三話 竜生ってぬるいね
「ギャッヒィィィィィィッ!!!」
…これで最後だろう。
他のゴブリンより一際大きなゴブリンが、青い血を身体中から噴き出して息絶えた。
もうこれで全てのゴブリン達の長を殺した事になる。
長かった…。
10年掛かった。
もう一度言おう、10年掛かった。
あの後呑気にゴブリンの肉を食って過ごしてたんだが、来る日も来る日もゴブリン達が襲ってきて、何度も何度もゴブリン達を殺しまくった。
1万…いや、10万以上のゴブリンを殺しまくった。
これでやっとゴブリン達も大人しくなるだろう。
この世界にもレベルアップの概念があるみたいで、ゴブリン達を殺しまくる度に謎の成長痛と脱皮を繰り返した。
もう何回鱗が生え変わっただろう。
今や一口でゴブリンを飲み込めるくらい大きくなった。相変わらずゴブリンは不味いけど。
鱗はより黒さを増していて、尻尾も長くなって、翼がかなり大きくなった。
これなら成体と言っても良いのではないだろうか。
ところで、竜の寿命って幾つなんだろう。
どうでもいいか。
っうお…
また全身が痛くなった。
久しぶりの成長痛だから、結構痛いな…
だが慣れたから大丈夫だ。問題無い。
空も飛べるようになった。
それなのにこの森を離れなかったのは、この辺り飛んでるとゴブリン達が物を投げてきて危ないからだ。
あいつら、気持ち悪いくらいにしつこい。
こうやってゴブリン達を残滅するしか無かったのだ、安全に飛行する為にはな。
ゴブリンの他にも、角の生えた狼とか兎とか、赤い雀蜂とかが襲ってきたりしたが、全員食った。
蜂以外は美味しかったぞ。
ただ変な事に、人が何故か森の中に入って来てないんだよな。薬草とか人って取りに来ないの?
他の竜も見たは見たが、そんなに居なかったし…。
兎にも角にも、これで大空に飛び立つ準備は完了だ。
早速、雌竜求めて大空に飛び立つぜ!
ヒャッホウ!!!
早速俺は両腕を大きく広げ、強く羽ばたく。
するとかなり重いはずの俺の体は、以外と軽々と飛び上がる。
それを繰り返し暫くすると、遂に木々が小さく見えるくらいまで飛び上がれた。
前まではちょっと飛んだらゴブリン達に集中して攻撃されたからな、ここまで飛んだのは初めてだ。
にしても、何で人が誰も来なかったのかが分かった。
ここ、かなり酷い形状をした山岳地帯だったのだ。
斜面は急で、所々高い崖があって、オマケに何故か川が流れてない。湖があったが、結構高い位置にあったからな。
道理で誰も此処に来なかったわけだ。
此処に生えてる梨みたいな木の実、美味いんだけどな。
まぁアレだけゴブリンがわんさかといたら、こんな所に行こうとは思わないわな。
さぁて、何処に向かおうか。
東西南北、何処に向かうかでいつか出会える竜が変わる筈だ。
うーん、竜が居そうな場所は…
人気が少ない場所なら何処にでも居そうな気がするから、何処に行ってもいい気がするが…
よし!
南国目指すか!
其処なら冬が来ないからあったかいだろうし、最悪竜が居なくてもなんかあるだろ!
あったかい場所の方が生き物も多いしな!
…で、海は何処だ?
えーと、太陽が昇ってくるのが東だから、南は…アッチか、でも南に行き過ぎると南極行っちゃうから、南東に向かえばいいのか?
それじゃあ、南国の島にレッツラゴーだ!
俺は翼を広げて体重を傾けて滑空する。
空の旅は快適だ、向かってくる風が心地良い。
今は季節的に秋か?
にしても、この森は結構でかいな、あれから一時間近く飛んでるのにまだ続いてる。
やっぱ異世界って広いんだろうな。
お、遂に抜けた!
さぁ、森の先には何が…
「助けてくれぇぇぇ…」
殺戮ショーが繰り広げられようとしてました。
盗賊達が俺の眼下の村を囲んでいる。
もう男なんか人質に取られてて、いつ殺されるか分からない状態だ。
まぁそうだよな、異世界はそこまで文明発達して無いから、治安荒れまくってるだろうし。
こんな事は日常茶飯事だろう。
だからって俺は元人間だ、人の首が斧で跳ねられるシーンとか見たら発狂しちまう。
俺は一気にあの盗賊の頭に向かって急降下した。
「テメェら出すもん出せねぇなら、こんな風になぁッ!」
そう盗賊が叫んで斧を振り上げたその瞬間に、俺の鼻先が盗賊の頭に直撃、盗賊は勢いよく地面を転がっていった。
…ん?
何で地面に血が付いてんだ?
「ギャア、ア…!」
あの男、顔からダラダラと血を流している。
そ、そんなに勢い強かった!?
…いや、顔の鱗が刺さったのか。
「りゅ、竜!?」
「なんでこんな所に来やがった!?」
他の盗賊達は俺を見ただけで腰を抜かしている。
…お前ら盗賊だろ、そんな逃げ腰でどうすんだ。
「クソがッ!」
盗賊の一人が俺の胴体に向けて斧を振り下ろした。
だが俺の鱗は斧を通さず、鱗の一部が砕けて大量の破片が飛び散り、幾つか盗賊に刺さった。
「ギャアアッ!!?」
彼はあまりの痛みに耐え切れず地面に倒れ、地面を転がり回っている。全身からはダラダラと血が流れ出て、地面を赤く染め上げる。
ゴブリン達との度重なる戦闘で気付いたが、俺の鱗はどうやら刃のように尖っているみたいで、触れただけでも傷つくみたいだ。
並の攻撃じゃ鱗は壊れないし、もし砕けると破片が飛び散って全身に刺さる。
…俺、防御面はかなり強いみたいだ。
「クソ、テメェら逃げろ!」
「こんな奴に勝てるかよ!」
盗賊達は手に持っていた斧を投げ捨てて、その場から逃げ去っていった。チョロいな。
…あれ?
何で俺はこの世界の人間が何話してるのか理解できるんだろ。
確かに、話し方は英語に似てるけど…
どう考えても英語とは違うんだよなぁ…
まぁいいか。
御都合主義って事で。
「ひ、ひぃぃッ!」
…こっちの人質君まで震えて、大の大人が漏らしてしまっている。
やべぇな、俺もそろそろ立ち去るとするか。
もうあいつらは来ないだろ。
俺は再び翼を羽ばたかせ、大空に飛んで行った。
ちょっと寄り道したが、次はいよいよ海に向かうぜ!
海竜とかいるかな?




