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『王宮舞踏会シリーズ』おまけ話  作者: ミケ~タマゴ
★夫の友人は、とんでもない人達でした。〔春編〕
5/5

♡05話 わかりたくありません!

 



「俺に抱き締められたら、女は光栄だろう」

「抱き心地を確かめただけですけどね。わたしに抱かれたら、喜ぶところでは?」

「私が女を抱いて、誰が許さないんだ? 面白いことを言う」


 ロン毛三人衆はおかしそうに、口元を歪めて言ってきます。


「お、お国ではどうか知りませんが、あなた方がした事は、この国では失礼な事ですわ。わたくし、怒ってますわ」


 三人の返事を聞いて、偉そうなこいつらには、言ってもダメかもしれないと思いつつ、怒りを感じている事を伝えます。


「ハハッ、国王にでも直訴するか? よかろう。相手になるぞ」

「フフッ、国に訴えでるなら、帝国軍の訓練がてら、派兵してもいいですよ?」

「ククッ、王に泣きつくか? 他国との(いくさ)で、今の国の力を測るのも面白そうだ」


 とんでもないことを言い出す三人です。ザアッと青ざめます。


「ハハッ、冗談だ。嫌だったなら謝ろう。新しい縫いぐるみの抱き心地を、確かめたかったんだ。前のはダメにしてしまったからな」


 黒髪の青年が、一応謝罪してきます。全然、謝られている気がしませんが、過激な発言が冗談でホッとします。


「『前のはダメ』?」


 謝罪に付け加えられた『新しい』とは、縫いぐるみ扱いされていると分かりますが、『前のはダメ』とか、よく分からなくて何だろうと思います。


「ああ、 前にクリスが大事にしていた縫いぐるみを、ダメにしてしまったんですよ。幼い頃から持っていた母親の形見で、心の拠り所にしていたものだったのに……。不快だったなら、わたしも謝ってもいいですよ?」


 白金髪の青年が答えて、肩を竦めます。

 謝ってません。でも派兵発言が耳に残っているので、危なくてつっこめません。


「大事にしている縫いぐるみが、汚くてボロボロだったから、三人でこっそり洗ってきれいにしてやろうとしたら、溶けてね。形がなくなったんだ。詫びて何とかしたかったが、別の新しい物じゃダメなのは分かっていたからね。涙目で落ち込むアレの顔は忘れられない。ひどい罪悪感を感じたな」


