第24話 コアのワンルーム生活と、お世話モンスター錬成。
護衛の女戦士を治療し終えた俺は、王族兄妹と彼らの護衛を、ダンジョンコアの『管理区域』に収容した。
彼らの目の前には、マグマの熱を制御する魔力回路に囲まれた巨大なクリスタルコアが、床から少し浮遊している。これが、彼らが知るダンジョンコアの姿だ。
(チッ。俺の平穏が完全に乱された。外部の争いを俺の管理区域にまで持ち込みやがって)
彼らは知る由もないが、そのクリスタルコアの内部、わずか数メートルの空間に、俺――元日本人が座椅子に座っている。カモフラージュ魔力で、この生活感あふれる部屋と、俺の存在は完全に隠されている。
「貴様らはここで待機しろ。安全は保証する。しかし、俺のダンジョンは平和な場所だ。余計な騒ぎを起こすな。」
俺はぶっきらぼうに告げたが、内心は最悪の状態だった。俺が発言するたびに、クリスタルコアはゆらりと浮遊しながら彼らに近づいた。
(このクリスタルの中にある俺の部屋は、布団と、モニターと、インスタント食品のゴミが積まれたワンルームとなっていて、クリスタルコアの外から覗けないようになっている。とはいえ、このコアルームで彼らを匿うのはいいが、この狭い空間でどうする? こちらの生活音がクリスタルコアから漏れて、聞こえたりしたら…、まずいな…。)
緊急事態だ。王族を泊める場所がない、というのは、ダンジョンコアとして最も恥ずべき失態である。俺は、まず彼らの滞在環境を整えるため、残りの EXP を大量に消費し始めた。
「【経験値:-1,200 EXP】 ―― 管理区域(クリスタル外部)に、簡易宿泊区画のカモフラージュを施す。遮音機能と生活感遮断を最優先。」
「【経験値:-800 EXP】 ―― 王族兄妹と護衛用の清潔な簡易寝具と替えの衣類を生成。高品質なものを頼む。」
「【経験値:-450 EXP】 ―― 管理区域内で消費可能な食料と飲料水を外部から購入。子供向けの甘味も忘れるな。EXPは通貨だ。」
(ちなみに、簡易トイレが各フロアごとに設置してあり、コアルームの前のフロアにも置いてある。ダンジョンコアになって最初に清掃ゴブリンを生成した際、ゴブリンたちからの要望によって開設したのだ。なんでも、決まった場所にしてくれた方が処理しやすいとのこと。)
俺のクリスタルを媒介とした EXP の消費は、彼らが使うための簡素ながら清潔な空間を、次々と魔法的に生成していった。俺の生活音は完全に遮断されている。よし、これで俺のプライバシーは守られた。
次に大きな問題は、彼らの身の回りの世話だ。俺はコアとしてシステムを操作している身であり、クリスタルコアから手足を出して動くわけにはいかない。
(世話は誰がする? 俺はクリスタルの内部に閉じこもっている。物理的な世話が必要だ)
俺は、最後の残り少ない EXP を投じ、『家事代行』に特化した新たなモンスターを緊急合成した。
「【経験値:-3,000 EXP】 ―― **家事代行ポーションスライム(通称:『ハウスキーパー』)を錬成。知性、清潔感、無害性を最優先とする。」
数秒後、クリスタルの内部の俺のワンルームに、一匹のポーションスライムが生成された。通常のポーションスライムよりわずかに大きく、清潔な白いエプロンのような模様が体表に浮き出ている。
「ピュルル……コア様。お呼びですか」
俺は、クリスタルを揺らしながら指令を出した。
「ハウスキーパー。貴様の任務は、あそこにいる三人の身の回りの世話と、食事の準備だ。不純な行動は一切許されない。俺の平和を維持するんだ。」
これで、俺のコアルームは安寧を取り戻した。後は、この大きな出費を回収し、昇格ラインが上がる前に EXP を補充しなければならない。
俺は、王族兄妹と女戦士に向き合った。クリスタルコアは、彼らの目の前で静かに浮遊した。
「聞け。貴様らの滞在、治療、そして食事の費用は、全てEXPで賄われる。俺のダンジョンは慈善事業ではない。貴様らには、滞在費を稼いでもらう。」
「稼ぐ、ですか?」護衛の女戦士が尋ねた。
「ああ。貴様らの任務は、このダンジョンを『利用しまくること』だ。サウナを利用しろ。水風呂を利用しろ。デトックス・ハーブを買って、ジェラートを食え。貴様らがサービスを利用するたびに、俺の EXP が増える。それが、貴様らの安全を保証するための『代金』だ。」
王族兄妹は、究極のリフレッシュを何度でも体験できるという指示に、目を輝かせた。コアの部屋に保護された彼らの生活は、「究極のデトックス体験」という形で、このFランクダンジョンの新たな EXP 源となることが決定したのだった。
ご拝読ありがとうございます。なんと!クリスタルコアの中にワンルームがあり、そこで生活していたとは!コアの中に招き入れることはできないのかな?と思いましたが、それは追々考えていくとして。次なる展開は、やはり、さらなる追手が忍び寄るのか!?それとも、帰還しない子どもたちを心配して捜索隊(軍隊)が押し寄せてくるのか!?それでは、次回もお楽しみに!!




