魔境の復讐 22
ノートパソコンを構えた岳が、俺に対して語りだす。
「明氏、ジャバウォックって言うのは、実は、怪物を表すものでは無いんだ」
「と、言うと?」
「あいつはね、議論の賜物と言われているんだ」
「議論の賜物? つまりは?」
「謎そのもの、それが、あいつの正体さ」
話している俺に向かって、熱波と共に、何かがとんでくる。愛姫だった。
着物が焦げた事によって、肌面積は更に広がった様だが、無傷の様だ。
伝説の鬼は、相手の理により致命傷を与えることが出来ない。
伝承の怪物は、相手の絶対的な霊力の前に致命傷を与えることが出来ない。
こうして、その勝敗は、最早外野と化しかけていた我々に委ねられたのだ。
「どうでも良いが、悠長にやってる暇は無いぞ? わっちは兎も角、旦那様が危険じゃ」
「愛姫、なんとか時間を稼いでくれないか? その間に、謎を解く」
「ははは! 造作も無い事じゃな」
愛姫は、再びジャバウォックに飛び掛ると、組み付いて押さえつける。
暫くは、時間が稼げそうだ。
「ビンゴだよ! ビンゴだよ! ビンゴだよ!」
高速でキーボードに入力を繰り返す岳のパソコンから、ビンゴちゃんの声が繰り返される。
「ジャバウォックは、名も無き英雄の剣、ヴォーパルソードで打ち倒されているよ」
「なら、それが何かを知らなければいけないって事か? 岳」
「そう、しかし、そんな剣は存在しないんだ。剣も、奴も架空の存在だからね」
「打つ手、無しか?」
「いいや、奴を構成するものは判明したよ」
「それは?」
「言葉、言葉そのものさ。だから、あいつを物理的に倒すことは無理」
言葉の権化、ジャバウォック。言葉に影響を与える事が出来るものならば、奴を倒すことが出来るのだろう。
心辺りはあるが、今はいない。他の、健全的な解決策を探すしかなさそうだ。
「ヴォーパルか、岳。英文の意味を調べてくれ」
「はいよっと、了解!」
「ビンゴだよ!」
「その言葉には、鋭い、絶対の、等の意味が含まれるね」
「鋭い、絶対...... 置き換えるなら。心理?」
「僕も、それでいいと思う」
俺達は顔を見合わせて、そして二人で同時に言う。
「「ビンゴだ!」」




