↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『月給30万の最強監査官、汚部屋で寝たいのにヤンデレ村長と底辺人魚が勝手に居座ってくる件~迷惑チートは規約違反で物理BANします~』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/10

第一章「101号室は世界で最も危険かつ平和な聖域である」

最強の公務員は、深夜のファミレスでメロンソーダを飲みたい(迷惑チートは物理BANします)

深夜二時。

ルナミス帝国、レオンハート獣人王国、アバロン魔皇国の三大勢力が国境を接する緩衝地帯——特務自治区ポポロ村。

表向きはのどかな農村だが、裏では各国の軍人や冒険者が入り乱れ、地下にはドワーフの地下帝国が広がる、大陸屈指の「魔境」である。

だが、そんな魔境の夜は、信じられないほど静かで平和だった。

「ふぅ……」

ポポロ村のメインストリートに煌々と輝く看板、『ルナミスキング(通称ルナキン)・ポポロ支店』。

その窓際のボックス席で、俺——相馬一臣(そうま かずおみ)は、グラスに入ったメロンソーダをストローで啜りながら、深く、深く安堵の息を吐き出していた。

24時間営業の異世界ファミレス。

タローマン製の汚れが目立たない黒のセットアップスーツに身を包んだ俺は、ノートパソコン代わりの『エンジェルすまーとふぉん』を叩き、今日の業務報告書を作成している。

大宇宙管理局、カスタマーハラスメント部。

それが俺の所属部署だ。

給料は月額三十万円(手取り二十四万ちょい)。世界を創造する世界神ルチアナ(給料二十五万)より微妙に高いせいで、給料日のたびに駄女神から嫌味を言われるが、俺から言わせればこの「カスハラ危険手当」すら安すぎるくらいだ。

この世界には、神々から与えられた「チートスキル」を振りかざし、世界のバグとして暴れ回る勘違い野郎が多すぎる。

俺の仕事は、そういう「理不尽なモンスタークレーマー」を、世界の利用規約に則って処理することだ。

「よし、報告書完了。メロンソーダのおかわりをもらって、帰って寝るか」

グラスを手に持ち、ドリンクバーへと立ち上がろうとした、その時だった。

——ドガァァァァンッ!!

ファミレスの魔導自動ドアが、けたたましい爆音と共に吹き飛ばされた。

ガラスの破片が店内に散乱し、深夜の静寂を楽しんでいた数名の客(非番の獣人兵や魔族の商人たち)が、一斉に武器に手を伸ばす。

「ヒャッハー! ここは今日から俺様の城だ! NPC共、全員ひざまずけぇっ!!」

土足で踏み込んできたのは、無駄に装飾の多い聖騎士風の鎧を着た、金髪の若い男だった。

手には不気味な紅蓮の炎が渦巻いている。

「俺は炎上神ワイズ様から『絶対爆炎(ヘルプロミネンス)』のチートをもらった選ばれし主人公だ! おいそこのウェイトレス! 一番美味いメシと、お前自身を俺のテーブルに運んでこい!」

男は下品な笑い声を上げながら、見せしめとばかりに炎の弾を放ち、無人のテーブルを黒焦げの炭に変えた。

深夜シフトのアルバイト店員が、悲鳴を上げて腰を抜かしている。

周囲の客たちは、男から放たれる異常な魔力とチートの気配に圧倒され、動けないでいた。

無理もない。神から直接与えられた規格外の能力。常識的な闘気や魔法では、絶対に太刀打ちできないからだ。

だが。

「……あのさ」

俺は、手元の空のグラスを見つめながら、ゆっくりと立ち上がった。

「あんたのしょうもない自己紹介のせいで、俺のメロンソーダのおかわりが行けなくなったんだけど」

「あぁん?」

金髪のチート男が、面倒くさそうに俺を振り返る。

そして、ニヤリと鼻で笑った。

「なんだテメェ? ステータス偽装もしてねぇのか。レベル1の『ただの人間』じゃねぇか。モブが俺様に歯向かうとどうなるか、その身で教えてやるよ!!」

男の右手に、ファミレスの天井を焦がすほどの巨大な炎の球が圧縮されていく。

撃ち込まれれば、店ごと吹き飛ぶ熱量だ。

だが、俺は焦ることもなく、ポケットから『エンジェルすまーとふぉん』を取り出し、画面を数回タップした。

「大宇宙管理局カスハラ部、特務執行官の相馬だ。——対象の身元およびスキル発動を確認」

「死ねやぁぁぁっ!!」

男が特大の炎を放とうと腕を振り下ろした、その瞬間。

「当世界線の利用規約第4条、『理不尽な暴力による他者の尊厳毀損および神格権限の不正利用』に該当。——よって、お前のチート能力はこれより三十分間、強制執行停止(アカウント凍結)とする」

