第47話 まさかの結果
「……あー、やばい、次の数学で、全部決まるんだよね」
渚だけじゃなく、草壁も緊張した顔で先生が入ってくるのを待っている。
次の授業は数学。他の科目は全て返却されたため、数学の点数で勝敗が決まるのだ。
数学以外の四科目の合計点は、草壁が253点、渚が250点だ。私目線だとどちらもあまりいい点数ではないけれど、二人が頑張ったことは分かる。
数学で渚が勝てば、渚の勝ち。
だけど……。
「藤宮さん、数学苦手でしょ。これはもう、俺が勝ったようなもんだね」
草壁が勝ち誇った表情で渚を見下ろす。渚は無言のまま舌打ちし、草壁を睨み返した。
草壁が言っていることは事実だ。渚は数学がかなり苦手で、テスト勉強をしている時も一番苦戦していた。
いつの間にか草壁、渚の苦手科目も把握してるんだ。
テストの合計点で勝負する、となった以上、互いの苦手科目や得意科目を意識するのは当たり前だろう。
でもやっぱり、気分がいいものじゃない。
嫉妬させて恋心を自覚してもらう作戦だったけど、失敗だったのかな。
「桃華ちゃんとどこに行こうかな。夏デートなんて、一年で一番わくわくするよね。夏祭りもいいし、海とかプールもいいし」
渚を挑発するように草壁が笑った。ねえ、と笑いかけられれば、さすがに頷いてしまう。
ちら、と渚を見ると、渚は怒りに燃えた目で草壁を見ていた。
そんな顔をするなら、さっさと告白してくれたらいいのに。
♡
「草壁。何点だった?」
神妙な顔つきで渚が尋ねる。草壁は手元のテスト用紙を勢いよく渚に見せつけた。
「73点! どう!? まさかの70点ごえ。これはもう勝ったでしょ?」
今回、渚はかなり勉強を頑張っていた。特に数学は苦手だからと、他の科目よりも時間をかけて勉強していた。
でもさすがに、これには勝てないよね。
と、私は思っていたのだけれど。
「これ、見て」
バン! と渚は勢いよくテスト用紙を机の上においた。
大きく赤で書かれた数字は……76。
「76点!?」
「そう。数学で私に負けるなんて思わなかったでしょ?」
草壁が悔しそうな顔で俯く。反対に渚はどや顔を披露した。
草壁が73点で渚が76点ってことは、五科目の合計点は同じ?
つまり、引き分けってこと?
まさか同点になるとは想像もしていなかったから、同点だった場合のルールなんて決めていない。
「……でも、合計で負けたわけじゃない。俺と藤宮さんは同点だよ」
「知ってる」
「どうする? 一回ずつデートに行くとか?」
「そんなの絶対無理。っていうか言ったじゃん、私と桃華はデートし放題だって」
草壁の提案をあっさり断った後、渚は満面の笑みを浮かべた。
「三人で行くしかないでしょ、デート」
「……え?」
「ねえ桃華。いいよね?」
どういうつもりなの?
てっきり、私と草壁がデートをする話がなくなるだけだと思っていた。
三人で出かけることを提案するなんて、渚はなにを考えているのだろう。
「草壁もいいでしょ? 桃華と出かけられるんだから」
「……確かに」
「それと、行く場所はもう決めてあるの」
渚は私を見て、にやっと笑った。
「海、行こ」
なにかを企んでいるとしか思えない笑顔に、背筋が凍る。
「いいでしょ、桃華」
すごく嫌な予感がする。
だけど相変わらず私は、渚の提案を断れない。だって、渚が好きでしょうがないから。
「……分かった」
渚はいったい、海でなにをするつもりなんだろう。




