第62話 始まりの地、始まりの人々
プラティユーシャとの邂逅、そして対策会議を終えた俺たちは、最後の決戦に向けて消耗品の補充と鋭気を養うため、アーテミス山脈の麓にあった一番ほど近い街――始まりの地たるアレグリアへと向かっていた。
懐かしい木々と獣のにおいが入り混じる森林地帯――アレグル森林の中を、街に向けて歩く。以前と同じように木漏れ日が降り注ぐ穏やかな林中は、まるで昔にタイムスリップしたかのような、不思議な感覚を覚えた。
ふと、俺は腰のベルトを見やる。使い古されたベルトは、かつて俺がアレグリアから旅立つ準備を整える際、こちらの世界で俺に親しくしてくれた夫婦……ことミリア・メルターさんのお手製だ。旅立つ前、何かの役に立てばと手製のものを送ってくれたものであり、同時にかけがえのない思い出の品でもある。
新品の光沢を持っていた頃の面影はすっかりなく、くすんだ茶色と所々が錆びた、年季の入った一品になっているのを見ると、本当に長いこと世話になっていたんだなぁ、と感慨深くなった。
同じ時期にベルトに追加されたカードケースも、ひいては全身を包む冒険者としての衣装も。その身に纏い、まだ見ぬ冒険に胸を躍らせていた時とは、姿形こそ同じだが色々なものが変わった。
仲間が居て、冒険を知って、死線をくぐり抜けて、傷跡を刻んで。
たくさんの経験を体験できたのも、思えばここから送り出してくれた人々のおかげなのだ。あえて召喚したクソ王家のおかげとは言わない。あいつらはただ俺をこの世界に召喚しただけで何にもしてくれなかったし、そもそもあんな連中に感謝する筋合いはないはずだ。そのことに気づかせてくれたっていう意味では、唯一の良心たるクレアに感謝はしてるんだけど。
とまぁ、そんな風にいろんなことを懐かしみつつ森を歩いていると、不意に木々が途切れ、人が踏みしめて出来た獣道がまっすぐに伸びる草原へと踏み出た。そしてその道が続く先には、鮮やかな赤と白に彩られた白亜の尖塔群。
ここから見た景色だけならば、まさしく勇者が旅立つ城といった様相だ。内部の腐りようはともかくとして、こちらに来て間もない頃、間近に見えるその迫力に圧倒されたのは、今でも覚えている。
「あそこから、俺の旅は始まったんだな」
感慨深くなって思わず呟いたのを、仲間たちが聞き取ったらしい。励ましか追い討ちか、カノンとゴーシュが口を開く。
「見た感じだと、なんだかそういう風には見えないんだけどなー」
「でも、タクトは実際にポイ捨てされたんだよな。ったく、ふてぇ野郎どもだぜ」
「……ふてぇかはともかく、今となっちゃ、ポイ捨てには感謝してるよ。あんな連中に勇者呼ばわりされてこき使われるなんて、想像するだけで気が滅入る」
懐かしい場所にいるのと、周囲の人間が仲間たちだけなのが手伝い、ついつい本音がダダ漏れになる。もっとも、愚痴るのはいつものこと故、仲間たちは気にせず同調してくれるので、俺としても気が楽だったりするのは内緒の話だ。
「けどタクト君、王女様と一緒にいるときはすごく楽しそうだったわよ?」
「んまぁ、彼女は結構まともだからな。正直なとこ、あの子がいなかったらアレグリアに寄ろうとも思わなかったかなぁ」
結局のところ、俺はどう転ぼうとアレグリア王家を好きにはなれないのだろう。今だって、使命さえなければクーデターでも起こしてやろうかという気持ちがあるのだが、さすがにそんなことをすれば国民たちの生活が危ういのは理解している。……もっとも、私怨で国をひっくり返すなんてことはしない。やったら確実に指名手配だ。
なんてことをつらつら考えていると、横からばしんと肩を叩かれた。こんなことをしてくるのは一人だけ、つまりゴーシュである。
「強がんのはいいけどよー、俺らにゃバレてるんだぜ?お前があの子に惚れてること」
「な……んなわけないだろ!」
意味の分からん事を言うゴーシュに、思わず声を荒げてしまう。何を根拠にそんなことを口走るのか意味がわからん!
