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星屑の傭兵  作者: 磯野海月
第3章
25/41

ドックでの惨劇

「マーフィー、どうじゃ気分は」

「なんだか、みんなのことが心配で落ち着きませんよ」


アークバスターのコックピットの中で、ホログラフ・モニターに投影されたカイヤンの顔にマーフィーは不安そうに返事をした。


「これから最終ロックを外す。意識活動に影響があるかもしれんが、マーフィー、どんなことがあっても、気をしっかり保つんじゃ。終わるまで絶対に途中でやめてはいかん」

「外部モニターとマイクはどうしますか?」

「そのままで、別に問題は無いじゃろう」

「その方が安心できます」


「それじゃ、始めるぞ」

カイヤンはアサルトマシーン整備用のコントロールデッキから、遠隔で操作して、最終ロックを外した。


「あれは、だれじゃ? 怪我をしとるようじゃが、まさか、敵!」

いきなり、カイヤンの目の前に、白いスーツに血を滲ませた知らない男が、駆け込んで来た。


「いかん! まだ、インプリンティングの途中じゃ」

カイヤンは引出の中から、銃を取り出して、男に向かって走った。

「お前は何者じゃ! ここから出ていけ! さもないと、撃つぞ!」


「今日は、邪魔ばかり入るな。もうたくさんだ! 消えろ! 虫けら!」

シュバッ! ハウザーは右腕を水平になぎ払った。


カイヤンの首が胴体から離れ、ゴトンと床に転がる。そしてゆっくりとカイヤンの胴体は倒れ、床一面が血の海になった。

「チーフ!!!」

・・酷い! 何てことだ。またこのマシンのために!

マーフィーはこの一部始終を外部モニターで見ていた。


「クソウッ! コックピットのハッチも手動で開かない! インプリンティングが終わるまで、外部からしか開けないのか!?」

マーフィーはコックピットの中で、怒りと悲しみに身を震わせる。


ハウザーはモニターに映ったマーフィーの顔を見つけた。

「このマシンに小僧が乗っているのか。

このマシンは、お前には荷が重すぎる。

狂って死ぬのがおちだ。

その前に、私がお前をそこから引きずり出して、殺してやるがな」


ハウザーはコントロールパネルのスイッチに手を掛けた。

 その時、ヒュン!! ハウザーの右手にフィヨリーナのワイヤーが絡まった。


「小娘、またお前か! 今度はさっきのようにはいかんぞ!」

ハウザーは右手に絡み付いたワイヤーを自分に手繰り寄せる。


「マーフィーさん、約束しました。あなたとアークバスターは私が必ず守ります」

「フィヨリーナ!! だめだ、逃げてくれ! こんなマシンと僕なんか、守ることはない!」


アークバスターの通信回線と外部モニターは、そのまま開いているので、外の様子は手に取るように分かる。

ヒュンヒュン! フィヨリーナは次々と何本ものワイヤーを、ハウザーに投げ付け、全身に絡めていく。


「この技は? スパイダー・プレイ(クモの餌食)。あの男の技か。よく習得できたな。だがその程度では私には通用しない!」

ダッ!! いきなり、ハウザーはフィヨリーナとの間合いを半分まで詰め、たるんだ数本のワイヤーでフィヨリーナの体を絡める。


ビーンッ フィヨリーナとハウザーの体は5メートルの距離を挟んで、お互いの体を絡め合った数本のワイヤーで、じりじりと引き合った。

キュイーン 目に見えないくらい、高周期でワイヤーが振動し始めた。


「馬鹿なことを、この状態で超振動を使えば、お前の方が傷つく」

フィヨリーナの胸、胴、腕、太股に食い込んだワイヤーから、血が滲み出し、彼女の衣類がパラパラと剥げ落ちていく。


マーフィーは二人の闘いを固唾を飲んで見守っている。

フィヨリーナの眉が僅かに歪む。彼女は激しい痛みを、表情に現すまいと、必死に堪えている。その様子を見続けるのは、マーフィーには、もう酷すぎる。

「フン!」

ハウザーは右腕を絡めているワイヤーを、別のワイヤーに接触させて、切断した。

キュルル!! 切断されたワイヤーの端がフィヨリーナの首に絡み着く!

