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星屑の傭兵  作者: 磯野海月
第1章
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オープニング

数世紀未来 人類は太陽系全域にその活動域を拡大し繁栄していた。その影で紛争や宇宙海賊の脅威も

大きな物となっていた。

そんな中、私設軍事企業国家タワーズの傭兵たちが活躍する物語

「グリーン・サイトとゲルトリアの歴史的講和条約の会議が、ここグリーン・サイトの首都コロニー・エメラルド・ポリス首相府で行われようとしています。

それではスタジオどうぞ」


女性リポーターがニッコリと笑うと、中継の映像が、スタジオに切り替わる。

「係争地シュタリア小惑星群の、レアメタル鉱区を廻る8年にも及ぶ、グリーン・サイトとゲルトリアの紛争が、今日の講和条約の締結によってやっと終止符が打たれようとしています」


「シュミット解説員、今回のこの成り行きを、どうご覧になります?」


横の初老の男性にカメラが切り替わる。


「どうも。国際政治評論家の、シュミット・カルバンです。今まで両国の講和の実現は不可能ではないか、と言われていましたね。

本来、火星の国家であるゲルトリアが、シュタリアの領有権を主張しだしたのが、レアメタルの鉱脈が発見されて以後のことで、それも、50年も昔の小惑星調査記録による、あいまいな理由からですからね」


  再びキャスターに映像が切り替わる。


「しかし、よく、グリーン・サイトのマーカス首相は、この講和条約を受け入れましたね」

「これはやはり、この講和条約を双方が締結する気になったのも、アステロイド自由会議議長の、ソフィア・ダイソン女史の尽力によるところが大きいでしょう」


「ですが、一部では、この講和条約に反対する動きがある。とも、報じられていますね」

「そうです。一部の過激派が、アースユニオンの後ろ盾でこの講和条約を、阻止しようとしている。という悪い噂が流れているのも事実です」


「オイ!こんな所で、テレビ中継を見ているヒマがあったら、周囲の安全確認でもやれ!」

「すいません、軍曹! 以後、気をつけます!」


古参兵らしい中年の警備兵に注意をされて、若い警備兵はポケットに携帯端末をしまい、慌てて直立不動の姿勢で敬礼をした。


「まったく、こんな重要な会議に、この程度の警備で、ほとんど新米ばかりの部隊とは、どうかしているよ! 悪い噂もあるし、しっかりやってくれなきゃ困る!」


 軍曹は若い兵士の顔を見ようとするが、彼の顔はヘルメットのバイザーに隠れていて、鼻から上はよく見えない。


「上官に口をきく時は、バイザーを上げて、目を見せながら話せ!どういう教育を受けているんだ、お前は!」

「失礼しました・・」

若い兵士は、少しためらうと、バイザーを上げた。

「・・・ん?これは!・・・・」


 若い兵士の瞳を見て、軍曹はまるで金縛りにあったかのように、そのまま、立ちすくむ。

軍曹の目に強烈な印象が飛び込んで来た。

 その若い兵士の瞳は深い紫色で、長いまつげに、物憂げ眼、人形のような木目の細かい白肌と、それと対称的な、漆黒で烏の濡れ羽色の髪、繊細な顎と頬のライン・・・。


軍曹は、その瞳に何か、命を吸い込まれる様な戦慄を覚えた。


「ウッ、もういい・・・」


 若い兵士はすぐにバイザーを下ろした。


「いや、夕べ飲みすぎたのかな?・・・。大丈夫だ。それより、今時の若い者の間じゃ、目ン玉をそんな色に染めるのが、はやっているのか?親が嘆くぞ、こんなことしてちゃ!」


軍曹は足早に去っていった。


「フッ、親が嘆くか、身につまされるな・・・」


若い兵士は、上を向いて、ぼそっと呟いた


正門を通り抜け、中継車が、おもむろに首相府の中庭に入って来た。

「おい! どうして中継車がここまで入って来るんだ! 許可証はもらっているのか!?」

前方に立ちはだかった警備兵の一人に、大声で呼び止められ、中継車のドライバーがサイドガラスを開ける

「これが、許可証だ!」

ダーーーーン! 中庭に銃声がこだました。


「降りろ! 出番だぞ!」

中継車の後部ドアが開くと、中から武装した戦闘用パワードスーツが5体降りてきた。

戦闘用TK-07・ウォーレン アステロイド圏ではあちこちの軍で広く採用されているタイプ。この機体はさらに装甲を強化してあるようだ。


「よし! 作戦どおり突入しろ!」

パワードスーツの一団は、2体と3体の二組に別れ、首相府に向かって駆け出した。


「中庭だ! 急げ!」

無線で指示を受け、周辺を警備していた兵士全員が、中庭に急いだ。その中でさっきの若い兵士だけは、中庭ではなく、首相府の裏口に急ぐ。


3体のパワードスーツの先頭が、裏口から突入しようと、ドアを蹴破る。


タタタタ!!!

