第12話 「ゲーセン」
ゲーセンデート────高校生カップルのデートスポットの人気ランキングでは常に上位に君臨する。まさにデートの象徴、大名詞だ。
そして俺達は今まさに、ショッピングモール内の大きなゲームセンターに来ていた。
ゲーセン特有のけたたましいが、慣れれば妙に心地のいい騒音が鳴り響く。
休日のゲームセンター。
想像通り、高校生カップルと思わしき男女が数え切れないほどいた。
いつもなら、和希と一緒に悠々と乗り込んでいくところだが、今日はどうにも足が重い。
なぜなら今日、俺の隣にいるのは和希ではない。
学園の裏人気美少女、逢坂雅なのだ。
別に付き合ってる訳じゃない。
あくまで友達としてここに来ているだけだ。
しかし、同級生の……しかもこんな可愛い女の子とゲームセンターにいるんだ。
今までの俺の日常にはありえなかった状況。
俺は緊張で身震いが止まらない。
それは隣にいる雅も同じだった。
彼女の場合は、思いのほかの騒音に驚いている、という所だろうか。
しかし、いつまでもゲーセンの前で突っ立っている訳にはいかない。
覚悟を決めて行くしかないな。
「よ、よし、い、行くぞ、雅」
「は、はひぃ……」
がちがちに強ばった足を無理やりに動かし、とうとうゲームセンターの仕切り線を越えた。
やっぱり最初はクレーンゲーム辺りか。
いつもはアニメ関連の台に向かうところだが、今日は雅が一緒だ。
無難にぬいぐるみとかお菓子とか、そっち方面の台がいいだろう。
「雅、何か欲しいのとかある?」
と聞いたものの、俺はふと思い出した。
「あ、決められないんだったな。んじゃまあ適当にやってみるか」
「は、はい……すみません……」
申し訳なさそうに謝る雅。
まあ、この慣れない環境なら尚更だろう。
俺も、正常な判断ができるかどうかと言われたら、正直難しい。
「いいって。んじゃとりあえず、あのぬいぐるみでも挑戦してみるか」
俺は1番近くにあったうさぎのぬいぐるみの入った台の前に立った。
ゲーセンには何度も通っているが、この手のクレーン台に触るのは初めてだ。
まあ、とりあえずやってみるか。
俺は100円硬貨を台に投入した。
雅は俺の隣でクレーン台に釘付けになっている。
………やりにくいな。
俺はゆっくりと移動ボタンを押し込む。
縦、横と移動させ、アームはうさぎの首辺りを掴んだ。
ゆっくりとぬいぐるみは上がっていく。
「お、これは来たか!?」
感触はいい感じた。
雅も目を丸くして、上がっていくぬいぐるみを見ていた。
しかし、てっぺんまで上がった時、衝撃でぬいぐるみは下に落ちてしまった。
「あぁ、ダメか……残念」
まあ、こんなもんだわな。
別にクレーンゲームうまいわけじゃないし。
和希ならいけたかもしれないが、あいつはどっかで絶賛イチャイチャデート中だろうからな。
しかし、雅は以外と興味津々だったな。
「雅もやってみるか?100円なかったら俺出すし」
「え、えっと……私は……」
彼女は指を重ね合わせながら、もじもじとしていた。
ああ、そうだった。……いい加減慣れないとな。
ここで俺が取るべき手段は。
「じゃあ、ちょっとやってみてくれよ」
「は、はい……」
やっぱり、やれって言えば動けるんだよなあ。
と、そうしているうちに、雅はゆっくりと移動ボタンを押し込み、アームを動かした。
俺の狙っていたぬいぐるみの首を掴む。
「あれ、雅ってクレーンゲームやったことあった?」
「え、いや……初めて、です」
「上手いもんだな」
驚いた。
見よう見まねで的確に首の部分を掴めるなんて。
もしかしたら、初見で落とせるかも。
そう期待した矢先だった。