俺が冷たく告げた言葉——ユニークスキル【規約執行(コンプライアンス・キル)】が発動した。

「喰らえ絶対爆——え?」

シュボッ。

男の手に宿っていた圧倒的な炎が、まるでガス欠のライターのように、情けない音を立てて完全に消滅した。

店内に満ちていた魔力も、男のステータスも、すべてが「一時利用停止(フリーズ)」状態に陥る。

「は? え? 炎? 俺のチート!? なんで出ねぇんだよ!?」

「当たり前だろ。規約違反でBANされたんだから」

パニックに陥り、自分の両手を見つめる男。

俺はその隙を見逃さず、一歩で男の懐へと踏み込んだ。

魔法も闘気も使わない。

ただの現代で培った、実践的な合気柔術とマリーシア(ずる賢さ)の応用だ。

俺は男の右腕を掴むと、一切の無駄な力を省いた完璧な重心移動で、その腕を背中側へと捻り上げた。

「ガァッ!?」

「自動車学校にも通わずにフェラーリ(チート)に乗るから、こうやってガス欠になった時に自分の足で立てなくなるんだよ」

メキョッ、と肩の関節が嫌な音を立てる。

男が痛みに悲鳴を上げようとした口を、そのまま近くのテーブルの角へと容赦なく叩きつけた。

「アッ、グェ……ッ!?」

チートによる身体強化すら失ったただの素人が、俺の制圧格闘術に耐えられるはずがない。

男は鼻血を吹き出し、白目を剥いて、ファミレスの床へと崩れ落ちた。

「……ふぅ。制圧完了。営業妨害の現行犯逮捕だ」

俺がスーツの袖を払いながら息を吐くと、

「いやぁ、相馬はん。今日も派手にやりましたなぁ」

と、コテコテの関西弁が背後から響いた。

振り返ると、煙管を吹かしながら、豪勢な和装を着崩した猫耳族の青年が立っていた。

ゴルド商会所属、ポポロ村の財務顧問を務めるニャングルだ。

「……ニャングル。ちょうどいい、こいつの回収を頼む」

「毎度ありですわ。ドアの修理費、テーブルの弁償代、それに店員さんへの精神的慰謝料……チト足りまへんなぁ」

ニャングルは手元の魔導算盤をパチパチと弾きながら、床に倒れる男を見下ろしてニチャァと笑った。

「こいつの身柄、ウチで買い取らせてもらいまっさ。マグローザ漁船にドナドナするか、ドンガン地下帝国の最下層で五十年間ツルハシ振らせるか……きっちり『地下労働』で儲けさせていただきますわ」

「好きにしろ。手続きはあとでスマホに送っておいてくれ」

俺はドリンクバーの代金をQR決済で済ませると、ため息をついて店を出た。

深夜の冷たい空気が、少しだけ疲れた頭を冷やしてくれる。

(……やれやれ。月給三十万で、なんで俺がこんな宇宙規模のクレーム処理をさせられてるんだか)

だがまあ、仕事は終わった。

あとは、俺が借りている安アパート——『ポポロ・コーポ101号室』に帰り、誰にも邪魔されずに泥のように眠るだけだ。

あそこは脱いだ服や通販の段ボールが散乱する完全な汚部屋だが、俺にとっては唯一の「誰にも邪魔されない平和な絶対聖域」なのだから。

……この時の俺は、まだ知らなかった。

その「絶対聖域」の鍵が、すでに“ヤバい奴ら”によってこじ開けられていることなど。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「理不尽なチート野郎を、規約違反で物理的にボコボコにする公務員、ちょっとスカッとした!」

「ファミレスでクレーム処理(物理)する主人公、なんか良いな!」

「続きの『汚部屋での展開』が気になる!」

と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひ画面下(または上)にある、

・【ブックマークに追加】

・【☆☆☆☆☆】の星(評価ポイント)を【★★★★★】(星5つ)にして応援!

をポチッと押していただけると、作者のモチベーションが爆上がりし、ソウマの胃痛が少しだけ和らぎます!

(皆様の評価一つ一つが、この作品をランキングに押し上げる最大の力になります!)

次回第2話、

『合鍵を勝手に錬成するヤンデレ村長が、俺の汚部屋をピカピカにして待っていた件』

に続きます! 引き続きよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。