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第19話 「ちょっとしたイメチェン 前編」



学園の三姫の1人、春川彩乃の突然の告白から、2週間程が過ぎた。


放課後になると、和希は部活に向かい、俺は雅が来るのを待つ。それが習慣づいていた。


「な、直之、くんっ」


教室から人が減ってきたタイミングで雅は現れた。


「お、おう。今日もやるんだろ、あれ」


「は、はいっ」


彼女はいつものように、放課後の定番選択カードを出した。


今日も今日とて俺はカードを引く。


「えっと、今日は……一緒に帰る、か。おっけ、じゃあ帰るかね」


「は、はいっ」


放課後一緒に帰るという選択は、2日に1回は引いている気がする。


俺は彼女と帰るべく、荷物をもって席を立った。


と、その時だった。


「せんぱーい!私も一緒に帰りまーす!」


そんな陽気な声と共に、春川彩乃が教室に入ってきた。


「あーはいはい、わかったからか」


そんな空返事をしたが、内心超絶ドキドキしていた。


これが噂の、「両手に花」というやつなのか?


しかし、あの時からよく俺の教室に来るようになった。


顔を合わせればそばに寄ってくる毎日。


しかもその彼女が学園でも超人気女子生徒。周りの男子生徒からは常に鋭い視線を感じている。


正直辛い。


「もう!いつになったら先輩は私になびいてくれるんですかぁ?」


上目遣いで瞳を輝かせながらそう言ってくる。


「そ、そんなのは俺にもわからん」


「そうですか……付き合いたいって思ったら言ってくださいね!いつでも大歓迎ですから!」


「……っ」


やめてくれ。そんなこと言われたら童貞の俺はコロッといってしまいそうだ。


てか、正直付き合えるもんなら付き合いたい。


が、恋愛感情も持たずに付き合うのは男としてどうかと思う。


ちょっともったいないなんて思ったりもするが、軽い男にはなりたくないからな。


「んじゃまあ帰るか」


そして俺たちは3人で教室をあとにした。



俺たちは最寄り駅まで歩き、電車に乗った。


偶然というのは怖い。まさか、みんな家の方向が一緒だなんて。


女子と下校なんて今まで考えたこともなかったが、最近はなんか毎日のように一緒に帰ってる気がする。


絵面からすれば、俺が2人の女を侍らせてるチャラ男に見えてしまいそうで怖い。


これで俺がイケメン陽キャなら、何も違和感ないのかもしれないけど。


電車に揺られながらそんなことを考えていると、彩乃が俺の顔を覗き込んできた。


「どうしたんですか?先輩?」


「あ、いや、なんでもない」


「そうですか。ならいいですけど」


そう言いながらも、彩乃は俺の顔をまじまじと凝視し続ける。


なんのつもりだ?


「ど、どうした。俺の顔をに何かついてるか?」


「いやー、前から思ってたんですけど、先輩ってメガネ外したら絶対かっこいいのに」


「……はあ!?」


予想外の言葉に俺はつい声を張りあげてしまう。


「あ、今のままでも十分かっこいいですよ?」


「いや、そういうことじゃなくて……」


そういえば、前に和希もそんなこと言ってきたっけ。


「はぁ……そんな簡単にかっこよくなれるわけないだろうが。俺は彩乃とは違うんだよ」


「えー?絶対いけますって。逢坂先輩もそう思いますよね?」


彩乃は、俺の隣で黙り込んでいた雅に話をふった。


彼女に限ってそんな急に聞かれて答えることなんてできない、と思っていたが。


「……思い、ます……」


俺は驚いた。


雅……ちゃんと自分の答えをその場で言えるようになったんだな。コミュ障が治ってきている証だ。


単純な反応だったが、これは凄い成長だ。


……て、感動に浸っている場合じゃない。


は?俺がかっこいい?こいつらの目は腐っているのか?


「おいおい、お前ら目、大丈夫か?」


「ひどーい!私の目は正常ですよ。先輩のそのネガティブ思考の方がおかしいですって」


「いやだってさ、今までかっこいいなんて割と本気で1度も言われたことないんだぞ?」


姉からは毎日のように地味だとか平凡だとか言われ続ける毎日。


俺が例えナルシストだったとしても、そんなことを毎日言われたらさすがに受け入れざるを得ない。


「大丈夫ですって。先輩あの時私にメガネ外させたじゃないですか。だからお返しです、えい!」


そう言うと彩乃が急に俺のメガネを外してきた。


「ちょ、何すんの……っ!」


「ほら、やっぱりかっこいいじゃないですか」


なんなんだよ、ほんとに……。


そんな、そんな真剣な顔見せられたら……俺は……。


「あ!今照れましたね!可愛い!」


「は?べ、別に照れてないし。てかメガネ返してくれよ。それないと割とまじで見えないんだって」


俺がそう言うと、彩乃はすぐにメガネを返してくれた。


「ああ、ごめんなさい、つい。でも、本当にかっこいいですから、明日にでもコンタクトにして来てくださいね」


「たく……てか、なんでそうなるんだよ」


「いいからいいから。逢坂さん見たいですよね?」


またしても雅に話を振る彩乃。


「み、見たい……です」


くぅっ、また雅がちゃんと返事した。感動だ。


「ほら、逢坂先輩もこういってる事ですし、明日……お願いしますよ!」


俺の意思は無視かよ。


やらない。絶対にやらない。また惨めな思いするだけだし。



と、確固たる決意をもっていた……はずだったのだが……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公がただただ聖人ですね。 いい奴はモテるべき!
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