若い兵士は、突入して来たパワードスーツに、サブマシンガンで先制の銃撃をくらわせた。

「チッ、やっぱり、こんな銃じゃだめだ!」

若い兵士の銃撃は厚い装甲を避けて、正確にジョイント部と、カメラにヒットしたが、ほとんどパワードスーツに損傷を与えていない。


怪しまれないようにと、武装まで他の兵士と同じにするんじゃなかったな・・・。


ズドッ!ズドッ!ドドッ!

すかさず、パワードスーツは、強力な大口径銃で反撃してきた! 若い兵士が隠れている通路の角がどんどん吹き飛ばされていく。


まあいい・・・。なら、こうするさ。

何を考えたのか、若い兵士は、ヘルメットと重いプロテクターを脱ぎ捨て、銃の弾倉から弾丸を取り出すと、手に持った。


「それっ!」

若い兵士は、通路の陰から一気に飛び出す!

ビンッ!! 若い兵士は手に持った弾丸を、指の間から弾いた。

ポムッ!! 弾かれた弾丸は、何と!パワードスーツの一番厚い装甲を貫き、中の人間を直撃した。


ズチャッ!! 先頭のパワードスーツはもんどりうって、ひっくりかえる。

「やられたのか!? そんな、強力な火器はないはずだ! 話しが違うぞ!」

入り口の両脇まで後退して、2体のパワードスーツは、慌てたのか、無線ではなくて、スピーカーから音声で会話している。


「クソッ!おれが突入するから、援護を頼む」

右のパワードスーツが、援護射撃を通路に数発打ち込むと、左のはパワードスーツ勢いよく突入した。


「何だ!?こいつは!!」

通路の正面には、丸腰でプロテクターまで外した若い兵士が、悠然と、こちらを向いて立っている。


パワードスーツの中の男は、その若い兵士がかすかに微笑んだような気がした。それと同時に、いわれようの無い恐怖感がよぎる。


「なめるな!!!」

パワードスーツは若い兵士に向けて、銃を連射モードで発射!

ズドッドッドドドッドッド!!!


「消えた!!?」

若い兵士は、パワードスーツのモニターの視界から、スウッといなくなる。

「ワッ!!」

突然! あの若い兵士が、モニターに現れた。その距離1メートル!


「馬鹿な!! 殴るのか、素手で!?」

若い兵士は、パワードスーツの腹部に正拳を打ち込んだ!

ズンッ!! 低い音が、通路に響く。パワードスーツはまったく損傷がないにも関らず、ガクッとその場に両膝を着いて、前のめりに倒れる。

 衝撃が分厚い装甲を貫通して内部の人間にダメージを与えた。


倒れたたパワードスーツを足元にころがしたまま、、若い兵士が、通路の奥を見ると、だれかがこちらに走ってくる。

「おい! 大丈夫か! 今援護してやるぞ」

振り向くと、その声はさっきの軍曹だ。


「だめだ!!来るな!! その装備じゃやられるぞ!」

若い兵士は叫んだ

 

 その隙を突いて、ドッと!残りの一体のパワードスーツが、武器を構えて突入してくる。

30ミリランチャーが通路に向けられる。

・・・マズイ!!僕が避けても、軍曹がやられる。


ズボムッ!!

若い兵士は胸の真正面で、30ミリ爆裂弾をもろに受けた。

「ウォォォッ!」

彼は弓なりになって、後方に2メートルも飛ばされ、床に仰向けに倒れた。


「若造、やられちまったのか?」

軍曹は通路の脇の部屋に飛び込んで、様子をうかがっている。


「不発弾だったのか?」

パワードスーツは倒れている若い兵士に、ゆっくりと近づく。


「そんな!?」

若い兵士は胸の中央で、両手でしっかりと、30ミリ炸裂弾を握りしめ、止めていた。

若い兵士は、起き上がると同時に、パワードスーツが持っていたランチャーを勢いよく蹴り上げ、ランチャーは外まで弾き飛ばされる。


「このぉぉぉぉぉ!!」

パワードスーツは若い兵士を殴りつけようとするが、かすりもしない。


「これは、返すよ!」

若い兵士がパワードスーツのハッチに手を掛けると、ロックしてあるはずのハッチが、カコーンと、いともたやすく開く。

 そして、手に持った、30ミリ爆裂弾をパワードスーツの中に投げ込むと、ハッチをすぐに閉じた。

パムッ! こもったような爆発音が、パワードスーツの中ですると、そののハッチの隙間から、黒い煙が漏れてきた。


「ここは片付いたか・・。アッシュたちはどうなっているのか・・」

若い兵士は、ヘルメット内蔵マイクに向かって、どこかと交信を始めた。


「シャドーだ、ティロール、裏口から侵入しようとした3体のパワードスーツは倒した。アッシュたちはどうなっている?」

「まだ交戦してない。残りニ体は、警備の兵士を蹴散らしながら、もう、VIPルームのすぐそばまで来ているぞ!」

「分かった。僕もすぐVIPルームに急ぐ」

シャドウと呼ばれる若い兵が、通路の奥を見ると、あの軍曹が立っていた。驚きを隠せない様子だ。


「あんた一体何者なんだ?」

「ただの傭兵さ」


彼は一陣の風のように、軍曹の横を駆け抜けていった。


「あんなに怒鳴らなきゃよかったな」

軍曹は額から垂れる冷や汗を、軍服の袖で拭った。


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