古銭の誘い 21
翌日の早朝、鮫島は渡部の命令で店先の掃除をさせられていた。
自分が彼の怒りをかった事は分かる。
「はて?何が悪かったんだ?茶を噴出すくらいでいつもは怒らんのにな」
鮫島は何かの気配を感じふと視線を移す
そこには、すさまじい勢いでこちらに向かってくる晴香がいた。
「ど、どうしたんだよ。お嬢さん」
「た、大変です!森が館で館が妹なんですよ!」
「ま、まぁ。落ち着こうぜ」
鮫島は事務所に晴香を通すと椅子に座るように促す。
「とりあえず落ち着こう、お茶でも飲んでそれから話そうぜ」
言い終わるか否か渡部がお茶を持ってきて晴香にだす。
晴香はお茶を一口のみ落ち着いてから話し始めた。
「昨日、鮫島さんは何か痕跡があるかも知れないと言いましたよね。是を見てくれませんか」
晴香は自分が書いた小説をプリントアウトした物を二人渡す。
「この内容なんですが、今の私に酷似してると思いませんか?」
二人は目を通した後に唸る。
「なるほど、僕は是を見る限り。彼女が後藤さんを追っている途中で記憶を無くした様に見えますが」
「決め付けるのは早いんじゃないか?彼女はものかきだ、似たような文章を読んだ事があるのかも知れない」
「私も、似た文章を読んだ線は考えました。でも、直感的に私は彼を追っていたような気がするんです」
鮫島はフムっと思案する。
「直感では、やっぱ駄目ですかね?」
萎れていく晴香に鮫島は首を振って答える。
「いや、上等だ。こういう時は直感に頼ってみるのも一つの手だな、君が知ってる情報をくれないか」
晴香は頷くと自分が書いたメモを出す。
「これは、私が最近思い出した事をメモしたものです」
「ほう、では僕も拝見させて貰うよ」
鮫島と渡部は彼女のメモを確認する。
そこにある家はそこには無い家、そこにある物はそこには無い物。存在しない家から存在しない物を私があげましょう。それが存在すれば貴方は幸せになれる。
無いものはどうすれば存在するの?どうすれば貴方は幸せになるの?私の欲しいものを貴方が下さい。貴方が欲しい物を私があげましょう。
メモの詩を晴香が詠う。
「この詩、何だと思いますか?」
鮫島は唸った後に話し出す。
「どこかで聞いたことあるうな、ないような、なんだったかなぁ?」
「因みに僕は分かりません。なので彼の分野の事なんでしょうね」
少しの間を置いて渡部が提案する。
「まぁ、まずはこの詩から調べませんか?少しずつ片付けましょう」
「そうだな。まずは昔の詩を探しに図書館にでもいくか」
立ち上がりかけた鮫島に渡部が言う。
「いえ、行くのは向かいの民族博物館です」
渡部はお気に入りの眼鏡を触りながら行き先を告げた。




