第48話 海といえば!
「海といえば、水着だよね!」
そう言い出した渚に、今日は朝から連れ出された。
夏休み初日だし、少しはのんびりしようかな……と思っていたのに。
もちろん、渚が誘ってくれたのは嬉しい。だから、寝起きだったにも関わらず、急いで準備をしてショッピングモールへやってきたのだ。
夏休みシーズンのため、ショッピングモールには水着のポップアップストアもある。
ショッピングモールに入ってすぐ、渚はそこへ向かった。
「海行くのに桃華、スクール水着しか持ってないでしょ?」
「……まあ」
運動が苦手な私は、泳ぐのもあまり得意じゃない。だから、遊びに行く用の水着なんて持っていないのだ。
だが、さすがに今回は新しい水着を買う必要があるだろう。高校生にもなって、スクール水着で海へは行けない。
「私が桃華の水着、選んであげる」
ありがとう、と言うべきなのだろうか。なにかを企んでいるような顔で笑う渚を見ると、素直に喜べない。
「これとかどう?」
渚が手にとったのは、シンプルな黒のビキニだった。ただ、布の面積がかなり少ない。
「無理。なるべく肌が出ないやつにしてよ。ワンピースタイプとか、普段の服みたいなやつ」
「えー、それじゃつまんなくない?」
私を見て、からかうように渚が笑う。
いったい、渚は何を考えているのだろう。海には草壁だってくるのに。
「上からラッシュガード羽織ればよくない? そのままでも海入れるやつ」
「……それ、中がビキニである必要ある?」
確かにラッシュガードを羽織れば、上半身はかなり隠せる。
下半身は出てしまうけれど、胸元とお腹を隠せるというのはすごくありがたい。
「ある。私が嬉しいの。ねえ桃華、いいでしょ?」
狡い。そう言えば、私が断れないことを知ってて言ってるんだから。
「ほら、これも桃華に似合いそう」
次に渚が見せてきたのは、赤い水着だった。下がスカートタイプになっているのはありがたいが、かなり派手だ。
しかも、相変わらず上半身の布面積が少ない。
「……もっと地味なのじゃだめ? これとか」
近くにあった灰色の水着を指さすと、渚は思いっきり顔を顰めた。
「さすがにそのチョイスはおばさんすぎ!」
「そう? 落ち着いてていいと思うけど」
「女子高生が着る水着じゃないって」
そうなの? まあ、そうなのかも。
元々私は派手好きじゃないし、精神年齢は女子高生とはかけ離れている。
渚の言うように、この水着はおばさんすぎるのだろう。
「うん、やっぱりこれがいいよ。ね」
先程の赤い水着を押しつけられる。布面積はやたらと少ないくせに、一万近くするらしい。
「これ着た桃華、見たいな」
甘えるような上目遣いで私を見つめ、渚は私の手を握った。
「私の前でだけ、ラッシュガード脱いでよ」
「……分かったよ」
渚の意図は分からないけれど、断れないのだから、渚に従うしかない。
まあ、三人で海に行くだけだし、変なことは考えてないと思うけど。
「そうだ! これ買ったら、後で日焼け止めも買いに行かないとね」
「日焼け止め? 渚、なくなったの?」
「私のじゃなくて桃華の! 桃華は日差しに弱いんだし、海行くならいつもより強力なのが必要でしょ」
当たり前のように、渚はそう笑った。
「……ありがとう。そうする」
「うん! その後、ご飯食べよ」
渚がなにを企んでいるかなんて、考えたって分からない。
だったら今は、渚とのデートに集中した方が楽しいに決まってるよね。
「その後は、甘い物でも食べない?」
私の提案に、渚はすぐ頷いてくれた。




