第75話 「最後の」
日曜の更新出来なくてすみません!
とあるスマホゲームにどハマりしてすっかり忘れていました。
夜中に起きたこと……そして、その時感情的に芽生えた意志と覚悟。そんな諸々のせいで結局ほとんど寝れずじまいで朝を迎えることとなった。
とはいえ、皆も眠たさと疲れが残っているようで、朝食の席は少しどんよりとしていた。
しかしそんな中に1人、異様に元気な奴がいる。
「皆さん!2日目ですよ!最終日ですよ!全力で遊びましょー!!」
「朝からよくそんなに元気でいられるわね、彩乃さん」
あの後、すぐには眠れなかったのだろうか。沙耶香先輩も目を擦りながら彩乃のはしゃぎっぷりに驚いているようだ。
「今日は何も決めてないからなぁ」
「旅館出たらとりあえず近くの街でもぶらついてみるか」
和希の提案には他のメンバーも賛成している。あんまり歩くのも嫌だが、予定がないんじゃ仕方ない。
そこまで乗り気じゃなかった俺もその賛成の輪の中に入った。が、そんな時。
「街に行くなら、うってつけの場所がありますよ!」
そう言って彩乃は自身のスマホの画面を俺達に見えるように、テーブルの真ん中に置いた。
「これは、なにかしら……?」
「最近できたレジャー施設ですよ!今高校生に大人気の場所です!」
画面上に表示されている地図情報を見る限り、ここからそう遠くない場所のようだ。
「多種多様なスポーツに、ダーツやビリアード……お、カラオケもあるのか。すげぇな」
他にも大規模なゲームコーナーにレストランも……なんでもアリだな。今時はこんな施設があるのか。
しかも料金がフリータイムで5000円。高校生にはもってこいの、おあつらえ向きな場所だ。
「じゃあ、今日はここで遊ぶか」
「いいんじゃない?」
「私も……いいと、思う」
異論がある人は勿論現れず、すぐに今日の予定が決まった。
朝食を速やかに済ませ、少し時間部屋でゆっくりした後、旅館のチェックアウトを完了させる。
そして俺達は、旅館から出ている無料バスで目的地に向かった。
☆☆☆
「高校生、フリーパス5人分でお願いします」
受付で俺達全員のフリーパスを彩乃が代表して買った。
なんかこんなのばっかだな。常に先導してくれるのはありがたいが普通に情けなく思ってしまう。
「さあ!目いっぱい遊びましょー!」
相変わらず彩乃は元気だな。他のメンバーは多少疲れの色が見受けられる。
昨日もダントツではしゃぎまくってたのに……こいつの体力は無尽蔵なのか?
「んじゃ、最初は何にするか」
「やっぱりここに来たらまずはボウリングですよ!」
確かに、ネットでもここのホームページにボウリング場の写真が大きく貼り付けられていた。昼頃になると一気に混むそうだから今のうちに遊んでおこうという考えは理解できる。だが……
ジロっと、彩乃は薄笑いを浮かべながら俺を見てきた。
「ボウリング、やりましょうよ。ねえ、せんぱい?」
「ぐっ……」
俺は彩乃の表情の理由を察し、すぐに視線を逸らす。
「え、なに、どうしたんだ?」
「ふっふ、実はですねぇ、せんぱいはボウリングがド下手なんですよ〜」
「おい何言ってんだ!」
俺のボウリングの下手さは自他ともに認めるものだが、いざ誰かに知られるとなんか恥ずかしい。
「少し下手なぐらい気にすることないわよ。私もあまり上手くないから」
「そうそう。俺だっていつも100スコア超えるかどうかぐらいだぜ?」
「……」
恐らく、和希と沙耶香先輩は俺をフォローしてくれているのだろう。しかし、俺にとってそのセリフはどうしても皮肉にしか聞こえないんだよなぁ……。
「いやいや、せんぱいはそんなレベルの下手さじゃないんですよ!もうどうしてそうなるのってぐらいヘッタクソなんです!」
やめて。それ以上は言わないでくれ。恥ずかしすぎて、今にも顔から火が出そうだ。
「ま、まあとりあえずやるだけやってみましょう」
「そうだな。この目で見ないとなんとも言えないしな」
一周まわって俺の下手さが気になってきたのか、他のメンバーも乗り気になっていた。
「だあもう!わかったよやってやるよ!俺がどんだけ下手か見せてやる!」
そして、ボウリングが始まるや否や、思い切り笑われた。それはもう清々しい程に爆笑された。
それからは、目につくスポーツアトラクションやゲームを回れるだけ回った。
昼食を挟み、まだ回っていない残りのコーナーを遊び、今現在は中央ホールにあるローラースケート場にいた。
『はぁ……』
スケート場の端にあるベンチに座り、深くため息をついたのは俺と雅だった。
「どうしたの?2人して」
「ああいや、ちょっと疲れたみたいで」
「わ、私も、ちょっと」
「全くぅ、お二人共情けないですねぇ」
いやいや、昨日の今日でこんだけ遊んだら流石に疲れるでしょ。ここでベンチに座ってる俺達の方がよっぽど健全だと思うんだけど!?