 金髪の青年が少し屈んで目線を合わせてきます。こいつが先程一番危険な事を言っていた気がして、ゴクリと唾を飲み込みます。


「アレが、心の支えになる新しい縫いぐるみを見つけて、良かったと思おう。わたしの手で幸せにしてやりたかったが、子どもは与えてやれないからね」


 そんな事を言って、前の行いの謝罪の気配もなく、手を伸ばして髪を撫でてきます。

 『縫いぐるみじゃありません!』、『女性の髪にいきなり触るなんて! 』と文句をつけようとして、あんまり優しく撫でてくるので、言葉に詰まりました。


「クリスに幸せな家族を、与えてやってほしい」


 金髪の青年に優しい声と笑みで、頼まれました。


「わたしもあきらめますよ。クリスは幸せな家庭を持ちたがっていましたからね」


 白金髪の青年も手を伸ばして、頬を撫でてきます。


「クリスといい家庭を築いて、幸せにしてくださいね」


 白金髪の青年も、笑顔を浮かべて頼んできます。


「俺も引くか。あいつは家族の温もりをほしがってたからな。あいつを取り合って、三国で戦争になる危機は避けられたな」


 ギクリとするような事を言った黒髪の青年も、白金髪の青年が撫でているのとは違う方の頬に触れてきます。


「あいつに家族の温もりを与えてやってくれ。子どもをたくさん産めよ。あいつによく似た女の子が産まれたら、俺の正妻にしてやろう。待っててやるからな」


 黒髪の青年の言葉に目を剥きます。とんでもないです。断ろうとしたとたん、他の二人が反応しました。


「あ、そんな女の子ができたら、わたしの正妃にしますよ!」

「はあ、クリスに似た女の子なら、私の正妃にもらうよ!」


 三人の手が離れました。目の前で言い争っています。


 どんな立場の人間か、まったく分かりませんが、こいつらの国って、大丈夫なのかと国民に同情したくなります。


 苛烈な言い争いに、ハアと呆れたため息をついたところで、応接室の扉が開きました。


 銀髪の青年が戻ってきました。後ろにワゴンを押した初老のメイドが付いています。


「みんな、お待たせ。作ってきたよ」


 銀髪の青年の声が応接室に響くと、三人はピタリと言い争いを止めました。


「ちゃんと仲良く待ってたの? 変なことは話してない?」


 銀髪の青年が近づいてきて、尋ねてきます。変なことしか話していないとか、言いません。ニコリと笑顔で頷きます。


「ええ、もちろん」


「何だか騒がしかったけど?」


「あ、それは友人のみなさまが、まだできてもいないわたくしたちの娘を、誰が娶るかで揉めていたんですわ」


 いい笑顔で銀髪の青年にチクリます。青年が現れたとたん、言い争いを止めた三人の被った猫を、はたき落とすような気持ちです。


「え? 別に三人、娘を作ればいいことだよね?」


「ハア!?」

「「「おお!」」」


 首を傾げて言った青年の言葉にのけ反ります。ロン毛三人衆は、目を輝かせました。


「あー、でも三人のところでは無理かなー? 娘一人を愛してくれる人がいいよね。大勢の中の一人はやだな。大変な立場にしたくないし、すぐ会えるように、やっぱり国内の人と結婚してほしいよね。それに娘が嫁げる歳になる頃には、みんなおじさんだよねー」


 銀髪の青年は、ノホホンと笑顔で言います。


「誰がおじさんだ! できるまで何年か余裕をみても、まだ、30代の筈だ!」

「おじさんじゃありません! すぐ作ってください。いますぐ!」

「おじさんはひどいな! 16、7の差なら、いけるだろ? おじさんとは言わせないよ?」


 三人が銀髪の青年につめよります。その様子に、青年は驚いたように瞬きしました。少し考えるように目線を上げた後、頷きます。


「分かった。みんなが本気でわたしの娘を欲しいと思ってるなら、恋愛結婚なら認めるよ! 娘が『愛してるから、結婚させて』って言ってきたら、みんなのところに嫁がせるよ!」


 銀髪の青年の宣言に三人が『おーっ!』とか嬉しそうに声を上げています。「惚れさせる」「好きにさせてみせます」「とりこにする」とかなんとか言ってます。


 アホです。全員アホです。


 銀髪の青年も含めて、何を産まれてもいない娘の事を話しているのでしょうか。


「あ、パンケーキの準備が出来たようですわよ」


 四人が騒いでいる間に、しっかり者のメイドが大理石のテーブルにパンケーキの皿を並べてくれました。

 ポテト、人参とブロッコリー、スクランブルエッグもあります。紅茶も用意されています。


「さあ、クリス、みなさま、こちらにどうぞ」


 アホ四人衆に、ニッコリ笑顔で声をかけました。






 


 玄関ホールで友人達を、銀髪の青年と見送ります。


「おん……いや、ミユア、おまえのクリスに対する愛情はたいしたものだ」


 黒髪の青年に感心したように声をかけられました。親しげに愛称呼びされましたが、文句は言いません。


「ええ、あれを乗り越えるとは、素晴らしい。真の愛だと分かりました」


 白金髪の青年も頷きます。


「ああ、歯に、いや、身に染みたよ。おまえの、クリスへの深い愛がよくわかった」


 金髪の青年の視線に感嘆が込められています。銀髪の青年の手料理を食べた三人に、妻として認められました。


 あの甘味責めを耐える愛を、わかってもらえました。


「クリス、幸せにな。国にも二人で来い。娘ができたら教えろ」

「うん、ありがとう。ファルシャード」


 黒髪の青年と銀髪の青年が抱き合って別れの挨拶をします。


「帰るか」


 黒髪の青年が呟くとどこからか頭から布を巻き、目だけを出した黒い服をまとった男がスッと現れて、前に額ずきました。

 腰には湾曲した大きな剣が下げられています。黒髪の青年と言葉を交わして、背後につきます。高位貴族の令嬢として、近隣諸国の言葉はいくつか学んでいますが、『アミール』とか何とか聞こえたのは、気のせいです。黒髪の青年は去っていきました。


「帝国にも来てくださいね。では、クリス、しばしの別れです。幸せになってください。娘の誕生は知らせてくださいね」

「うん、ありがとう。ルキアノス」


 白金髪の青年とも抱き合って別れの挨拶をしています。


「帰ります」


 白金髪の青年がそう口にすると、黒いマントをした、黒い装束の男がどこにいたのかサッと近づいてきて足元に跪きました。腰に剣を帯びた騎士のような男です。『皇太子殿下』とか聞こえたのは、空耳です。

