古山洋蔵(ふるやまようぞう)……招待状
「同窓会」
普通はかつての生徒達が企画してくれるのだが、
先日、主催をしてくれていたかつての生徒が亡くなった。
皆、歳を取った。そういうこともある。
しかし、教え子が先に逝くのはやはり辛い。
古山洋蔵は鏡を見ながらネクタイを調える。
かつての甘いマスクは皺と白の混じった無精ひげ。
シミと思っていたところは大きく膨らんできた。
しなやかで均整の取れていた身体の、筋肉質の胸は削げ落ちて、下腹で柔らかく揺れる肉になっている。
たくましかった腕には青い血管が浮き、痩せているというより衰えている。
ネクタイを調え、着古したスーツを着る。
学生結婚した妻は、退職と同時に離婚を申し出てきた。
……驚き、止めたが、退職金をごっそり持っていかれた。
「……癌の介護は。したくない。か」
今は元気だが、そうも言ってられなくなるだろう。
あのころの甘い思い出は、彼女にはもう無かった。
「あとの人生は好きに生きたい」と彼女は言っていた。
子供達は既に、洋蔵の前にはいない。
今はボロアパートと、時給790円で週20時間も入れないパートタイム労働。
家に帰って一人安酒を煽り、安いツマミの日々。
どこで間違えたのだろうか。
教師として。人間として。
担任をもてば問題から目を逸らし、
PTAを受け持っては保護者の機嫌を伺い、
部活の顧問になっても何もせず。
……。
……。
古山は古い、古いアルバムの中に、一枚の写真が入っているのに気がついた。
地味で、容姿に優れているわけではない。だが笑顔が儚く。美しい。
「……」
この子は、今、何処にいるのだろう。
彼はパソコンを苦労しながら操り、伝手を頼り、彼女の消息を調べだした。