「来い!」


ハウザーはフィヨリーナを、一気に自分のすぐ前まで引き寄せた。

「アウ、グッ!」

自分の首を押さえてもがくフィヨリーナを、ハウザーは高く吊り上げる。そして、ワイヤーのもう一方の端を、手首から上の無い左腕にからめ、ゆっくり左右に引く。


「ダメダァァァァーー!!!」

マーフィーはコックピットの中で絶叫した。

プアーッと鮮血がフィヨリーナの首の周囲から吹き出す。宙にぶら下がったフィヨリーナの両脚がバタバタと数秒もがき、そして、痙攣して動かなくなった。


「くうぅ、かなり、手間取ってしまったな」

ハウザーは血の海になったドックの床に、無造作にフィヨリーナの骸を投げ棄てる。

フィヨリーナの骸は、まるで壊れた人形のように、不自然な格好で床に転がり、目を開いたまま、アークバスターのカメラの方向を向いた。


なぜか、その顔がマーフィーの目の前のモニターでアップになった。

「ウヲオゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーー!!!!!」

アークバスターの機体を震撼させる、マーフィーの咆哮!

『インプリンティング、終了』の字幕がモニターに流れる。

アークバスターのコックピット内のホロフラフ・モニターが360度マーフィーの周囲に展開し、目映いばかりの光を放つ。


「すぐに、お前を引きずりだしてやるからな!」

ハウザーはコントロールパネルを触る。バチバチッと火花が飛び、ハウザーは手を引っ込めた。

「インプリンティングが終了したのか? だが、なぜだ! コントロールパネルの端末にさえアクセスできない」

ハウザーは自分の踵が誰かにつかまれたのに気が付き、驚いて後ろを向いた。

「お前! まだ生きていたのか!? ありえん! お前はただの人間のはずだ!」

「ウワッ!」

フィヨリーナはハウザーの踵を持ち上げ、ハウザーはバランスを崩し、前のめりに倒れる。

フィヨリーナは無表情のまま、倒れたハウザーの踵を放さないで、軽く手首を返した。

ブオン!! それだけの動作で、ハウザーの足首が千切れ、ハウザーの胴体が10メートルもふっ飛ぶ! ハウザーの体はズンッと壁にめり込んで止まった。


「ウオオ、おかしい、そんな馬鹿な! 痛みがある! 痛覚は、完全に遮断しているのに!」


フィヨリーナはハウザーに向かって、ゆっくり歩いて行く。

薄暗い中に、殆ど衣類を身に付けていない、血だらけの青白い肌が揺れている。

 一歩一歩進むごとに、今まで短かったフィヨリーナの髪がどんどん伸びて、床につくほどの長さになった。


フィヨリーナはハウザーのすぐ前で止った。

漆黒の、のたうつ髪の間から、さっきとは別人のような、残忍な歓喜にうち震えた笑みを浮かべ、フィヨリーナはハウザーを見下ろした。


ウェル2では、ようやくネットが回復しつつあった。シャドウは沈痛な気持ちで一人、スペースポートでウェル3行きの特別チャーター便のシャトルが、出発するのを待っていた。

「どんなに急いでも、あと30分。もう、手遅れなのか!? どれだけの被害がでていることか・・・。やはり、あんなことをフィヨに知らせなければよかったか・・・」

ベンチに腰掛けたまま、突然、シャドウの全身を強烈な悪寒と戦慄が走る。


「うっ! この感覚は!?」


シャドウは堪えきれずに、床に嘔吐して、倒れた。

・・・大変だ! フィヨが僕のコントロールを離れようとしている。もし、彼女が暴走したら、ウェル3ごとタワーズが壊滅するかも。・・これも、みんな、あのマシンの影響なのか?