が、疑っているのか確信を持っているのか、サラはクスクスとお上品に笑っている。助けを求めるようにカノンへと目線をむけると、そこには唇を尖らせて少し目を細め、こちらを小さく睨みつけるカノンの姿。
「……やっぱり、タクトくんはああいう人が良いんだ」
カノンの反応は、あからさまに嫉妬しているそれ。あれ、俺いつフラグ立てたんだよ?こんな可愛い表情される覚えはない……って何を言ってるんだ俺は。
「ともかく、俺がクレアに惚れてるだとか、そんなことは断固としてない!だからそこの二人は笑うのをやめろっつーの!!」
ますます唇を尖らせるカノンと、笑いがこみ上げているのか腹を抑えるゴーシュと口元を抑えるサラ。なんだよこれ、浮気の濡れ衣着せられる心境ってこういうのなのか……じゃなくて!
「だあぁ、その目をやめろーッ!」
結局、疑いは王都の中に入るまで解けることはなかった。
***
その後、アレグリアに入った俺たちは、今晩を過ごす宿を取っていた。特に問題もなく予約を済ませ、荷物を部屋に置くのをゴーシュに任せて、俺は馬に姿を変えたルゥを小屋に連れて行っている最中である。なぜまたルゥを馬にしているのかというと、龍なんてものを滅多に見ない国民を混乱させないためと、国営軍をいたずらに刺激しないためだ。
「悪いな、ルゥ。また肩身の狭い思いをさせて」
『いえ、私としては特に問題ありません。人の手で用意された寝床というのも、案外悪くありませんし』
馬くさいのは少し慣れませんがね、と苦笑混じりに呟くルゥに、俺も苦笑を返す。ちなみに、この状態でルゥの声を他人に聞かれるとあまりよろしくないので、会話は念話で行っている。はたから見れば馬を大事にしている人にしか見えない……はずだ。
「……そういやさ、幻龍ってどんな姿にも変われるんだよな?じゃ、人になることもできるのか?」
ふと素朴な疑問が湧き、俺はルゥに問いかける。骨格まで変えることができるのなら、人にもなれるんじゃないだろうかという推察は、意外にも当たっていたらしい。
『はい、可能ですよ。魔王の部下は時として人ごみに紛れることもあります故、私たち幻龍は人の姿をとることも多いです』
さすがは異世界だなぁと、俺は改めて感心した。現代だったら、科学的に即刻否定されるようなことも、この世界ならば現実のものとなるのは、この世界に魔法という概念が存在するからなのか、どうなのか。
そんなことを考えつつ、俺はルゥの鼻先に金具を嵌め、杭に固定する。
「じゃ、明日はよろしくな。ゆっくり休んでくれ」
『はい、おやすみなさいませ、タクト様。しっかり英気を養ってくださいね』
「ああ」
軽くうなずき返して、俺は馬小屋を後にした。
それから俺は仲間たちと少し離れ、改めてアレグリアの街を見物していた。
街の様相そのものは、ここを旅立つ前――体内時計の感覚で言えばほぼ1年前の当時と、ほとんど変わっていなかった。変わったといえば、城下町入り口にいた露天商の数が、目に見えて減っていることだろうか。
物が売れるような時期じゃないのかもしれないなと考えつつそこへ近づいてみると、ふと懐かしいものが見えた。
無造作に広げられた赤いカーペットの上に、乱雑に置かれた商品。その中心に胡座をかいて座っているのは、まるで山賊のような魔除けの衣装に身を包んだ、ヒゲの濃い精悍な顔つきの男。
その首が俺の気配を察知したのか、ぐりんと回ってこちらを向いた。その顔は驚くでも焦るでもなく、ただ不敵に笑んでいる。
「久しぶりじゃねぇか、タクト」
「ああ、久しぶりゼック」
まるでつい最近会ったことがあるかのような口を交わしながら、俺と露天商、ことゼックは再開した。
「セルビス以来じゃねえか。元気にしてたかよ?」