俺と同様、天井に到達した衝撃でぬいぐるみはアームから離れてしまった。
「あー、残念。でも惜しかったよ。初めてとは思えない」
「ご、ごめんなさい……」
雅は申し訳なさそうな顔で謝ってくる。
「いや、こっちこそ悪いな。無駄に金使わせちまって」
俺の方が申しわけない。
うーん、どうにかしてあげたい。
しかし、このぬいぐるみは俺の腕じゃ取れそうにない。
さあ、どうしたものか。
そう考えていると、2つ隣の台に視線がいく。
───あれなら、いけるか。
俺はその台に移動し、躊躇わず硬貨を投入した。
流れるようにアームを動かし、標的を掴んだ。
そして、アームから離れることなく、俺は標的を獲得した。
「こんなんでよかったら、ほら」
雅のいる台に戻り、いまさっき獲得したものを差し出した。
それは、俺がゲーセンに来た時に必ず取る、あるアニメキャラのぬいぐるみだった。
俺が取れるのは、これぐらいしかない。
「やっぱりこういうのは嫌、か?」
アニメの、それも萌えよりなキャラだからな。
嫌いかもしれない。
「い、いえ。その、嫌じゃない、です……でも……」
まだ少し受け取ることに抵抗があるようだ。
俺も誰かにものをあげるというのは初めてだから、どういう風に渡したらいいかいまいち分からないんだよなぁ。
「いいから、受け取ってくれよ」
遠回しに言うとか難しいことはできないので、ド直球にそう言った。
「い、いいん、ですか……?」
「ああ、もちろん。でも嫌いだったら正直に言ってくれよ」
本当は我慢しているのかもしれない。
「い、嫌じゃないですっ。……えっと、じゃあ……」
雅はゆっくりとぬいぐるみを受け取り、自身の胸に抱き寄せた。
あぁ……これがクマとかうさぎのぬいぐるみだったらもっと映えるんだろうけどなぁ。
「あ、ありがとう、ございますっ」
雅は嬉しそうな表情をする。喜んでくれてるなら幸いだが。
まあ、クレーンゲームはもうやめておこう。
「じゃ、じゃあ次は何しようか」
そう言いながら、俺達はクレーン台を離れた。
直之達の動向を観察していた和希達は─────。
「ほうほう、あれは完全にアレだな、妹よ」
「そうだね。確定だね、和にい」
兄妹してにやけ顔を浮かべている。
「ナオの方はまだわからんが、逢坂さんの方は確実だろう」
直之からぬいぐるみを貰った時の逢坂雅の表情。
極度に赤く染った顔。
彼女の方は完全に直之に気がある事が明らかになった。
間違えようがない。
「よーし、作戦終了だ。そろそろ合流するぞ、那由」
「りょーかい」
そして和希達は、直之達と合流すべく動き出した。
(よーし、今日も更新しよ)と思ったらブックマーク増えてました!ブクマつけてくださっている方、毎度のことですが本当にありがとうございます!!ポイント評価してくださった方も本当にありがとうございます!!低評価でも高評価でも、どちらでも凄く嬉しいです。ちゃんとこの作品を見てくれているんだって思うと凄い励みになります!この作品を楽しみにしてくださっている方のために、これからも頑張っていきたいと思うので、応援よろしくお願いします。
後、催促するようで申し訳ないのですが、作者は文章がとてつもなく拙いので、文法ミスや不可解な点、誤字脱字等見つけましたら、コメントしてください!そんな中で、ここが面白い、ここが好き、みたいな点もありましたらコメントしてください。とても励みになりますので。
コメントはすぐに返信したいと思います。褒め言葉でも、罵倒でも何でもいいので、作者にこの作品に感じたことを言ってください!全部受け止めます!
長文失礼しました。あと、作者が粘着質ですみません。
これからもこの作品の応援、よろしくお願い致します!




