最終話 名前のない距離
夜。
静か。
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主人公
「……眠い」
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電気を消す。
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ベッドに入る。
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少しして
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猫
来る。
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主人公
「今日も来るんだ」
猫
無言。
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いつもの場所。
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少しだけ間。
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でも
前より近い。
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主人公
「最近ちょっと近くない?」
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猫
動かない。
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主人公
「気のせいか」
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しばらく沈黙。
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主人公
「……」
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なんとなく
視線。
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部屋の入り口。
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あの場所。
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暗いまま。
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主人公
「……」
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少しだけ見て
やめる。
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主人公
「まあ、いいか」
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猫
少しだけ動く。
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ぴたっ
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主人公の腕に触れる。
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主人公
「……珍しいね」
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猫
無言。
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でも
離れない。
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主人公
「今日はそういう日?」
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猫
「…にゃ」
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主人公
「ふーん」
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そのまま
目を閉じる。
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静かな時間。
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主人公
「……ねえ」
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猫
ぴく
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主人公
「やっぱりさ」
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少し間。
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主人公
「名前、なくていいや」
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猫
動かない。
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主人公
「呼ばなくても来るし」
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猫
「…にゃ」
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主人公
「それで十分だね」
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しばらくして
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主人公
「……おいで」
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猫
少しだけ近づく。
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ぴたっ
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主人公
「ほら、来る」
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猫
無言。
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そのまま
時間が過ぎる。
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主人公
「……ありがと」
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猫
小さく
「…にゃ」
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部屋の入り口。
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何もない。
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でも
そのまま。
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結局
この猫が何なのかはわからないままだった。
あの場所に何があるのかも、きっとわからない。
でも
それでもいいと思えるくらいには、そばにいるのが当たり前になっている。
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名前はない。
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でも
ちゃんと来る。
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それだけで、十分だった。




