表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
COMRADE ~最強の魔術士の憂鬱~  作者: 小田虹里
第三章 ~家族の絆の章~
PR
76/285

適材適所

レラノイル港に着いたレジスタンス。

ラナンたちは、「毒草」の在処へ向かうことにする。

一方、城ではザイールが何やら目論みを企て……?

「ラナ。くれぐれも、気を付けてくれ」

「うぃ、サノも。また何かあったら、フアを飛ばしてくれ」


 フアとは、サノが飼っている高貴な大型の鳥。鳥といっていたけれども、魔獣なんじゃないかと思っている。青くて、尾の長いそれは、翼を広げると二メートルはある。

レラノイル港に着くなり、俺はサノとエリオスの皇子たちと別々のルートを行くために、離れた。俺はレナとリオとパーティーを組み、しばらくフロートの出方をうかがうことにしていた。

 サノとリーク、ジンフィールには、ミスト大陸以外……つまりは外の世界が今、どうなっているのか。現状把握をしてもらうための、旅にでてもらった。言われて「革命」を成そうとするのも、可笑しいと思っているからだ。自分の目で実状を知り、今のフロートの圧政のままではダメだと、判断して欲しかった。特に、一国を統治していた王族の生き残りなんだ。無関心でいて欲しくはなかった。


 誰かが成せばいい。


 そんな、無責任はしてほしくない。


 ただ、適材適所という言葉もある。


 見定めなければならない。


「ラナン」

「何だ? レナ」

「俺たちは、どこへ向かうんだ? ルシエルもカガリも、もう城へ戻っているんだろう?」

「そのはずだけど……何でだ?」

「…………一気に、フロートに攻め込まない理由は、何かあるのか?」

「まだ、戦力が足りない」

「魔術士だって、結構いるんだろう? アースに」

「まぁ、居るけど…………あっちには、レイアスっていう神子魔術士による部隊があるんだ。こっちの神子魔術士は、今のところレナとサノのふたりだけだ」


 黒魔術士として、アトラ、クレスが居る。


 白魔術士として、ルカナ、メイト、セアラ、ヤイが居る。


 戦争をしかけた後の、ケアは出来るかもしれない。


 だけど、そもそもの戦争に勝つにはまだ、足りない。


「黒魔術士のアトにいたっては、まだ子ども。出来れば、戦線には立たせたくはない。白魔術士のメイなんか、まだちびっこだ」

「分かっていて、入れたんだろう?」

「そりゃあ、そうなんだけど」

「ラナ、レナ。まずはどちらに向かいますか?」


 リオが、地図を広げて俺とレナの間に割って入って来た。リオの言葉を聞いて、レナは影を落とす。何かを考えているようだ。


「俺は…………行くべき場所がある」

「?」


 俺は、その言葉に首を傾げる。


「ひとりでか?」

「…………ラナ」


 レナは、何かを隠している。それは分かっているけれども、俺は敢えてそれを深く探ろうとはしなかった。レナが困ると思ったからだ。


「名もなき草」


 レナは、ポツリとそう呟いた。眉を寄せて厳しい顔をする。


「それが、ルシエルを化け物に変えようとした、毒草の正体だ」

「…………それの生息地を、知っているのか?」

「あぁ」

「…………」


 俺は、リオの顔を見る。リオも、俺と同意見らしい。銀色の目を厳しく光らせ、頷く。


「そこへ行きましょう」

「案内、頼めるか? レナ」

「…………うん」


 地図上では、分からないらしい。それを知り、リオは広げていたワールドマップをしまった。

 レナが魔術士に覚醒してから、まだそう時間が経っていない。あまり、無理はさせたくなかったし、魔術を使わせたくもなかった。だけど、頼るしかない。それが、兄としてはふがいなかった。



「どうなっている。ザイール」

「どうなっている、とは?」

「ルシエルに、結局はしてやられたのだぞ! これ以上、奴の好きにはさせられん!」

「ルシエルはまだ、毒草に侵されていますよ」


 アイツは、天才だった。生まれながらにして、大きな魔力を持っていた。五人兄弟の末っ子の癖に、生まれた瞬間に、アスグレイの統領となることが決まった。それを、長兄も弟たちも、よしとは思っていなかった。それは、生まれたと同時に母上が亡くなったことも関係していた。母上の命と引き換えに生まれて来たルシエルを、誰も……いや、父、リヴァー以外、受け入れようとはしなかった。

