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第20話 「ちょっとしたイメチェン 後編」

彼女達と途中で別れ、俺は自宅に着いた。


「ただいまぁ」


いつもの事だが、返事は帰ってこない。


俺は鞄を自室において、姉の部屋の扉を開けた。


別にしょっちゅう姉の部屋に入る訳じゃないが、今日はちょっと確認しておきたいことがあった。


「おーいちさ姉、生きてるかあ?」


あいかわらず、悪い意味で生活感のある部屋だな。


「あー、おかえりナオ。お腹空いたからご飯作ってー」


「早速だなおい……あ、いや、そんなことより、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「ん、なに?」


俺はメガネを外し、姉には見せたことの無い裸眼の姿を見せた。


「俺ってさ……もしかしメガネ外したらかっこよくなったり、するのか?」


……そう、俺は結局、あの時の言葉を真に受けてしまっていた。


確かに、姉にはメガネを外した姿を見せたことがなかった。


もしかしたら、メガネをつけてたから地味だと言われていたのかも。


実は結構期待してたりする。


が、それを聞いた姉は少しの間沈黙した後、大爆笑を起こした。


「ぷっ、はははははは!!ちょ、ちょっとどうしたのナオ、いきなり……くくっ」


姉の高笑いする顔を見て、俺は理性を取り戻した。


またこれだよ。俺のあほが!



そりゃそうだ。メガネ外したぐらいでイケメンになれる訳ないんだ。


俺はどうかしてた。あー、なんか急に恥ずかしくなってきた。


くそっ、こんな爆笑されるんなら話すんじゃなかった。


後悔と羞恥心に駆られていると、それを見ていた姉は笑うのをやめた。


「あー、ごめんごめん、ナオがらしくないこと言うからつい、ね。でも、うん……結構いけてんじゃないの」


「もういいって!俺が馬鹿だったから!!」


恥ずかしすぎて……思い上がってた自分がキモすぎて、もう姉の顔を見れない。


「本当だって。やっぱり私の弟なだけあって、顔のパーツはいいんだから」


……本当なのか。


いつも散々地味だとか根暗だとか言ってたくせに今更手のひら返しするとは思えないが。


「まあナオが地味なのは変わってないけどね。あくまで素材はそこそこいいって言ってるだけだし」


くそっ、結局地味なんじゃねえかよ。


「でも、ナオがそんなこと言うなんてねぇ……ふーん。もしかして誰かに言われたとか?それも女の子とかに」


まさかの言葉に俺は息を詰まらせた。


我が姉ながら鋭い。


「ま、まあ、そうだけど……」


「だろうね、ナオが自分からかっこいいとか言い出すわけないもんね」


「当たり前だ。俺はちゃんと分をわきまえてるからな」


あの二人に言われなかったら、そもそもこんな思い上がりなんてしなかった。


姉に大爆笑されることもなかった。


「まあ、1日くらいいいんじゃない?ちょっとしたイメチェンってことでさ」


「……キモがられねえかな?」


「そういうネガティブ思考がキモイんだって。しゃきっとしなさいしゃきっと」


そう言って、姉は俺の両肩を思い切り叩いた。


そんな俺は目を丸くしていた。


「ん、どうしたの?」


「……いやぁ、ちさ姉が本物の姉に見える」


「失礼ね、私だって姉らしいことの一つや二つぐらいできるんだぞ?」


掃除、洗濯、料理……何をやってもてんでダメだけどな。



……1日だけ、やってみるか。


「ちさ姉ありがとう。じゃあ俺飯作ってくるから」


「はいはい、できたら呼んでねー」


そして、俺は姉の部屋を出て台所に向かった。




────翌朝、俺は洗面所の前で立ち尽くしていた。


鏡の前で自らメガネを外し、前々からもっていたが、1度つけたことのなかったコンタクトレンズをはめる。


メガネを外した自分を鏡越しに一瞥する。


やっぱり自分ではよくわからないな。


ただ、メガネを外しただけのいつもの自分が写っているだけにしか見えない。


まあ、変ではないと思うけど。


「こんなんで変わるもんかねぇ……」



とりあえず、行ってみるしかないか。


俺は念の為、メガネを鞄に入れて家を出た。



学校に着き、教室の前で俺は立ち止まった。


なんか緊張するな。


雅の待っていた空き教室に入る前みたいな緊張感がある。


登校の途中、妙に視線を感じたんだよなぁ。


やっぱ変なのか。


ええい、うじうじしていても仕方がない。こういうのは勢いだ!


