二人を繋ぐのは
「エリーゼ様のブレスレット、とても素敵ですね」
「あら、ご存知ない? 今流行っているんですよ」
相変わらずスレン様に甘やかされる日々を送っている私は、ある日のお茶会にて、隣に座るご夫人の手元で目を留めた。
デザインも宝石も綺麗で思わず声をかけたところ、彼女は驚いたような表情を浮かべた。そんなにも流行っているのかと、流行に疎い自分が恥ずかしくなる。
「ペアになっていて、お互いどこにいるか分かる魔道具なんです。お恥ずかしながらうちの夫はアレなので、それはもう便利で助かっています」
アレというのはよく分からないけれど、眩しいくらいににっこりと微笑む夫人を見るに、かなり便利なものらしい。
確かに出先ではぐれたりすることもなくなるし、魔物の討伐に行くスレン様の安否を確認することもできるだろう。
私が出掛ける度に心配ばかりするスレン様にも、丁度いいかもしれない。そう思った私は、色々と調べてみることにした。
◇◇◇
「エルナちゃん、なに見てるの?」
数日後の晩、メイドのベティが例の魔道具のカタログを用意してくれた。色々な色があって楽しいなあなんて思いながら眺めていたところ、後ろからスレン様に抱きしめられる。
やがて私の手元に視線を落としたスレン様は、驚いたような声を漏らした。
「もしかして、俺のこと監視してくれるの?」
「か、監視……?」
「もちろん浮気なんてしないけど、エルナちゃんがずっと俺を気にしてくれると思うと嬉しいな」
どういうことだろうと戸惑う私を見て、スレン様は首を傾げる。
「浮気防止用のために作られたものだよ? それ」
「えっ」
「あ、やっぱり知らなかったんだ。疑われてるのかと思って、少しだけびっくりしてたんだけど」
まさかそんな理由で作られたものだとは知らず、私は内心頭を抱えた。確かにこれでは、浮気を疑っていますと言っているようなものだろう。失礼にもほどがある。
「す、すみません! そんなつもりじゃ……」
「あはは、分かってるから大丈夫だよ」
スレン様はくすりと笑うと、再びカタログに目を落とした。
「このデザイン、エルナちゃんに似合いそうだね」
「えっ? 買うんですか?」
「うん。本当は欲しかったんだよね、こういうの」
何故かやけに乗り気のスレン様は、先ほどの私よりも真剣に選んでいて困惑してしまう。
「あの、スレン様が浮気なんてしないことは分かっていますし、私も絶対にしません。それにこれをつけていて、周りからそういう風に見られては困るかなと……」
「エルナちゃんが浮気をしたら、相手を殺した後に俺も死ぬだけだから大丈夫だよ。ブレスレットは見た目では分からないように特注にしようか。最高級の宝石ですぐに作らせるから、待っててね」
「し……?」
「君には常に複数の人間をつけてるんだけど、魔道具と合わせればさらに安心だし。俺としてもエルナちゃんに束縛されてるような気持ちになるから、すごく嬉しいなって」
彼はさらりと今、殺すとか死ぬとか、私に常に複数の人間をつけているだと言ったけれど、少し待ってほしい。もちろん浮気なんてしないけれど、後半のは護衛という意味なのだろうか。
「本当は俺自身が四六時中、一緒にいられたらいいんだけど。なるべく早く仕事も引退できるように頑張っているから、そうしたらずっと一緒にいようね」
「は、はい」
──そして二日後、本当にお揃いのブレスレットを用意してくれたスレン様は「一生、俺のこと見張っててね?」なんて言って、綺麗に微笑んで見せた。
「ありがとう。エルナちゃん、好きだよ」
気になることは沢山あったものの、それはもう嬉しそうにブレスレットを身に付けている様子を見ると、何も言えなくなってしまう。そんな私も結局、彼に甘いのかもしれない。
「はい。私もスレン様が大好きです」





