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キミと巡り合う、夏  作者: かがりいずみ


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4/4

次の夏に、また会いましょう

「ありがとう。もう、ここまでで大丈夫…」


夏祭りが終わり、

僕は純を家まで送るといってここまで来た。


住所によると、家はまだこの先のはずだけど、

純はここまででいいと言う。


「蒼真、もう帰るんだよね?」

純が、聞いてきた。

「う、うん…」


さすがに、もう1日泊めてくれとは言えないと思った。


「そっか…

 あ、…あのさ!」

純が何かを言いかけた。

でも、僕が、何?、と聞いても、その後の言葉は続かなかった。


ぎゅっと一回唇を噛んだけれども、

やっぱり何も言わなかった。


「純?」

「あ…うん、

 また、ね」


小さく、彼女が手を振る。


いよいよ、お別れだ。

そう思うと、とても、名残惜しい。

それは純も同じなのかもしれない。


「うん、また…」


それは、僕らのいつもの約束だった。


「また…次の夏に、会おうね」

そう言って、純が笑った。


☆☆☆

その日から、2回手紙のやり取りをした。


そして、季節が移ろい、

秋が過ぎ、

冬の声が聞こえた頃、

僕は、やっと異常に気づいた。


彼女からの返事が来なくなったのだ。


彼女からの返事が来ないまま、

2通、さらに僕は手紙を出していた。


それでも返事が来ることはなかった。


もしかしたら、彼女は実在の人間ではなくて、

あの神社にいた神様なんじゃないかとか、

そんなバカげたことすら考えてしまった。


でも、そんなわけはない。


とうとう僕は我慢できなくなった。

冬に差し掛かったある日、

お小遣いをはたいて、祖父母の家に向かう。


そして、手紙の住所を頼りに、

彼女の家を訪れた。


「うそ…だろ?」


確かに手紙の住所はここだ。

だけど、僕の目の前にあるのは『家』ではなかった。


そこは、病院だったのだ。


☆☆☆

「君が…蒼真くん、だね」


病院の待合で呆然としていると、

50代くらいの男性が近づいてきた。


「純が、世話になった」

その男性は、そう言って深々と頭を下げた。


そして、

「とにかく、これを読んで欲しい」

そう言って、僕に手紙を渡してきた。


手紙は、純の筆跡だった。


☆☆☆

蒼真くんへ


この手紙を君が読んでいるということは、

私はもうこの世にいなくて、

そして、君が私の真実にたどり着いたってことだよね。


最初に謝らせてください。

ごめんなさい。


本当のことを言う勇気がなかった私です。

許して欲しい、なんて虫が良すぎると思う。


お父さんから話は聞きましたか?

そうです。私は、病気だったんです。

生まれたときからの心臓の病気でした。


だからずっとこの病院で療養してて、

たまに家に帰る生活をしていたんです。


学校も、この病院の中にあるんですよ。


心臓の病気はいつ悪くなるかわからないので、

あまり病院から離れられなかったし、

人混みに行くと興奮しすぎて具合が悪くなったり、

感染症を拾ってきてしまいやすいからと、

外出を制限されてたんです。


小さい頃はそれが苦痛でした。


そして、よく病院を脱走して、

あの神社でぼんやりとしてたんです。


その時だったんです。

初めて、蒼真に会ったのは。


最初は、近所の男の子、って思っていました。

でも、次第に蒼真に会うのが楽しみになりました。


だって、蒼真は、私の世界で初めて、

病気ではない『私』を見てくれた人だったからです。


お手紙をやり取りしてくれて、

いっぱい蒼真の世界を教えてくれました。


いつしかあなたは私の世界の中心になって、

私にとってかけがえのない人になっていきました。


そうなると、怖くなったのです。

私に『命の期限』があることを、伝えることが。


ずっとこの時間が続けばいいと思うほど、

それを口にするのが怖くなったんです。


おかしいですよね。

言っても、言わなくても、

私の命の時間は、変わらないというのに。


そして、きっとあなたは、

私が死んだ後でこれを知ったら、

辛く思うに違いないのに…。


夏祭りの夜、

勇気を振り絞って言おうと思ったけど、

ダメでした。


『次の夏に、また会いましょう』


こう、あなたに言うたびに、

私は何だか強くなれる気がしました。


怖い手術も、

あなたからの手紙を握りしめたら、

頑張ることができました。


だから、言えなかったんです。


ごめんなさい。

蒼真くん。


そして、ありがとう。


あの日、私を見つけてくれて。

私とお話ししてくれて。

会いに来てくれて…。


大好きです。

できれば、次の夏も、会いたかった…


さようなら。

蒼真くん。


絶対、絶対、幸せになってください。

いつもあなたを想っています。


蒼真くんへ


純より   


☆☆☆

涙がいくつも零れた。


大声を出さないように、唇を引き結ぶのに必死だった。

でも、その唇も肩もブルブルと震えて、

嗚咽が、止まらなかった。


「純は、毎年、君が来るのを楽しみにしていた…

 もらった手紙をベッドの上で何度も、何度も読んでいた。

 そして、この手紙を私に預けたんだ。

 『もし…万が一、私に会いに五十鈴蒼真くんという人が来たら、

  この手紙を渡して欲しい』と言ってね。」


純を責めることなんてできなかった。

ごめんなさい、と書いた文字は震えていた。


いつまでも、彼女との思い出は僕の胸から消えることはない。

毎年、夏が来ると思い出すんだ。


あの、夏の光に消えてしまいそうなほどの儚い君を。

花火の光に照らされて、

涙を流していた…美しい君を。


もし…なんてないけれども、

もしも、また君に会えたら、

僕はきっとまた言うんだ。


次の夏に、また会いましょう…って。

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