 白金髪の青年も騎士のような男と帰りました。


「クリス、また会おう。国にも遊びに来てくれ。幸せになるんだよ。娘を楽しみにしているからね。連絡を待ってるよ」

「うん、ありがとう。ジャスティン」


 金髪の青年との挨拶の時には、銀髪の青年は涙ぐんでいました。


「帰るぞ」


 金髪の青年がどこかに向かって声をかけると、全身真っ黒で目だけを出した男がヌッと湧くように現れました。胸に手を交差させて当て、膝をついて、頭を下げます。『王太子殿下』とか聞こえたのは幻聴です。使われた言語で、三人がどの辺の国から来たのか、わかちゃった気がしたのは白昼夢です。金髪の青年も黒いのと立ち去りました。

 



 三人を見送った銀髪の青年は、涙ぐんで唇を震わせています。泣くのを我慢しているような様子に、手を伸ばして頬を撫でました。


「クリス、一人じゃないのよ。これからは、ずーっとわたくしが側にいるのよ?」


 目を合わせて微笑むと、銀髪の青年にギュッと抱き締められました。


「うん、うん」


 耳元で涙声で返事をする青年の背を、そっとさするように撫でました。






 後日、三体の等身大で長い茶髪の熊の縫いぐるみが届きました。ロン毛の熊です。民族衣装のような豪華な花嫁衣装を着て、贅沢な宝石がついています。


 添えられた手紙には、結婚のお祝いの言葉と、昔ダメにした縫いぐるみのお詫びに、喜んで受け取って貰える物を贈ると書いてあります。


 結婚祝いと昔のお詫びを兼ねたものらしいですが、なぜこんなものを贈ってきたのかは分かりません。


 青年は『抱き心地も、重さも、お腹の出具合も、髪の手触りも、頬のふっくらした感じもそっくりだ! あちこち置いておけば、寂しくないね』とか、喜んで浮かれていましたが、青年の言っている意味が全然わかりません……わかりたくありません!




──夫の友人は、とんでもない人達でした。






〔春編おまけ話・終わり〕




★アホ四人衆……アホな四人の青年のこと



 春編ミユアーミとクリストファーカップルのその後の話でした。お楽しみいただけていれば、嬉しいんですが……。


 イメージが壊れた方は申し訳ありません。そういう話を読んだ夢を見たと思って、忘れてください。


 このシリーズは、四季になってますが、最初の話に季節感を出してなかったので、全編季節感を出すのは止めました。四季でわけてるのに、すみません。(←いいわけ)


 『王宮舞踏会シリーズ』とか書いたけど、『とんでもないシリーズ』だったかもしれないとか思ってます。


 ベタ甘恋愛を目指して、現実の男達には言えない、言わせちゃいけない、お尻に痒み止めを塗って聞くような、ゲロ甘セリフを美青年・美少年に言わせて、皆の吐く砂でできた砂丘に、砂糖の城を築きたいと頑張って書きました。(←砂の城ではありません)

 ええ、一歩間違えると、笑い取りになるギリギリの線を狙ってますね。地文がすでにおかしいかもしれませんが、恋愛です。ベタな恋愛です。乙女の憧れ、白馬の王子様路線ですね。(今、「え?」とか、声が聞こえたのは気のせいですね)


 ネット作品が、慣れない文体の物ばかりになった時は、『あれ? どうしてこうなった?』とか思いましたが、読む方に楽しんでもらえる文が、書けていればいいなと思います。(不足なところはたくさんあるでしょうが)


 応援ありがとうございました。嬉しかったです。遅くなりますが、他の編のおまけ話も、この作品に連載という形で、順にあげていくつもりです。


 あ、それと活動報告にも書きましたが、検索してたら、『お気に入り一覧―アダルトサイトランキング』というのに、私のプロフィール文が使われているのを見つけました。『王宮─アダルトうにゃらら』とかにも作品名が……。変な感じでマイページ情報とか出てるような……?

 それで、また少し作者名とプロフィール文を変えてあります。

 残念ながら、アダルトはまだ書いてません。書くならR18用のXアカウントを取得して、『小説を読もう』で使っている作者名とか使いません。

 こんな怪しい物を見る方はいないと思いますが、一応、報告しておきます。罠ですからお気をつけください。(うっかり、嫌な思いをした方がいなければいいんですど……)


 では、長々と失礼しました。



 本当に応援していただき、ありがとうございました。


 読んでくれた皆様へ感謝をこめて

     ミケ~タマゴ(ミケ~また)

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