俺は一気に教室の扉を開けた。


瞬間、クラスメイト達の視線が全て俺に集まった。


なんだよ、いつも俺が入ってきても見ないのに。


「誰あの人」


「あんな人うちのクラスにいたっけ?」


「さあ、見たことねえな」


「でもなんかちょっとかっこいいよね」


「たしかに。割とイケメン……」


なんかクラスがざわついているが、多分俺の事なんだろうな。


キモイとか言われてたら嫌だなぁ……。


重い足取りで自分の席に座った。


クラスメイト達はどこか疑問を抱いている様子だった。


と、そんな時、背後から和希の声が聞こえた。


「おっすナオ。お、今日はメガネ外してきたんだな。やっぱそっちの方がいいじゃんか」


「そ、そうなのか?」


「ああ、めっちゃイケてるって」


そんな会話をしていると、他の生徒達も声を上げた。


「は?お前橋田なのか!?」


「え、嘘!?あの橋田くん!?」


「別人じゃねえか!」


「知らなかった!橋田くんって本当は結構かっこよかったんだ!」


そんな驚きの言葉と共に、今まで話したこともない生徒達が俺の席の周りにずらっと集まってきた。


……な、ななななななんだ、これは!?!?!?


男子だけでなく女子生徒までもが俺の周りに集まってきている。


これは……夢、なのか?


いや、ありえないだろ。ただメガネ外しただけだぞ!?


それがこんな……話したことも無いクラスメイト達に押し寄せられるなんて。


え?俺ってマジで……イケてるのか?


そんな間にも、生徒達は興味津々に近づいてくる。


「あ、ちょ、その……」


「へへ、良かったじゃねえかナオ。人気者だ」


「え、これって、え?まじでそうなの!?」


まさか、これが本物の……モテ期、というやつなのか?


こんなに凄いとは思わなかった……悪い意味で。


俺はこの時、本来なら喜ぶべき状況なのだろうが、そんな感情は微塵も感じなかった。


あったのはただ……恐怖だけだった。


……痛い。辛い。苦しい。


こんなに人が押し寄せてきたら、色んな意味で圧殺されてしまう。



こんなことになるんなら、俺はメガネをつけたままでいい。


人気者なんてクソ喰らえだ。俺はこれまで通り地味なままでいい。


俺は鞄から手探りにメガネを取り出し、すぐに装着した。


「ええ!なんでメガネつけちゃうの!」


「そうよ!せっかくかっこいいのに!」


くそっ、早くどいてくれ。コンタクトもつけてるから度が合わない。


早くトイレで外してこないと。


そう思った、その時、担任の教師が教室に入ってきた。


「ほら、席につけ。ホームルーム始めるぞ」


教師の呼びかけで、周りにいた生徒達が自分の席に戻っていった。


ナイスタイミングだ、先生!


俺は教師の了承を得て、ホームルームが始まる直前で、コンタクトを外すために1人トイレに向かった。


くそっ。思ってた結末と全然違うじゃねえか。


メガネを外した俺が割と雰囲気が変わるということはわかった。


が、もう二度とやらない。


学校では絶対にメガネを外さないと心に誓い、トイレでコンタクトを外し、メガネを再装着した。



俺の些細なイメチェンによって始まっていたかもしれない人気者道は、学校に来てからわずか数分で幕を閉じたのだった。



前後編に渡るとんだ茶番に付き合って下さり本当にありがとうございます!!次話からは雅、彩乃に続き、新たなヒロインが見え隠れするかも!?ですので、どうか見放さずに応援し続けて下さると幸いです。


感想、ブクマ、評価等も、いつでもお待ちしております!

特に、読者様方の率直な感想が聞きたいので、宜しければ感想を書いてください。すぐに返信致します!


それではまた次話にご期待ください。

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