決意表明
変身を解除した5人は、怪人を倒したことで日常を取り戻した街へと引き返した。と同時に、人々の噂を耳にする。
「すっごい年取ってたね。愛の戦士も、やっぱり寄る年波には勝てないんだね」
「教科書で見た写真、ちっちゃかったけどかわいかったのにね~」
「でぶっちゃってたの、二人いたよね。愛の戦士も平和になったら、だらだら怠けちゃうんだね」
「おばちゃんのへそ出しとか、ないわ~。きっついよね」
「なんかさー、若い時はいいけど、ああいう制服っていうのかね?コスチューム?年齢重ねちゃうと痛々しいよね。まじでコスプレっていうより羞恥プレイ」
無責任に口から吐き出される自分たちへの意見は、どれもこれも自分たち自身が一番感じて戸惑っている。にもかかわらず、まるで嬉々としてその姿で戦っているかのような言われように、へこむなと言われてもへこまずにはいられない。
「茜~、やっぱり変身した時のアレ、直せないかな・・・」
心の折れたひかるの泣き言に、茜は非情にも首を横に振った。
「ダメなものはダメ。というより、無理なものは無理」
「やっぱそうか~」
がっくりとうなだれるひかるだったが、しかし人々の評価はそれだけではなかった。
「でもさ、なんか敵を倒すのかっこよかったよね!!」
かつて魔法の力を授かり、ラブリードリームの戦士として戦い始めた頃の自分たちくらいの、まだ幼さの残る少女の声が5人の耳を引き寄せた。
「そりゃあ戦士だもん。年とってても強いよー!」
そしてその少女の友達だろうか。やはり中学生らしき声が同調した。
「うちのママなんて、家でDVDのエアロビとかちょっとやっただけで、超息切れしてるよ。でも、さすがラブドリだよね!!駆け回ったりジャンプしたりしても、全然へばらないでやっつけちゃうんだもん!!なんか感動しちゃった!」
「確かに!!太ってた二人なんかさ、仲間のピンチにあとから駆けつけて、こーんな感じではぁあ!!ってすごかったよねえ!!」
彼女たちの会話が耳に入ったのだろうか、それまで容姿の劣化についてばかり噂していた街の人たちの空気が変わり、「おばさんになったラブリードリームジュエル」を嘆き嘲るのではなく、「おばさんになってなお戦い続け、人々を守る戦士であり続ける彼女たち」を称えはじめる。
「確かに、ラブドリって俺と同世代なのにすごかったよな。あんなに高くジャンプしてさ、俺なんか運動らしい運動なんて全然だぜ。やっぱり正義の味方だ、強いよ」
「私も昔あこがれたわ~。今は逆に、親近感わいちゃうわね」
「ほんと!ぽっちゃりさんの二人、私と同じ体型だったわ。でも私にはあの動きはできないもの。やっぱり尊敬しちゃう」
「俺も自分の腹を見たら、人のこと言えないよな。ましてあっちはあんなに大活躍なんだ。こっちもがんばらないとなあ」
「パパも体鍛えるの!?」
「ええ!?そりゃ無理だよ、そこまでは頑張れないよ~」
まず反応したのは彼女たちと同世代の、30代後半から40代くらいの人々だった。そしてそんな肯定的な意見が広がるにつれ、その空気が街へと広がり、やがては全体に充満していった。
「ママー、私もらぶおりのおようふく、きたーい!かってー!」
「ええ、そんなのどこにも売ってないわよ。困ったわねえ」
「だってかっこよかったもん、らぶおりになりたいー!!」
「じゃあ・・・似たような布を買って作ろうか?」
「わあい!!つくるー!!」
「やだー!さっき撮った携帯の写真ぼけてるー!!みんなに自慢しようと思ったのにー!!」
「マジで?じゃ送ったげよっか?」
「マジ!?おねがーい」
「ねえねえ、ラブドリごっこしない!?」
「するする!!あたしサファイアー!!」
「じゃああたし、オパール!」
「ダイヤモンドは私やっていい?」
「ええ!!ずるい、ダイヤモンドはわたしがやりたいの!!」
「もしもし、今、すっげーもん見ちゃった!!ラブリードリームだぜ、本物の!!え?テレビって・・・ニュースで流れたんだ。じゃ俺そこにいたんだよ!!目の前でガチのバトル見たんだよ、ラブドリの。まじでつえーよ!!」
呆然とする5人を置き去りに、人々はラブリードリームジュエルの変容を受け入れ始めていた。年を重ね、体型を崩し、それでも愛と平和を守るために立ち上がった彼女たちを笑う者は、すで街にはいなくなっていた。
「やだ・・・私も、変身してなかったらジャンプなんてできないのに」
翠がそう言ってみんなを振り返ると、その瞳には小さな水滴が光っていた。その輝きに4人は驚き、息をのんだが、しかし想いは翠と同じだった。茜は翠の目の光にはあえて触れず、ただ彼女のつぶやきにだけ反応した。
「スポーツインストラクターなんてやってるけどさ、ラブドリほど高くなんて跳べっこないのよ、実際」
え?とばかりにみんなが視線を集めると、茜が首を少しだけ傾げて言葉を続ける。
「人間にはできないような力で戦ってるんだよ、私たち。だって正義の味方だもん。私たちが守らないで、誰ががんばるのよ」
そしてその発言でスイッチが入ったかのように、ひかるの表情がみるみるうちに輝きだした。
「そりゃあもちろん、私たちよ!!」
そう力強く断言した彼女は、かつてのラブリードリームダイヤモンドそのものの目をして見えた。希望に満ち溢れ、炎を燃やし、すべての人々を救い守りたいと走り回った、中学生時代の青い純粋さを宿していたあの瞳そのままに。
「みんな、私たち、これからも仲間としてがんばろうね!!」
他の4人を振り返り、そう決意表明するひかるだったが、しかしその呼びかけにだれも乗ってこようとはしない。まさか怖気づいたのだろうかと不安がこみ上げるが、しかしひかるだって黙って引き下がるつもりはない。あれだけピチピチのコスチュームに変身するしないで説得されたのだ。今更いやなんて言わせないとばかりに鼻息を荒くした。
が、彼女のそんな意気込みも気にせず、ただ淡々と、同調できない理由を葵が代表で諭す。
「ね、ひかる?私たちだって・・・そりゃあやる気はあるし、ひかるの決意に同意したいわ」
「え?じゃあなんでしてくれないのよ!!」
「それじゃああなた、ついさっきレストランでした話、覚えてる?」
「レストランで?」
眉をひそめて考え込むひかるに、葵がこれまた眉をひそめてにらみつける。
「これは私たちだけの秘密でしょ!!感極まったからって、なに街中でそんなこと話してるのよ。レストランでも言ったけど、あなた声が大きいの!!」
「あああ!!・・・そうでした・・・」
両手で口を覆ってふたをするひかるの反応に4人は思わず吹き出し、それから次に5人みんなで大笑いをした。




