7.問.トイレの神様のためにトイレ掃除をしたら?
家に帰ると俺は予定通りトイレ掃除をした。
「ここがいいのか? おっ、ここもか?」
そんな独り言をいいながら縁の裏まで念入りに。
どうだトイレの神様。こんだけやればもっとビックで素晴らしいことを引き寄せてくれるだろう。
月曜日、頼んだぜ神様!
俺が掃除を終えると早々に妹の月花が顔を青くしてトイレに駆け込んできた。
「兄、いつまで掃除してる。月花……もう、も、漏れるっ」
「すまん、妹よ。兄ちゃんの祈りが通じるまでトイレは我慢してくれ」
「な、なにを言っている兄。そこをどく……」
「そうは問屋が卸さんぞ」
俺と月花は互いに右に左に動き回り、フェイントを掛け合いながら互いの動きを見極めていく。
緊張感のある駆け引きが続き、額からは薄っすら汗がにじんだ。
ここは負けるわけにはいかん。
──サササッ、サササッ。
「ぬぁぁ〜〜〜! もう無理。兄どくのぉぉぉ!」
「ふはははっ、っておい、待て、頭突きは、頭突きはなしだぞ月花! ──ぐふっ……」
リミッターが外れた月花は頭を下げると勢いよく俺の腹めがけて鋼鉄の石頭を激突させた。
月花は気に食わないことがあると自慢の石頭を使って攻撃してくる。その威力は強力で、華奢な体からは想像もできない一撃を放ってくるから厄介だ。
俺は背中から壁に打ち付けられると悶ながら腹を押さえた。
あぁ、せっかくキレイに掃除したというのに……。
「あら、あんたこんなとこでなにしてんの?」
「か、母さん……。神様が汚された」
「何言ってんのバカな子ね。そういえば今テレビでアイルちゃん出てたわよ。人気も上がってきたし、センター狙えちゃうかもね」
「ふーん。そうなんだ。まああいつも色々頑張ってるんだな」
「そうねー。アイルちゃんと幼馴染なんてあんたの人生の中で唯一自慢できることね」
唯一ってなんだよ。他にも自慢できることくらいあるっての。
例えば……そうあれだよ、コンビニ滞在記録8時間。暇つぶしを極めし者ができる最高の記録だ。店員の人さえ気づいたら入れ替わっている。
あとは……特にないな。
あれ、俺の自慢ってやっぱりアイルだけなんじゃね。
まったく認めたくないものだな、自慢だということを。
俺は基本的にあいつが出てる番組は見ないし、ライブとかも家族で俺だけ行ったことがない。
興味がないといえばそれまでだが、それ以外にも理由はある。
幼馴染に対する劣等感だ。
アイルはアイドルってだけじゃなく、勉強もできて運動神経もいい。
そんな俺には無いものばかりもっている彼女がリアルに活躍している姿を見るのは俺的には結構来るものがあった。
まあそんなわけで臭い物には蓋、いや幼馴染には蓋をしたわけだ。
「もうすぐご飯できてるから早く来なさいよ」
そう言うと母さんはリビングへと戻っていった。
「へいへい」
「ふぅ〜、スッキリしたぞぉ。兄、反省したぁ?」
「ああ、すごく反省した。だから金輪際頭突きはやめてくれ」
「おぉ、それはわからない」
わからないのかよ!
「星斗、月花。早く来なさい! ご飯冷めるわよ」
「「はぁーい」」
☆
飯を食べ終え、溜まったアニメを見て今日は寝てしまった。
こうして俺の長い一日が終わったのである。




