パーティーに出会いは求めるべからず
「寿命、か」
『ええ。どちらにしろ、彼女は魂が消える。だから変に重く受け止めないで。霧散した魂は、この世界に組み込まれているシステムで再構築され、新たな魂になる。輪廻、という奴ね』
マーサからの話に納得したニノマエ。
最後に、マーサが彼に伝えた。
『あと、とんでもない事が分かったわ。貴方と敵対している冥府神。どうやらこの世界の管理神の一柱ではないようなの』
「……私の親も、この世界の神ではないと思うが」
『ええ。だから、エレシュキガル様は元々、この世界の管理神の一柱が貴方の根源と縄張り争いをしていると思っていたのよ。でも、違ったわ。今の状況を人間世界でたとえると――人の家に不法侵入した奴同士が勝手に暴れているって感じね』
「それは、まずいな。しかし、何故管理している神は気づいていない?」
『放置してたらしいわ。いえ。何もしていない訳ではないのよ。管理神はちゃんと世界が継続できるようにシステムを完璧に構築した。してしまったから、放置していただけなの』
「成程」
プログラミング任せにしては駄目だと人はよく言うが。
神々においては、プログラミングを完成させれば後はどうとでもなる。
唯一、例外があるなら、今回のような他の神々が介入してくる事くらいだ。
『でも、本来管理している神に掛け合えば、この争いも終止符を打てる筈よ。だから――もう少し待ってて』
★
シンゲツが覚醒したのは、翌日の事だった。
本人からすれば、自分がいつの間にか知らない場所を転々として、C公国からも出国し、D連邦にいる有り様。
職員から事情を問われても「覚えてない」と返答するしかない。
C公国で賠償金の支払いを行った事も記憶になかった。
他にも知らない事情を確認され続け、最終的に法に関わる要人が尋ねて言われる。
「動物使い『アレン』のジョブ規則違反に関する事で、幾つかご質問をお願いします」
再びアレンの名を聞く事になるとは、シンゲツにとっても想定外だった。
しかし、シンゲツが寄生虫に寄生された件以外は特に問いただされず。
その後に、アレンに関する事で誰かが尋ねる事もなく退院となる。
シンゲツはその間、ぼんやりとしていた。
寄生虫による後遺症なのかと思ったが、どうやら違うと判断できる。
夢の中と同じ。何をする気力も湧かない。
多分、酒を飲んでも酒を美味しく感じない、あの現象が起きているのだと。
どちらにしろ――
「……金稼ぐしかねぇか」
入院費も支払わなければならない状況だ。
仕事をするにしたって、シンゲツは冒険者以外の活動をしてきていない。
何故かギルドカードは手元にないうえ、武器も所持していない。
ギルドカードの再発行と共に、クエストを受注しようとしたのだが――……
「はぁ?! なんだそりゃ! 大したランクのダンジョンもねぇのにソロ禁止って、どういう方針だ!!」
「す、すみません。近年そういう傾向になりつつあって……最低でも4人パーティーを結成して頂いてかないとクエスト受注は駄目なんです」
シンゲツが意識を失っている間、世間は変化していた。
W国という先進国の影響から、冒険者の義務が課されるようになっている。
一つは最低4人パーティー結成をしなければ、クエスト受注不可。
もう一つは魔導書を使った『使い魔』による記録義務。
これにより、冒険者の生存率を高まったのと不正行為や報告ミスが削減されたらしい。
旧世代の思考を持つシンゲツにとっては、面倒極まりない枷でしかなかった。
「あ、あの。すみません。ひょっとして、ダンジョンの探索をするつもりですか? 私もパーティーに加えて頂けないでしょうか」
そんなシンゲツに声をかけてくれたのは、茶髪ポニーテールの女性。
女か、と少し幻滅するシンゲツ。
動きやすい安い装備をしているので、治療系のジョブではないと察してしまった。
「お前、ジョブは」
「錬金術師のエイダと申します! 事前準備でサポート用のポーションとエリクサー、強化薬を用意してあります。アイテムボックスは解放していますので荷物持ちも兼任できます。報酬としてはお金より、ダンジョンで入手できる素材が欲しいのですが……よろしいでしょうか」
(錬金術師?)
シンゲツも冒険者としてある程度、ジョブについて把握している。
錬金術師は基本、冒険者として活動しない。
中央都市に拠点を構えて、冒険者などから素材を提供して貰い、アイテムを生成するのが基本。
つまり……エイダは、一般的な視点からすると不自然な存在だ。
(なんだコイツ。訳アリか? ……まあ、今は仕方ねぇな)
とは言え。
4人パーティーが義務付けられている現状、残る2人が集まるか怪しい。
シンゲツは「残るメンツ次第だな」とエイダに告げた。




