苦しくなっていくの……


その言葉は、あの子が私に言ったの。』


『あの子……そうか……でも俺は、本当に助けたいんだ……俺……』


俺が言いかけたとき、雪娜はそれを遮った。


『うん、わかってるよ。林月、あなたはそういう人だもん。


誰かに「放っておいて」って言われても、見捨てられなくて、真っ先に飛び込んでいく。


勝てないってわかってても、怖くて震えてても……それでも行動しちゃう。


そんなあなたを見て、私たちは信じようと思えるんだよ。


だってあなたは、もう諦めていた私たちのことを、信じてくれたから――


今の答えは、自分の言葉で答えてみて、林月!』


『……そうか。ありがとう、雪娜。』俺は小さく答えた……


……「パタッ……ギギギギ……」……



この時、俺はもう答えを選んでいた。背を向けて去っていく姿の中にあるのは、戻ることのできない選択肢。君は妥協を選んだ。でも俺は、君のもう一つの答えを選ぶことにしたんだ。


ポケットの中の金を見つめ、俺は決意して外へと踏み出した。たとえ何も変えられなくても、それでも変えてみたいと思ったんだ――



あの豪華な屋敷の前、一人の少女が誰かに連れられて中へと入っていくところだった。


『待て、そいつを離せ!ちょっと待ってくれ!』

その時、息を切らして駆けつけた一人の男が叫んだ。


少女は驚きと戸惑いの表情で目を見開き、前方を見つめた。


『り、林月……何してるの……

私は……来ないでって言ったじゃない、バカ!』

フィナが大声で叫んだ。


『違うんだ!俺は借金を返しに来たんだ!あのジジイに借りた金を返しに!』

林月が叫び返す。


『そうかい……まったく、タイミングの悪い奴だな。てっきり、女に別れを告げに来たのかと思ったぜ。


恩を受けた女にも手を差し伸べられないとはな。金も権力もある女なんて、お前ら貧乏人には興味ないってか?哀れなもんだよ、貧乏人は――』

ワルが皮肉を込めて話し続けようとしたその時、俺は彼の顔に金を叩きつけた。


『返してやるよ。口が軽すぎなんだよ、クソ野郎。』

林月が言い放った。


『……そうか。なら、よかったな。行けよ、坊主。これが俺たちの最後の顔合わせってことだな。こうしてちゃんと別れを言えるのも悪くないだろ?』

フィナが静かに言った。


『そうか?』

林月は手にしていた小刀を取り出し、フィナの前に駆け寄り、彼女を引き寄せた。


地面から立ち上がったワルが怒りと焦りの声を上げた。

『てめえ、何してやがる!その女に何を――』


『そうさ。この女、まだ使い道があるみたいだしな。

俺はこいつを殺すつもりだ。お前ら、こいつのこと気に入ってるんだろ?』

そう言って、林月はナイフをフィナの首に押し当てた。


『な、何してるのよ!?そんなやり方、正しい答えじゃないでしょ!?

私、あんたにここから離れろって言ったよね!?なんで戻ってきたの!?

こんなことしたら、あんただって――』

フィナは怒りながら言った。


『だって……俺の選択は、君とは逆なんだよ。

俺の選んだ答えは、違うやり方で君を助けたい、守りたいってことなんだ。


本当はね、君みたいな友達を失いたくなかったんだ。

俺にとって、君は数少ない、俺を助けてくれた大切な友達なんだ。

俺はこの運命を変えたい。でも、正直、うまくいく方法なんてわからない……


それでも、信じてくれないか、フィナ!!』

林月はまっすぐにフィナを見つめて言った。


フィナは少し驚いたように、そしてどこか嬉しそうに言った。


『……そうなんだ。ごめんね、前に疑ったりして……

もちろん、信じてるよ、バカ!!

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