フィヨリーナはハウザーの体に覆い被さるように、体を密着させ、唇を奪う。口を離すと今度は、ハウザーの血だらけの首筋から胸にかけて、ゆっくり舌を這わせる。


「お前はまさか、14フィフティーンスなのか!? どうやって、やつはどうやって、お前を制御している!? 私の霊体に侵入して、ペタ・セントリスの私の本体を破壊するのか!?・・・ウッ! やめろ! やめてくれぇぇぇぇぇーーーーー!!!」


フィヨリーナはハウザーの胸の傷口から心臓を咥え、ゆっくりと引きずり出した。生暖かい脈動する心臓を、慈しむように、舌の先で愛撫し顔中を血に染める。

フィヨリーナは目を閉じ、満足したような笑みを浮かべると、ハウザーの心臓に牙を立てた。


 短い断末魔の叫びを上げ、ハウザーは完全に絶命した。


 すぐに、ハウザーの体から、白い結晶が吹き出し、全身を包む。

 見る見るうちに、ハウザーは真っ白な塩の塊になって、フィヨリーナの腕の中で粉々に崩れていく。


 フィヨリーナはその塩を一掬い掌に乗せ、パッーと空中にばらまく。塩の結晶は、薄暗いなかを、キラキラ輝きながら舞い降りた。

フィヨリーナは振り返り、アークバスターに向かって歩きだした。


マーフィーはまぶしい光の中で、どのくらい時間が経過したのか、見当がつかなかった。

・・・意識がはっきりしているのに、光が見えているっていう感覚以外、何もない。僕は今、どうなっているんだ。


・・・ン? 風の匂いがする。これは、五月の新緑の匂い。

マーフィーの住んでいたコロニーにも人工的ながら、季節はあった。

しかし、この風の匂いは、もっと複雑で力強い、本当の自然のエッセンスのように感じる。


スウッと、マーフィーの眼前に抜けるような青空が広がる。

・・・青空? バーチャルな映像か? それともまた、あの時のように、幻覚を見ているのか?。


・・・背中に温もりを感じる?

マーフィーは自分の後ろに手をまわし、ギュッと何かをつかむ。

草? 大地か・・・。


マーフィーは美しい青草が風に波打つなだらかな丘で、ゆっくりと起き上がった。

ここは、コロニーの中じゃないのか?


マーフィーはぐるっと周囲を見渡す、コロニーの不自然に湾曲した地平ではなく、どこまでも、まっすぐな地平線が続いている。


「すごい! なんて立派な樹だ」

マーフィーの真後ろで、高さ100メートル以上、幹の周囲だけでもかなりありそうな大木が、五月の風に梢を揺らしている。


「なんじゃ、この樹が見えるのか」

樹幹の陰から老人が一人、ゆっくり出て来た。


「あなたは?・・そうだ、あなたは、チーフ! カイヤン・ラシーム」

「たしか、さっきまでは、そう呼ばれていたかもしれんが、残念じゃが、もう、違う存在じゃ」

「そうだ、思いだしたぞ、あなたは、確か、殺されたんじゃ!・・・と、いうことは、ここは、まさか」

「それは、あまり正しい推測とは言えんな、間違っているとも言えんが」

「そうだ、僕はこんな所にいられない、急がなくちゃ! フィヨリーナが」


「マーフィー・・・。慌てなくてもいい、ここは時間はあまり意味を持たんのじゃよ。それよりも、この樹がお前に見えるのなら、良く見て行くがいい。この子もそう言っとるよ」

老人の後ろから、少女がニッコリ微笑み、顔を出した。


・・・ロビナ? 違うな、もっと小さい子だ。

「ほら、おにいちゃん。上を見て。本当にこの樹は立派でしょう。こうやってじっと見ていると、なんだかとっても心が軽くになるの」


マーフィーも樹を見上げる。緩やかな木漏れ日が、顔をくすぐるようだ。

「お嬢ちゃん、この樹はなんて名前なのかな?」

「そうね、宇宙樹とか、生命の樹とか言ってる人もいるみたいだけど、名前なんか、どうだっていいの。素敵な樹とか、立派な樹とか、好きなように呼べば、それでいいの」

「フ~ン。そんなものかなあ」


いつの間にか、老人はいなくなり、マーフィーと少女だけが樹を見上げている。

「ねえ君、この樹はどうしてここにあるの?」

「そんなことも分からないの。おにいちゃん、いいわ、教えてあげるね」

少女は梢の一本の先端を指差し、そこから、空をなぞる。


「ほうら、おにいちゃん、良く見て。この樹はね、全ての枝が数えきれないくらい、たくさん、たくさん先が分かれていて、その先が全てと繋がっているの」


「全てって」

「そうね、例えば、おにいちゃんとわたし、そして、おにいちゃんの大好きな人たちや、嫌いな人たち、他にも、草や花や、小鳥や、石ころや、宇宙船まで、どれもこれもゼーーンブ」