 味方となったのは、隣の家に住むアリシアという娘。ルシエルと同い年。度々ルシエルは、隣の家へ身を隠していた。それもまた、俺たちが面白くないと考えることになった理由のひとつであると、アイツは気づいていたのだろうか。だとしたら、制裁を与えられるのは至極当然というもの。


「まだ、操れるというのか?」

「いえ、そこまでの効力はないでしょう。だが、必ずこちらにツキは来る」

「信じてよいのだな? ザイール」

「当然」

「陛下」


 面白くなさそうに声をあげたのは、レイアス隊長のジンレート。まだ青い。だが、ザレスによく似た気質の男だった。富と名声にこだわる男を、俺は嫌いではない。むしろ、それらを手にできる力を持ちながら、発揮しないルシエルに嫌気がさしているのだ。


 此処に居る俺たちは、同類だった。


「ルシエルを、この際。解雇した方がよいのでは?」

「それは失策だな」

「なんだと?」


 俺が茶々を入れてやった。すると、青いジンレートはまんまと苛立った。


「ルシエルが、レジスタンス側に完全に加われば…………この城は、落ちる」

「俺たちレイアスが、ルシエルひとりにやられるとでも!?」

「その通りだ」


 俺は、レイアスには属していない。あくまでも、ザレスの「顧問」である。


「アイツの力を、みくびってはいけない。アイツには、人知を超えた力がある」

「それなら、たとえ毒に侵されていたとしても、俺たちに勝ち目はないんじゃねぇのかよ」

「いや」


 俺はうっすらと笑みを浮かべた。


「こっちには、カードがある」


 そのとき、扉をノックする音が聞こえた。気配で、扉の向こうに居るものが誰なのかは、分かっている。だが、敢えて言葉にはしなかった。

 木製の扉。コンコンコンと、軽い音がする。門兵が、声を発する。


「カガリです」

「通せ」

「はっ!」


 ギギギ……と音を鳴らして扉が開く。建付けが悪くなってきている。カガリと俺は、顔を合わせたことはない。これが、初めてとなる。


「陛下。何用でしょう?」


 呼び出したのは、ザレスだった。俺が裏で糸を引いているのは、言うまでもない。


「カガリ。お前はこれから、この者の下に仕えよ」

「?」


 紹介された俺は、陛下の椅子の隣に立ったまま、カガリを見据える。カガリは、俺のことを不思議そうな顔で観察していた。


「この者は…………?」

「私の顧問だ」

「ザイールという」

「ザイール……」

「何だ? カガリ。不満でもあるのか?」

「…………別に」


 顔をふいっと背けた。

 カガリからは、確かに巨大な「風」の流れを感じる。稀に見る才能の持ち主であるということは、事実だったらしい。

 ライロークの民であるということは、当然俺も知っている。カガリは、俺がルシエルの兄であるということも、何も知らされてはいないだろう。ルシエルのことだ。誰にも、漏らしていないはずだ。それを、利用してやろうと目論んだ。


(カガリは、ルシエルの弱点になる)


 こちらに招き入れておいて、損はないと考えていた。


「よろしく頼むよ。カガリくん」

「…………」


 警戒されている。それを感じ取り、俺は一歩前に進み出ると、うっすらと目を細めた。


「…………分かりました」

「早速だが、ひとつ頼みたいことがある」

「? 何でしょう」


 ジンレートの動きに警戒もしているようだ。その警戒心を、解く必要性があった。カガリを、こちらに取り込む作戦だ。


「お茶菓子を買ってきて欲しい」

「?」


 その言葉を聞き、カガリは面食らっていた。目を見開き、ぽかんとする。

 それを見て、俺はカガリが術中にはまりつつあることを実感し、優男を演じることにした。


「分かりました。街へ行ってきます」

「いってらっしゃい」


 そう言ってカガリがこの部屋を出た後に、ジンレートは腹を抱えて笑っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