「それはこっちのセリフだよ。渡航先のハーメルンで見かけなかったから、てっきり山賊に間違われて牢屋にぶち込まれたのかと心配したぞ」
「よせやい、ありえそうで笑えてくるぜ」
軽口をかわすのも、本当に久しぶりだ。短い間ながら世話になっていた彼にも、どことなく郷愁めいたものを感じる。
「ここに入ってくるとき、バッチリ見えてたぜ。あの嬢ちゃんとは仲直りしたのかい?」
が、その顔が不意に悪ガキのそれに変わり、どことなく挑発めいた口調で俺に問いかけてきた。しまった、見られてたのか。
「仲直り……っていうか、向こうが勝手に疑ってただけだよ。あぁ、別に仲良くなるような魔法の道具なんてものはいらないから」
ごそごそと何かを取り出そうとしたゼックを、なるべく穏やかに静止する。ちぇー、といった顔で陳列している商品の点検を始めるゼックの横で、俺は周囲をぐるりと見渡した。
「……昔に比べて、ずいぶんと露店の数も減ったな」
俺が何を聞きたいのかを察したらしく、取り出したナイフを砥石で研ぎながら、ゼックはとつとつと語り始める。
「なんだか知らんが、王家の連中がお前さん見たいな異世界人を召喚しようと躍起になってるらしくってな。高名な魔術師やらを片っ端からかき集めるために、国民に圧政を強いてるんだよ。おかげでこっちまで課税されるわ、安くしないと売れないわ、往来が少なくなったせいで金の流れが悪くなるわ、健全な商人様にゃあ辛いことこの上ないよ、まったく」
あぁ、やっぱり国ひっくり返したほうがいいかもしれない。胸中でそう愚痴ると同時に、俺の胸にはまた別の決意が湧いていた。
おそらくクソ王家がやろうとしているのは、勇者を召喚して魔王を倒し、勇者を召喚した国として名を上げることだろう。それだけの――自らの名声のためだけに、国のことも考えずに躍起になっている。
ならば、神龍の騎士たる俺がやることは一つだ。
「……約束するよ、ゼック」
「お?」と拍子抜けした反応をしたゼックの目の前で、俺は新たなる愛剣たるアルカンシエルを召喚。握りしめて、軽く天に突き上げる。
「俺が――神龍の騎士である俺が魔王を倒して、この世界を守ってみせる。ついでに、ゼックの景気も回復させてやる」
カッコつけて目を細め、俺は宣言した。遠回しにだが、この圧政をやめさせるということを。
キマった……とか内心でほくそ笑みつつ、改めてゼックのほうを見ると、大方の予想どおり彼は固まっていた。
「じゃ、行くところが出来たんで」
ひらと手を振って、ゼックの店を離れて歩き始める。今しがた表明した決意を、あの人たちに――長くお世話になったあの二人に、聞かせてあげたいんだ。
周囲の人々からの驚いたような眼差しを華麗にスルーしつつ、俺はその場を立ち去った。
数分城下町を歩くと、そこはもう懐かしい場所だった。王城へと続く長い上り階段が見えるストリートは、かつてここに住んでいた――正確には居候していた時に、よく見かけた場所。
横に伸びる路地へと入り込み、民家の並ぶ道をしばらく歩く。相変わらず主婦がたが井戸端会議をしている横を通り抜け、さらに奥へと歩くと、それは見えた。
民家の入り口にたち、しばし深呼吸する。あの人たちは、今の俺を見てどう反応を返してくれるだろうか――ということを少しばかり頭の片隅で考えながら、俺は右手を持ち上げ、木製の扉を数回、ノックした。
……昼過ぎだから二人とも居るだろうか、という懸念は、杞憂に終わってくれたらしい。がちゃり、とノブの回る音が聞こえたかと思うと、金具の軋む音を立てて扉が開いた。その奥にいたのは、懐かしい人の顔。
「………あら」
「久し、ぶり。ミリアさん」
ちょっとぎこちないながらも微笑み、目の前の女性の――俺の恩人たるミリア・メルターさんの名を呼んだ。