「なんだか、僕には難しくてよく分かんないや」

「どうして、どうして分かんないの? この樹はだれでも持っているものなのよー」

「どうして分かんないのかも、分からないんだ。もしかしたら、未だ分かりたくないのかもしれない・・・」


マーフィーは下を向いた。

「どうしても、知りたくないの?」

「エッ?」

少女の声が急に少し低くなって、マーフィーは顔を上げた。

「フィヨリーナ?君なのか」


樹の幹に裸の少女が寄り掛かっている。顔形はフィヨリーナだが、漆黒の長い髪が風に揺らぐ。

「私はフィヨリーナと言うのか?」


「僕も分からないから、君に聞いているんだ」

「そんなことは、どうでもいいが・・・」

「君はどうしてここに?」


「その言葉は、お前にそのまま返そう」

「分からない、だからさっきから、分からないって言ってるじゃないか。ここがどこかも、なぜここにいるのかも」


「知りたいのだろう。お前は」

少女はゆっくりとマーフィーに歩み寄り、両腕をマーフィーの背中に廻す。少女がマーフィーを抱きしめると、二人は崩れるように、地面に横になった。


「どうして、君は?」

「どうして? それは、お前が望んでいるからだ。ここでは、何も隠すことはできない」

少女はマーフィーの上にぴったりと自分の体を重ねる。少女の柔らかい胸のふくらみが、マーフィーの胸にきつく押し付けられた。


「僕が望んでいる?・・・いったい何を望んでいると言うんだ」

「未だそんなことを言う。分かっているはずだ、ヨーコやマリアそしてロビナやノーマ。みなにお前は、同じことを望んでいたんじゃないのか?」


「そうなのか? 僕は本当にそう望んでいたのか?」

マーフィイーも少女の長い髪をかき分け、その背中に手を廻す。

「そうだ、それがお前がここにいる理由ではないのか?」


少女はマーフィーの頬を掌で撫でた。

「だから、お前は私と一つになればいい。私を受け入れれば、全ての疑問が解ける。全てを知ることができる。この樹のことも、命と宇宙のこともお前なら、お前なら、その権利がある」

「でも・・・。でも君の体はとても冷たい」

少女はマーフィーのその一言に、はっとして身を起こす。

「私の体は冷たい。そして心も。あの男もそう言った。そして私を未だ、本当には受け入れていない」

少女は一人、青草の上に腰を下ろす。

少女の貌から険が消え、所在なげな視線を下に向ける。

「やはり君はフィヨリーナなんだろう?」


「フィヨリーナ。その名前も仮の名。そして私の心も仮の心。全て造られた虚構のもの」

その言葉とともに、フィヨリーナの片隅に追いやられていた、止めどもない渇ききった空しさと寂しさが、ダイレクトにマーフィーの胸に響く。


悲しい・・・切ない・・・。こんな感じは、前にもあったことが。

難民船の中で、小さなマーフィーは一人うずくまっていた。周りは疲れ切って空ろな目をした大人たち。


だれも自分に声をかけてくれる人はいない。愛してくれる人などもちろんいない。

僕はここにいる。だれか、僕に気がついて・・・。

私はここにいる。だれか、私に気がついて・・・。


マーフィーの思い出と、フィヨリーナの心の悲鳴が重なった。

マーフィーは少女の横に座り、片方の腕を少女の肩に廻す。

「マーフィー。私の心が消えてしまいそう。この小さな何も中身の無い心が、塩の柱のように崩れてしまう」


「僕はここにいるんだ。そして君も」

マーフィーはフィヨリーナの両肩を力強く抱きしめた。

「ありがとう、マーフィー。私の心を繋ぎとめてくれて」

二人の姿と周囲の景色が、光の中に解けこむように、白く淡く薄れていった。


その後3時間ほどかかって、タワーズのシステムが回復した。

レイモンドもノーマも一命を取り留め、マーフィーはアークバスターのコックピット内で意識を失ったまま発見された。

しかし、タワーズの中が平静を取り戻し、いつも通りの日常がまた始まるのに三日かかった。


マーフィーはロビナとマリアの三人で、タワーズのメディカルセンターにレイモンドの見舞いにやって来た。


「やあ、やあ、三人とも元気でなによりだねえ。私は情けないが、この様だよ」

「レイモンドさんも、だいぶ元気そうで安心しました。ドックの通路で、敵と遭遇して戦ったそうですね?」

「そうなんだよ、マーフィー君。もうちょっとの所で、あいつを倒せたんだがねえ。ノーマさんと一緒に散々やられてしまったよ。でも、ここも私はなかなか気に入っているんだ。看護師さんが、美人揃いでねえ」


