第34話 「グループ通話」
俺は今、自室のベッドの上でメールを打っている。
───それじゃあ、明後日の日曜日の1時にまた駅前集合ということで
そう打ち込んで、送信ボタンを押した。
送り先は俺、和希、雅、彩乃、そして工藤先輩の5人で構成されたグループチャットのトーク欄だった。
ことの成り行きは今日の放課後。下校中の電車内のこと────。
「えへへ、先輩と帰るの久しぶりな気がします!」
そう言って俺の腕に抱きつこうとしてくるのを、俺は軽く躱した。
「やめい、もうお前の考えはお見通しだ」
「ちぇー、せんぱいの意地悪ぅ」
なんじゃいその言い方……可愛すぎ。
彩乃のアピールは相変わらずあざとい。
「ちょ、ちょっと春川さん。直之くんが困っているじゃない」
隣で俺を庇護する黒髪の少女がいた。
生徒会長の工藤沙耶香だ。
あの暴走事件以来、沙耶香先輩はいつのように凛々しい佇まいの生徒会長に戻った。
と、思ったのだが。
「こ、こういうのは、直之くんがいいって言ってくれた時だけよ!」
………。
確かに、自制は出来ている。が、果たしてこれは戻ったと言えるのだろうか。
うん、なんか違う気がする。
「はぁ……ちょっと助けてくれよ、雅」
俺は何も言わずにただ見ているだけの雅に助けを求める。
「え、いや、別に、いいんじゃない、かな?」
頼みの綱だった雅までもが、俺の精神的苦労を理解してくれないのか。
とまあ、こんな感じで今俺たちは4人で電車に乗っている。
降りる駅が違うだけで乗る電車が同じだと知った時は正直驚いた。
そして俺は現在────とても肩身が狭い。
電車という名の土壌に咲き誇る、三輪の可憐な花。
そんな中、木陰にひっそりと生える1本の雑草の気分だ。
俺、場違いすぎんだろ。
他に乗っている下校中の生徒達も、俺の方を可哀想な目で見たり、嫉妬の視線を送ってくる。
ほんとに、いやまじで吐きそう。
毎度思うが、まじでどうなってんだ、俺の日常は。特に放課後。
全男子生徒からしたら、まじで楽園なんだろうけど、男1人じゃ、楽しいものも楽しくない。
せめて……せめて和希さえいてくれれば。
改めて男友達の大切さを知った。
と、そんな時、雅から提案があった。
「あ、あのっ、ちょっと、聞いて欲しいことがあるんです、けど」
俺達全員に向けて言う時は敬語になるんだな。
「どしたの?逢坂先輩?」
「えっと、工藤先輩、少し前に言ってましたよね。その、みんなで遊びに行こう、って」
「え、ええ。言ったわね」
そういえば、俺も雅から聞いたっけ。
まさか生徒会長である沙耶香先輩が遊ぶとか、そんな高校生っぽいことを言うなんて。
いや、それは失礼か。
「えっと、だから直之くんに、また選んで、欲しいな……って」
雅は毎度おなじみ、選択カードを取り出した。
そうだった。また選んだるよ、とかカッコつけてたんだった。
まあ、丸2日空いたから、もう俺も余裕が戻った。しかし、
「お、俺でいいのか?今日は彩乃と沙工藤先輩もいるんだから、2人のどっちかが引いてもいいと思うけど」
俺も偶には傍観者側に回ってみたい。
他の誰かが彼女の3択カードを引くのってどんな光景なんだろう。と少し興味もあった。
「何言ってるんですかせんぱい、せんぱいが選ぶんですよ」
「そうよ直之くん。それに私達はもう内容を見せてもらっているから」
まじかよ。なんかずるくね?それなら俺も内容見てから選びたいのに。
「えー?じゃあ俺も先に見たいんだけど」
「だ、だめ……直之くんは、見ずに選んで」
……なんだこの差は。
これが、男友達と女友達の差というやつなのだろうか。
「あー、それじゃあ、ほい」
俺はカードを1枚引き抜く。
───みんなで遊園地に行く───
おお、これはまた無難な。ショッピングモールの時を思い出す。
「やった!せんぱい当たりですよ!当たり!」
「お、おお、そうなのか?」
「ええ、私もいいと思うわ」
他の2枚が何なのかは分からないが、確かにこれは割といい引き、なのか?
というか、今更だけど、これってなんか、中身が3つしかない当たり確定ガチャを回してるみたいな気分だ。
「じゃ、じゃあこれで。みんなっていうのは、ここにいるメンバーってことなのか?」
もしそうだと俺がキツいんだが。
俺の質問に答えたのは雅だった。
「えっと、瀬戸くんも一緒で、いいよ」
「そ、そうか。それなら良かった」
和希がいるんなら、俺も少しは肩の荷が軽くなるな。
「じゃあ和希には俺から伝えておくってことでいいか?」
俺がそう言うと、次は彩乃が手を挙げた。
「はいはーい!私から提案なんですけど、グループ作りましょうよ。そしたらみんなでお話できるじゃないですか」
おお、確かに。俺達の使ってるSNSには、グループを作って複数でメールを共有することができる。
「いいんじゃない?私もそれがいいと思うわ」
「わ、私も、賛成です」
「それじゃあ私グループ作りますね!」
彩乃は携帯を出し、SNSアプリを開いてグループを作った。
すげえな。あんな巧みに使いこなしている。めちゃくちゃ尊敬するわ。
「よーし、じゃあみんな招待しますねー!」
この3人とは、既に友達登録していたので、すぐに招待の通知が届く。
それぞれ参加ボタンを押し、グループに参加した。
その後俺は和希に招待メールを送る。
グループのメンバー一覧に4人のアイコンが表示されていた。
うおぉ……なんかすげえな。
これぞ友達って感じだ。彼女達とのスペックの差は激しいが。
あれ……なんか俺、場違いじゃね?
いや、普通に場違いすぎる。
まあ、これまでずっとそうだったから、もうどうでも良くなってきた。
と、そうしているうち最初の降車駅に到着していた。
「じゃあ帰ったら色々話しましょー!」
そんなこんなで今に至る。
───それじゃあ日曜の1時に駅前ということで
《彩乃》───おっけーでーす!
《沙耶香》───大丈夫よ。
《雅》───私も大丈夫です。
《和希》───りょーかい。
全員の同意が得られたところで、俺は携帯の電源を1度切った。
そして俺は……めちゃくちゃ興奮していた。
───くぉぉおおお!!俺今、めっちゃ高校生してるわ!
あいや、実際高校生なんだが、今までこういうことをしたことがなかったから、どれだけ場違いでも、はしゃがずには居られなかった。
少し前までは平穏な日常に戻りたいとも思っていたが、こういうのもすげえ良いよな。
───明後日の日曜日が結構楽しみな直之だった。