少しばかりフリーズしていたミリアさんだったが、徐々に歓喜の笑みを浮かべ始めたかと思うと、一気に破顔する。そのまま俺の肩を掴み、次いでぐっと抱きしめてくれた。
「………おかえり、おかえりタクト」
「うん。ただいま」
その声音は、どことなく泣いているような響きだった。無理もない、息子代わりの子供が家出同然に飛び出して行ったのだから、帰ってきたのを喜ぶのはよくわかる。改めて考えると、ずいぶんな心配をかけたはずだ。
続けて、どたどたと家の奥から歩み出てきたのは、これまた懐かしい人の顔。
「………………た、た、タクトォ!!」
俺の顔を見るや否や、するりと退いたミリアさんに変わって、ライドウ・メルターさんが力いっぱい俺を抱きしめてきた。相変わらずそのたくましい体は健在らしく、分厚い胸板にギリギリと締められる。めっちゃ汗臭いけど、懐かしいその臭いは不思議といやに思わなかった。
「おま……コラーッ!!」
「あいってぁ!?」
しかし、次の瞬間には羽交い締め状態からゲンコツを食らう。痛い、丸太みたいな腕から繰り出される一撃はめっちゃ痛い。
「タクト!!お前……勝手に出て行くなよ!俺たちはなぁ……お前のこと、心配してたんだぞ!!」
視界に星をチラつかせながら頭を抑える俺に、ライドウさんの一喝。申し訳ないという気持ちになると同時に、本当に愛されていたんだなぁと嬉しい気持ちになった。
「っつ……ご、ごめんなさい。ともかく、久しぶりライドウさん」
本当に、この2人に拾われてなかったら今頃俺はどうなっていたんだろう。そう思いながら、ミリアさんに引き入れられるままに民家へと入っていった。
「はい、タクト。これ、好きだったでしょ?」
そう言ってミリアさんが差し出してくれたのは、昔厄介になっていた頃によく振舞っていてくれた野菜スープだった。どうやら、偶然作り置きしていたらしい。
軽く礼を述べつつ、俺はマグカップに入ったそれを口にする。懐かしい野菜の甘みが口の中に広がって、帰ってきたんだという気持ちを強くしてくれた。そのままゆっくりとそれを味わう俺に、ライドウさんが問いかけてくる。
「こうして帰ってきたってことは、しばらくゆっくりするんだろ?またウチにいたらどうだ?」
ライドウさんの提案は中々魅力的だ。久しぶりに2人とゆっくりしてみたいという気持ちもあるが、俺はその提案を断る。
「ごめん、ライドウさんの提案は嬉しいけど、俺には使命があるんだ。仲間と一緒に旅をしてるし、みんなを纏めてここに滞在させるわけにはいかないよ」
「む、そうか。タクトにも良い仲間が出来たんだなぁ……って、使命?」
ああ、そういえば今更だけど、ライドウさんたちは使命のことを知らないんだった。知ってる仲間とばっかり会話してたから、そんなこと忘れてた。
口で言うよりは、証拠の品を見せてからの方が早いだろう。そう考えて、俺はアルカンシエルを召喚する。
がしゃっ、と重い音を立てて俺の手に収まるアルカンシエルを見て、夫妻は目を点にしていた。まぁ、こんなもの見せられて驚かない人は居ないだろうなぁ、と考えつつ、俺は背負った使命と、ここにきた経緯を2人に話す。
俺が口を閉じると、二人はほぉーと揃って感嘆のため息をついた。ついで、ライドウさんにわしわしと頭を撫でられる。
「そうか、そうかぁ!役立たずと言われたタクトが神龍の騎士とはなぁ!」
「あなたと一緒にいられた私たちも、鼻が高いわねぇ」
まるで自分のことのように喜んでくれる2人に、思いがけず暖かい気持ちになる。本当に、この人たちはできた人だ。
「はは……報告してよかったよ」
思わず破顔してしまう。こうして暖かい気持ちになるのは、本当に久しぶりだ。ここ最近はなんだかんだと緊迫していたから、仲間たちとはここまでゆったりと言葉を交わすことはなかったはずである。
