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言葉というものは

「で、こんなとこまで連れてきてなんなの?」


ただでさえ講義までサボらせて、非常に不愉快だ。

講義はタダじゃないのよ!


「そんなに不機嫌になるなよ。っつーか、そんな性格だったのか」

「無理矢理連れてこられたんだから不機嫌にもなるわ。それに性格云々はそっくりそのまま返す」

「なんだ、あんたも幻想に捕らわれてたクチか」

「赤の他人視点よ。猫を何匹かぶっているんだか」

《話がずれてるわよ》


おっと、ついムキになっちゃった。

けどっ元々の原因は目の前にいる奴だ!

あーあ、好きな授業だったのに。


「…る……かった……」

「はぁ?」

「無理に連れてきて悪、かった」


随分ちっさな声と片言喋りで謝ってきて、正直に拍子抜けしてしまった。




「…………もういいよ」


もうこういう状況になってしまったのならば、仕方ない。

用もなくこんなところに連れ込むなんてしないだろう。

まあ、アレだったら遠慮なく返り討ちする気満々だけどね。


「で、何の用?」

「聞きたいことがある」






※※※※※






『消えろ』と言われた幽霊は一体どこへ行くのか、知ってるか?






「………なぜそんなことを聞くの?」

「ちょっと思うことがあっただけだ」


詳しく話す気はない、と。

おいおい、人に頼んでおきながらそっちは秘密かい。


大げさに不審そうな顔をしてみたら、流石に居たたまれなくなったみたい。


「『消えろ』と言った幽霊が、また現れたり、二度と見ることがなくなることがある。今まではちっとも気にしてなかった。でも――――」

「でも?」

「………宮入が、幽霊と普通に話しているのをみて、ふと思っただけだ」

「なるほどね」


いやはやしかし

見られてないと思っていたんだけど、見られてたか〜。






…………消えろ、か。

彼彼女らは、時としてかなりしつこいときがある。

それはこの世への生に対する未練が深ければ深いほど。

ちょっと聞いて欲しいぐらいなら、まだいい方で、中には恨み辛みを投げ掛けて死に引きずり込もうとしてくることもある。

そういうのって、結構厄介なのよね。

絡まれてるったって、他の人に見えるわけでもないし。

表情から鑑みるに、随分苦労したみたいね。

あまり彼らを好ましくは思ってないのかな。

私なんかは、あの(・・)姉がいたからさほど苦労はしなかったけど………




「『言霊(ことだま)』って知ってる?」






※※※※※






「言葉には力があるって意味だろ?」

「うん、そう」


言葉の一つ一つには意味があり、時として人を傷つけたり慰めたりする大変凄いものなのだ。

特に、力のある人の言葉には本当に凄いものがある。

声に乗せられる言葉には重みがあり、気圧されたり畏縮してしまったり。

その最たるが霊能力者だったりする。

彼らは言葉の意味を深く理解しているからだ。

エクソシストとかお坊さんがお祈りの言葉やら払いの言葉やら、それで本当に効果があるのか?って言われるけれど、ある人にはあるんです。

心を込めて、その言葉の意味を理解していれば、ね。

言葉って、本当に凄いのよ?


「言葉が凄いっつーのはもうわかったから」

「………でも言葉は、相手がいて意味を汲み取ってくれなければただの音でしょう?」


音は空気の振動だ。

そして人間は肉体という器がある。

器がある私たち生きている人間はどんな言葉を聞かされても器である程度緩和されるため、言葉の意味はあまり届かずに精神にのみ影響を及ぼす。


つまり、肉体を持たないモノは精神・魂に直接影響を与えられる。


「前提として、肉体と魂を繋ぐのは精神っていう考えの元としてるけど」

「あながち、間違っているとは思えないがな」


彼は大きくため息をついて、私はそれがどんな意味なのか問うことをしないようにと決めた。





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