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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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魔境の復讐 16

 綾香の手鏡から、金色の煙が噴出す。その煙は寄り集まり、やがて、人の形を取る。

 そして、その煙がはれたとき、もう一人の綾香が現れた。

 

 「「うふふふ」」


 煙から現れた綾香と、綾香は同時に笑う。

 顔も声も瓜二つである。しかし、その二人には明らかな違いがあった。

 新たに現れた綾香の瞳の色は、金色に輝き、なによりも、その格好が凄かった。

 詳しくないが、SMのボンテージと言うのだろうか? 赤い皮製の服、肌面積を極限まで増やしたデザイン。何よりも特徴的なのは、隠すべき場所が、真逆だと言う事だった。


 「お世辞にも、趣味の良い服とは言えないな?」

 「「あら? そう? 男性は、こういう服を好むと、雑誌に書いてあったのに、嘘なのかしら?」」

 「いやいや、それは、そういう男性もいると言うだけの事だからな......」


 性知識に関しての可笑しな理解、こういった抜けた部分は、綾香本人である事を俺に意識させるには十分だった。

 と、言うことは、彼女らしくない残虐性、態度、エロさ、こういったものも、彼女が普段見せない、本当の自分と言うものなのかも知れない。


 「「でも、残念ね、折角、玲子ちゃんにも、お揃いを着せてあげたのに」」

 「そいつは、想像したく無い光景だな」

 「「何故? 好きな相手の、興奮するような格好は見たくない?」」

 「俺があいつを? 馬鹿な事を」


 どうやら、今回の騒動は、綾香の玲子に対する嫉妬が原因らしい。いや、違うか。

 最初に行方不明になったのは、彼女に嫌がらせをしていたグループ、小百合達だ。

 そう言えば、小百合は、あれ以降俺の元に来ていない。

 もしかしたら、綾香に捕まっているのかも知れない。


 つまりは、始まりは、彼女の復讐心からだ。これに関しては、同情の余地など無い。

 そういった行為に対しての報いでしか無いのだから。

 識鬼を生んだのは、間違いなく綾香だ、しかし、生ませたのは、小百合達だ。

 もっと言えば、綾子だろう。

 この化け物を生み出した責任は、彼女達にある。元を正せば、禍物を作った何者かが一番の悪なのだが。


 かと言って、綾香に責任が無いわけでは無い。確かに、綾香は被害者だ。

 しかし、彼女は、エゴに飲まれた。復讐では飽き足らず、理想の自分、理想の世界を得るために、彼女は、その力を意識して使い始めた。そして、飲み込まれたのだ。


 「「じゃぁ、貴方は。彼女が好きじゃ無いの?」」

 「下らんな、俺が、あいつに惚れてるなど」

 「「嘘ね、心に決めた人でもいない限り、私の誘惑は断れない」」

 「勝手に言っていろ、俺は、その禍物を破壊するだけだ」

 「「そう、好きにするわ。でも、これは壊せない。そして、貴方も私の物にする」」


 二人の綾香が、手に持った魔鏡を互いに向かい合わせる。

 すると、何も無い空間に、まるで、ガラスにヒビが入るように、無数の亀裂が走る。

 それらは、ビキビキと音を鳴らし、やがて、パリン! と、音を立てて、砕けた。


 辺り一面にこの世の物とは思えない空気が漂う。そして、辺りから不気味な呻き声が聞こえ始める。


 「オオオオオオォォォォ!」

 

 小さな呻き声は、やがて、大きくなり、俺の近くからも聞こえ始めた。

 俺は、この現象を知っている。過去に、同じものに遭遇し、そして、叔父によって助けられた。

 高位の識鬼、神に近しい存在まで、その力を増幅させた識鬼、識鬼神が使う現象。


 「異界融合か......」

「「あら? 知ってるの? そう、この世界に、私の世界を繋げたのよ」」


 いつの間にか、呻き声の主達が現れ、俺を取り押さえようとする。

 俺は、そいつ等を拳で打ちのめし、難を逃れる。


 「「あははは、凄いでしょう? 綺麗でしょう? 私の世界、私の世界では私は女王なの」」

 「綺麗? これがか? どういう美的センスだよ」

 「「生意気ね、少し、お仕置きが必要ね。そうだわ、貴方の大事な人が汚されるのを見せてあげる、縛って、動けなくしてからね」」


 金の綾香が繰り出す鞭を、俺は、如何にか回避する。

 そして、余裕を見せて、俺は、綾香に言う。


 「お前は、一つミスをした」

 「「ミス? 私が?」」

 「異界を繋げた事だ。これで、あいつ等が参戦出来る」

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