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あきらめて!

「貧乏もつらいけど、お金があったらあったで大変って本当なんだね。ひゃ~」

 人生の難しさを嘆きながら、ダイヤモンドが深いため息をつく。が、その発言を肯定してしまっては、彼女の夫が気の毒すぎた。

「ちょっと!ダイヤモンドののところだって、貧乏ってほど貧乏じゃないでしょ。ちゃんと頑張って働いて、妻と子供を養ってくれてるんだから感謝しなさいよ。旦那さんに失礼だよ!」

 ルビーにたしなめられ、ダイヤモンドは大げさに身を縮めて反省して見せた。そんな二人のやり取りを横目に、軌道修正はやはりサファイアの役割だった。

「それでコスチュームなんだけど、もうこれ以上脱線はナシよ!どう思う?できると思う?」

 その問いかけに、ほかの4人が互いに顔を見合わせる。

「私は・・・できると思いたいかな。これ、特殊っぽいから同じ布は無理だけど、探してみてリメイクしたい」

 エメラルドの発言に、ダイヤモンドが腕を高々と上げた。

「右に同じ!」

 そしてその同意に、オパールが続く。

「私も隠したい!」

 が、ルビーの気持ちはみんなと同じだったが、意見としては少々違っていた。

「私も直せるなら直したい。私は裁縫はちょっと無理だから、誰かにお願いしたいけど・・・でもほんとにできるのかって考えたら、無理なんじゃないかと思ってる」

「なんで!?やってみなきゃわかんないよ!」

 ムキになって抗議してくるダイヤモンドに、ルビーはどう説明したらいいかしばし考え、やはり実際にやってみせるのがいいだろうと判断した。彼女は突然自分の左肩に触れ、そのコスチュームを思いっきり引き裂いた。

「ルビー!?」

 その行動に驚き、彼女を除く全員がルビーの名を叫んだ。が、当のルビーは平然とした顔で、そのまま元の姿へと戻ってしまう。


「メタモルフォーゼ!!解除!!」


 次の瞬間、ルビーの体を赤い光が包み込み、やがてそれらが分割され粒状になって消える。そしてルビーは再び茜へと変貌を遂げていた。その行動の意味が分からず、4人は茫然と彼女の説明を待った。そんな様子を察してか察するまでもないのか、茜は再びルビーへと姿を変える。


「夢見るように燃える愛、炎の化身!ラブリードリーム・ルビー、参上!!」


 きらきらとした光の中で、炎の戦士が登場する。一度変身を自ら解いたというのに、またしてもルビーの姿に戻ったのはなぜか。ここまでこらえてきたダイヤモンドだったが、ついにこらえきれずに疑問の声を上げた。

「ねえ、何してるの!?コス破いたり何度も変身したり、どういうつもり!?」

「これを見せるためよ」

 そう言ってルビーが指し示したのは、今さっき彼女自身の手で引き裂いたコスチュームの左肩部分だった。そういえば二度目の変身直後には見逃していたが、先ほど大きく破いたというのに、そこはすっかり元通りの状態になっている。

「うわ、直ってる!!」

 反射的に驚きの声をあげたダイヤモンドに続き、他のメンバーもまた共感した。

「ほんと!!きれいに戻ってる!私がやるよりきれい!!」

「え?エメラルドよりきれいなの!?すごいわ!!」

 オパールがさらに目を見開き、ルビーの肩口を凝視する。その横で、賢明なサファイアがここまでの一連の行動に関する説明を待たずに、ルビーの意図を把握した。

「つまり・・・直しても無駄ってことね」

「そういうこと」

 ルビーがうなずくことで、エメラルドとオパールもその会話の意味を悟る。

「確かに・・・今までもそうだったわね・・・」

「私たち、あの頃は中学生だったし、戦うことに精いっぱいでそんなこと気にしてなかった・・・」

「むしろそれがあたりまえって思ってたわ・・・」

 がっくりとうなだれる4人に、ダイヤモンドだけが察し悪く食い下がった。

「ちょっと!!私を置いてかないでよ!!もー、みんなでわかっちゃった~みたいな顔しちゃって。ずるい!ねえ、なにがだめなの?」

 そしてその反応に、今度はルビーが声を荒らげる番だった。

「はあー!?私がここまでしてるのに、なんでわかんないのよ!!」

「だって説明してくれてないじゃない!!」

「だって私、そういうの苦手だもん!!だから口で説明するよりわかりやすいように、わざわざ実際にやってみせたんでしょ!!」

 一気に口論へと発展する二人の間を割って、ダイヤモンドへの解説役をサファイアが引き受けた。

「まあまあまあ!!こういうのって、すぐにわかるタイプと意味がつながらいないタイプといるじゃない、ね?どういうつもりでやったのか、何も言わないのもよくないわよ!!今、私から話して教えるからね!!」

「ほら!!サファイアだって私の言い分が正しいって言ってるじゃない!」

「そこまで言ってないでしょ!!」

「もうやめなさいっ!!」

 それでも自分の言い分をひっこめない二人に、サファイアが笑みを消して威嚇する。その怒りの声に、二人はやっとケンカをやめて口を閉じた。やかましい言い争いを強制的に終了させたことで、やっとここまでの経緯について語れるようになる。

「つまり、今ルビーが服を破って、一度元の姿になったでしょ。で、そこからまたルビーに変身したら、今度はさっき破ったコスチュームが元に戻ってたわけね」

「それは見てたからわかるわ」

「これまでずっとそういうものだって気にしてなかったけど、私たちラブリードリームのコスは破損しても、変身を解除して次に変身したらそういうのが全部自動的に直ってるのよ」

「うわ、便利!!」

 ここまではのん気に感心していたダイヤモンドだったが、しかし次のサファイアの発言に、激しい絶望を味わうことなる。

「それをもとに考えると、私たちがいくらコスチュームにはさみを入れても、いくら布を当てて縫い付けて修正しても、次に変身した時にはそういうの全部チャラになってる可能性が高いってことを、ルビーは言いたかったのよ。わかった?」

「な・・・なんで!?」

「そんなこと私たちに言われても知らないわよ。最初からそういう仕様なんだもん・・・どうしようもないじゃない」

 やっと事情が通じたかといわんばかりに、ルビーが溜息まじりに言い捨てる。が、そんな言葉で納得できるほど、ダイヤモンドの体型コンプレックスは小さくはなかった。

「でも・・・わかんないじゃない!!一か八かやってみようよ!!」

 が、同時に食に対する欲求も大きかった。

「布代高いよ」

「そんな無駄になるかもしれないものにお金かけるより、回転ずしに行ったほうが家族も喜ぶんじゃない?」

 ルビーとサファイアに畳みかけるように諭され、ダイヤモンドの野望は潰えて消えた。

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