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4.親衛子爵騎士団の初陣

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 エル・ラ・ビュア城を攻め立てるは、死を物ともしない狂気の軍勢。


 エルフは、なまじ知恵があるため対処を見誤った。魔法の雨に足を竦ませ、天使の姿に恐怖を抱かせる。その予定が狂わされたからだ。


 散り散りとなりながらも、散漫ではなく集中的な城内への侵攻に対し、取り囲み各個撃破を試みるレイナルト侯爵軍のエルフ兵たち。混乱する兵たちは何とか纏まりを保っている。


 そんな中、城への距離を詰める者たちがあった。


 鋭敏な感覚を持ち、大いなる力の爪先としての意志しか持たぬ天使。その天使のみが気付いた。


 距離が縮まり、接近してくる一団。騎乗し、一本の矢のように直線に並ぶ者たち。混乱の中を物ともせず突き進む登場に、城のエルフは気づいていない。


 たとえエル・ラ・ビュア城が堅牢であっても、防衛が機能していなければどうにもならない。


 それに向かい合う天使たちの掌が光り輝き、光弾が放たれる。


 天使たちの先手を受け、一団が強い光に照らされる。


――アストロブ家の紋章


 その掲げる軍旗には、はっきりと一団の所属が記されていた。


 次の瞬間、先頭の騎乗騎士が光弾をまともに受け、弾け飛んだ。後ろの騎士たちはその血しぶきを浴びて尚、突撃を続ける。


 その動きに迷いはない。さらに速度を上げて走るアストロブ騎士の一団。


 その進撃は目標へと一直線である。エル・ラ・ビュア城の壁の前に反り立つ土の階段。それを用いて、ひとっ飛びに城内に入り込む算段であるのは明白であった。


 しかし、天使以外にそれに対処できるエルフはいなかった。


 城壁の上だけでなく、城壁の窓にまで土の橋は伸びている。城門にも敵兵が集まり出し、今にも乗り込まんとしている。


 目の前に息絶えた死体から、別の個体へと天使が標的を変える。空中から爆撃する天使を無視するかのように、自治団体員(ギルドメンバー)たちは城内へと向かう。


 目標は一つだ。


 天使たちの召喚者。


 城内外での混戦を余所に、ガリュアス正規軍のほとんどの者はそのあまりに向う見ずな戦い方を眺め、弓兵や魔法兵は天使たちの注意を逸らせるのに精いっぱいであった。


「我らも向かうぞ!」


 ガリュアス軍人たちの中から声が出る。


「ひとまずは、自治団体(ギルド)の魔導師たちを援護だ!」


 走り出す兵士に続けとばかりに奮い立った者たちの前で、天使の射程に入った兵士が存在そのものを浄化される。


 絶句し足を止めるも遅く、次の光弾が向かってくる。


 自治団体(ギルド)と親衛子爵の騎士団が試みている事は、決してただの無謀ではなかった。実際に城内にまで辿り着いた者たちは多かった。一切の恐怖を振り払い、魔導師たちの戦列を押し上げるため肉の囮として己を差し出せば不可能ではない。


 そのためこの戦いが証明するものは、魔法が生死の大部分を決めるという事。しかし、肉弾戦に持ち込もうとする者が多く弾幕を掻い潜り、隙あらば首を取られるという確かな恐怖は、後方での魔法の撃ち合いに慣れた者には重くのしかかる。


 城という魔法からの壁が、接近する敵への射線を遮る枷となった時、動揺から見誤りが生じる。圧倒的有利な状況が逆転し、いつどこから現れるかも知れない者へと注意が逸れる。

 その隙にも自治団体(ギルド)の魔導師は足を進め、魔法弾の撃ち合いの距離を縮めてくる。


 ある者は、城内に火が回ったのを消化しようとして後ろから剣で刺されて息絶えた。ある者は城内から追い出され、降り注ぐ魔法の氷塊に頭蓋を砕かれた。


 魔法も剣も同じだ。当たれば死ぬ。

 当然のことをエルフたちに思い出させた。


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