「タクト、それを王様に言ってきてやりな!思ってたんだろ、あいつらをギャフンと言わせたいって」
唐突に、ライドウさんがそんなことを言ってきた。その言葉を受けて、俺はしばし昔を思い出していた。
思えば俺が旅に出たのは、彼らに迷惑をかけたくなかったのと、名を上げて俺を捨てた王家にひと泡吹かせるのが目的だったはずだ。それがいつのまにか世界を救う旅に変わり、いつしかそんな目的は路肩に投げ捨ててきてしまったらしい。今しがたライドウさんに言われるまでがっつり忘れていたが、そんなことも言ってたなぁ。思わず感慨深くなってしまう。
というか、もうギャフンと言わせるどころの話じゃないんじゃなかろうか。捨てた奴が英雄と同列に語られる人間に成長してるとか、クソ王家が聞いたら度肝抜かしそうだ……いやクレアは知ってるっけ。
いっそ本当に乗り込んで自慢でもしてきてやろうかなぁなんて考えていると、椅子に腰を下ろしたミリアさんが、優しい声音で俺に言う。
「タクト。あなたの友達の話を聞かせておくれよ。どんな人が仲間になってるのか、私は気になって眠れそうにないわ」
「あぁ、そうだな!そういや、他の人たちはどうしたんだ?」
続いてライドウさんの言葉。とくに断る理由もないし、2人にも聞いて欲しいという気持ちもあったので、ひとつ頷いて俺は口を開いた。
「最初は、隣街のレブルクで出会ったんだ。その子……カノンっていう女の子なんだけど、凄いんだよ。普通なら一、二属性しか使えない魔法属性を、その子は全部使えるんだ!最初聞いたときはすっげー驚いて、それからもカノンにはたくさん助けてもらったよ」
茶色い髪と金眼の少女がいつも振りまいている明るい笑顔を思い出し、自然と頬が緩む。「次に出会ったのが、ゴーシュってハルバード使いとサラっていう弓使い」
「あら、ふたり一緒に出会ったの?」
「そう、レブルクの次に向かったセルビスで、ね。他の人には秘密だったけど、ゴーシュはとある一族の子孫。サラは詳しくは聞いてなかったけど、なんでも勇者の身体能力を人工的に再現した、サイボーグなんだってさ。結構過去は重いのに二人はあんまり気にしてないみたいだけど」
琥珀色の瞳と銀髪のオールバックが特徴の男と、緑のポニーテールと空色の瞳を持つ女を脳裏に思い浮かべて、その顔を思い出す。子供のように笑いつつも、いざという時には頼りになるゴーシュと、もの静かだけど世話焼きで腕もいいサラ。彼らには、戦力面でも精神面でもたくさん助けられたのを、よく覚えている。
そうして仲間たちのことを思い返しながら、俺の話はとっぷりと日が暮れるまで続いた。
……冷静に仲間たちのスペックを思い出してみると、カノンは魔力チート、ゴーシュは勇者の子孫だから身体能力チート、サラも模倣ながらゴーシュと同じく身体能力チートと、本当に恐ろしいスペックである。よくもまぁ俺みたいな凡人についてきてくれたなぁと思う反面、仲間たちの人情の厚さに思いがけず涙腺が緩んだのは内緒の話。
***
その後仲間たちと共に宿で夕食を楽しみ、互いに軽く語り合いながら就寝した。
たっぷりと身体を休めて気合い充分に起床した翌日、仲間たちと共に宿をチェックアウトし、いざ向かわん――とした、まさにその直後だった。
「……何?これ」
宿を出た俺たちの前に立っていたのは、鋼鉄のプレートメイルに身を包んだ騎士。間違いなく、アレグリアの騎士団だ。
「神龍の騎士、タクト・カドミヤと見た。アレグリア今代国王ドラウス・ディ・アレグリアの命により、貴様を謁見の間へと連れて行く。……貴様は王により召喚された異世界人である故、拒否権はない。抵抗した場合、どうなるかわかるな?」
タクト「(#^ω^)こいつ絶対立場分かってないな……」