そういいながら、レイモンドは横で作業をしている、看護師の手を握った。

「もう、レイモンドさん! 何度言ったら分かるんです! そういう冗談はやめてください!」


「いや! これは冗談ではない、君があまりに美しいから・・・」

レイモンドは若い看護師の瞳をじっと見つめる。

「もう! 放してください」


「何をやっているんですか!? 室長!!!」

そこに、ちょうどマーガレットが入って来て、レイモンドを睨みつけた。

「あは、あは、いやいや、これは、ここで普段御世話になっている御礼のつもりで・・・」

レイモンドは残念そうに看護師から手を離した。


「私がいないと、いつもこうなんですから」

マーフィーもロビナも吹き出しそうになった

「レイモンドさん、ノーマさんとフィヨリーナさんはどうなっているんですか?」

「そうそう、ロビナちゃん。

まだ知らされてなかったね。

ノーマさんはここじゃなくて、サイバネ・ドックの方だよ。

これを機会にまた全身の調整をやるって言ってたな。

今回のダメージは公傷ということで、治療その他の費用は、全部ゴールデン・スピア持ちということだからね。

あと、フィヨリーナ君の状態は、まったく分からないんだ。

彼女は発見した人に聞いてみたんだが、ほとんど、怪我はなかったそうだ。

今はなぜだか、特別治療室で面会謝絶で、キャプテンしか会っていない」


「そうなんですかー。じゃあフィヨリーナさんの所には御見舞いに行けないですね」

せっかく、もう二束持ってきた花の片方を、ロビナは寂しそうに見つめる。

「そうですか。僕もなんだか記憶がはっきりしなくて・・・。確か僕と彼女は、一緒にアークバスターの中で発見されたそうですね」


「そうらしいね。あそこで一体何があったのか? 侵入した敵はどうなったのか? 未だに何も分かっていない。ただ今回の事件で、一人犠牲者が出てしまったことだけは、確かなことだ・・」


レイモンドがそう言うと、その場の全員の表情が暗くなった。

こらえきれなくなったように、マリアが口を開く。

「レイモンドさん!! チーフが、チーフが殺されたのは、みんなわたしの責任です。あの二機のマシンは、本来ならわたしの担当です。あそこにわたしがいれば、こんなことには・・・」


「マリア君、自分を責めちゃいけないよ。あそこで君が、代わりに殺されていたとしても、同じことだ」


「そうですよ、マリアさん。カイヤンのおじいちゃんがいなくなったのは、ほんとに、わたしも悲しい。そして、マリアさんがいなくなってしまったら、わたしはもっともっと悲しいよ」


ロビナはマリアの体にギュッとしがみついた。

「ありがとう、ロビナ・・」

マリアとロビナは抱き合って涙を流した。

「あ、いいな・・」


 一言、そうレイモンドが呟くのを、マーガレットは聞き漏らさずに、黙って彼の腕を抓る。

「レイモンドさん、チーフの弔いはどうなるんですか?」


「あ、マーフィー君、その事なら、マーガレット氏に聞いて」

「カイヤンさんの葬儀は、一週間後、ゴールデンスピアがタワーズに戻って来た日に行います。

多分、公葬になるでしょう。

身内はいないそうですから。

喪主はキャプテンがやるそうです。

キャプテンとカイヤンさんは、タワーズが出来る前からの、ずっと長い付き合いだそうで、キャプテンもだいぶ落ち込んでいますから・・・」


「今回は色々なことがあったけれど、まあ、後のことは全て、ゴールデン・スピアがここに帰って来てから、ということかなあ」

レイモンドの言葉にマーフィーもうなずく。

・・・ゴールデン・スピア。早くその船体を見てみたい。金色に輝く美しい戦艦だと聞いているけれど。


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