「じゃあお前らはどうするんだ?」
和希からの質問に、俺は雅に目配せして彼女の頷きから答えを貰う。
「俺達はここで休んでるから、皆で行ってきてくれ」
「そっか。まあやりたくなったら普通に入ってくればいいから」
「わかった。ありがと」
その会話を最後に、レンタルの用具を身につけた和希達は手を振りながらスケート場に入っていった。
ベンチでそれを見届けた俺は、すぐに雅の方に視線を移す。
俺以上に疲れている様子の雅にそっと声をかけた。
「大丈夫か?病み上がりなんだし、あんまり無理しない方がいいぞ?」
昨日も結構はしゃいでたし……今日はなんだか無理しているようにも見えた。
まだ夏風邪の影響が残ってるんじゃないだろうか。
「ううん、大丈夫。楽しかったから、ついはしゃぎ過ぎた、だけだから」
「そうか?ならいいんだけど」
彼女の様子を見ていると少し心配になってくる。本当はこういうの苦手なのかもしれない。もしかしたら、皆に合わせてくれてるんじゃないかと。
だが、今見せてくれた笑顔で、そんな懸念はどこかへ行ってしまった。
彼女は本当に楽しんでいるんだ。このメンバーで何かをすることを。
そう感じてくれているのなら嬉しい。あれだけ人と喋れなかった彼女が、人と遊ぶことに充実感を覚えてくれているのだから。
俺はもう一度スケート場へと視線を戻す。
相変わらずあの3人は体力お化けだな。前に行った遊園地のジェットコースターを思い出す。
彩乃と和希はいつものテンションだ。しかし、沙耶香先輩の方は……なんか昨日の海の時と少し違う気がする。
少しだけ、気ぶりが高い感じだ。
やっぱり昨夜の事だろうか。
(この旅行が終わったら……)
今朝は何事もなかったかのように接していたが、やっぱり先輩の方も意識しているんだろう。
だからああやって楽しそうにしているんだ。いや違う……俺達と精一杯楽しもうとしているんだ。
俺がちゃんと……ちゃんとしないと。
そんな風に考えながら、虚ろな表情をしていると、隣から雅の声が聞こえてきた。
「ど、どうしたの?ぼーっとして」
「あ、いや。……こうやって皆で遊べるのも今だけだなぁって、さ」
「そ、そうだよね……先輩は、受験で忙しくなるし、文化祭もある、から」
雅も薄々気づいていたようだ。これからは、こうやって皆でどこかへ行ったり、遊んだりできる時間がなくなっていくのだと。
だからだろうか。皆でいられるこの時間が、こんなにも愛おしく感じるのは。
そう思うと、俺の顔に小さな笑みが浮かんだ。
「……まだ1年も経ってないけど、本当に楽しかったよなぁ」
「う、うん。私も、こんなに楽しい思い出が出来るなんて、想像もしてなかった」
「これから先も、こうして皆で居られればいいのに」
ふと、そんな言葉が俺の口から零れた。
「……」
「ん、どうしたんだ?」
「え、ううん、なんでもない」
「そっか」
今一瞬だけ、雅の表情になにか不思議な違和感を覚えた。
一体、なんだったんだろう。
「よし、そろそろ皆に混ざるか。雅はどうだ?」
「うん。私も、行く」
まだやめる気配の3人に合流すべく、俺達もレンタル用具を身につけてスケート場へと足を踏み入れた。
それからしばらくスケートで遊び、その後はフリータイムギリギリまでカラオケで時間を潰した。
レジャー施設を後にした俺達は、現地の焼肉屋で夕食を済ませ、そして帰りの電車に乗り込んだ。
ようやく疲れが現れたのか、彩乃や和希、沙耶香先輩は熟睡していた。雅もまた、俺の隣でうとうとしている。
遊園地の時とほぼ同じシチュエーションだな。時間が夕方か夜かの違いだけだ。
車両の窓から映り込む夜の優美な街並みを眺めながら、俺もゆっくりと瞼を閉じていく。
────こうして、この5人では最初で最後の旅行が今、終わりを迎えた。
今話もご拝読ありがとうございます!
イベント自体はほとんどありませんでしたが、色々と話が進んだ気がします。
次回からは文化祭準備編です。ここでもまた、大きな進展があるかもしれません。名前しか出てきていないため、完全に忘れられているであろう、あの人が登場するかも!?是非足をお運びください。
宜しければ、感想をお聞かせ下さい。今作には、不明な点や不満な点、誤字脱字なども多く含まれていると思いますので、ご意見ご指摘があればドシドシ送ってください。すぐに返信させていただきます。
それではまた次回もよろしくお願いします!




