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二つの世界を救う者達  作者: こんたろう
第一幕 東の勇者
6/37

魔法

ドジっこ職員は記入用紙をアレスに手渡し、ギルドの登録に必要な事項の記入を促す。


といっても、ギルドの名前とギルドに所属するメンバーぐらいしか記入するところはない。


ギルド名を何にするか逡巡した後、神話の生物である【ライオン】をギルド名として登録する。


このギルド登録を行うことにより、一人につき一枚のギルドカードをもらえることができる。


ギルドカードには、所属しているギルド名・名前・ギルドレベル・魔法レベルが刻まれている。


ギルドレベルはそのギルド全体としての強さを示す指標となっている。


ギルドレベルは1〜10の間となっており、10が最も高い数字である。


しかしベテランギルドで4〜5、超上級ギルドで6〜7ぐらいのレベルが一般的である。


主に依頼された案件をこなした数やその依頼の難易度によって、ギルドが適していると思われるレベルに設定する。


魔法レベルは各属性ごとに使える魔法レベルを示しており、このレベル感もギルドレベルと同様である。


この魔法レベルを計測する機械はないため、ギルド職員による目視によりギルド職員が判断し、魔法レベルを設定する。


このギルドレベルや魔法レベルが高いことにより、受けられる依頼と報酬が異なるため、各ギルドは競ってレベルを上げている。


「ギルド名はライオン、と。アレスさん、今回魔法の測定はどうします?やりますか?」


ドジっこ職員に尋ねられ、アレスは一瞬考え、


「うーん、お願いしようかな。最近、計ってなかったからレベルが上がってるかもしれないし。」


(・・・俺の魔法レベルの高さが世間に広まれば、有能なやつが集まるかもしれないしね。)


「では、建物の奥の扉を抜けて、訓練場で魔法レベルの測定を行いますね。こちらへどうぞ!」


ドジっこ職員に案内され、訓練場に入る。


そこはただの広場であり、鉄製の鎧がぽつんと置いてあるただの空間だった。


「ねぇ、アレス。私たち魔法なんてまだ使えないわよ?」


ユフィはそうアレスに尋ねた。


「あぁ。そんなのはまだ使えなくて当たり前だ。今回は俺だけの測定にしとくよ。


ってことで、職員さん、今回はユフィとソフィの測定は無しで頼むよ。」


「承知です、では今回は魔法レベルは0としておきますね?」


「あぁ、それで構わない。」

「では、アレスさん、その鉄製の鎧に向かって、火・水・風・土・空の魔法を順番に放って下さい。」


「あぁ、分かった。鎧に近づくなよ?」


アレスはそう話すと目をつぶり精神を集中させる。


静寂が訓練場を包む。


そこにたたずんでいるユフィとソフィとドジっこ職員は皆、知らずうちに冷や汗をかいていた。


しんと静まりかえっている訓練場だが、なにかのプレッシャーを感じているのだ。


その中で精霊のイヤリングをしているソフィだけが、このプレッシャーの原因を理解している。


「・・お姉ちゃん、精霊たちがどんどん集まってきてる・・。す、すごい・・。」


普段とは比べ物にないぐらいの精霊達がぐるぐるとアレスの周りを飛んでいる。


この精霊達の色はオレンジ色であるため、火の魔法を使うのであろう。


その瞬間、アレスはかっと目を見開き、右手を前方に差し出した。


その右手からは見たこともないような大きな炎が飛び出し、鎧に命中し、爆発を起こす。


ドォオオオッン!!と大きな音を立て、訓練場を揺るがし、炎は四散する。


一瞬で周りの気温が上がりなんとも言えない高揚感が皆をつつむ。


「アレスさん・・・本当にすごい。こんな炎の魔法、今まで見たことない。」


そうドジっこ職員はひとり言をつぶやいた。


「・・・これが魔法なのね!アレス、なかなかやるじゃない。」


「あぅ。この炎にあたったら・・・。」


ユフィもソフィもそれぞれ驚嘆の声を漏らす。


鉄製の鎧はドロドロに溶けており、見るも無惨である。


「・・ふぅ。まぁ、俺は火の魔法が一番得意だからな。あとはそれほどでもないぞ?」


その他に水・風・土・空の魔法をそれぞれ使い、魔法レベルを判断してもらう。


その結果、前回の魔法レベルと変わっておらず、以下のレベルに設定された。


ギルドレベルは初期レベルの1に設定されている。


ギルド名【ライオン】

名前【アレス】

ギルドレベル【1】

魔法レベル【火:8 水:7 土:7 風:7 空:6】


ギルド名【ライオン】

名前【ユフィ】

ギルドレベル【1】

魔法レベル【火:0 水:0 土:0 風:0 空:0】


ギルド名【ライオン】

名前【ソフィ】

ギルドレベル【1】

魔法レベル【火:0 水:0 土:0 風:0 空:0】


上記のギルドカードをそれぞれ作成してもらい、ドジっこ職員からそれぞれ自分のカードをもらう。


「はい、これがギルドカードになります。身分証明に使えますので、無くしたりしないで下さいね?」


「うん、ありがとう。」


アレスはドジっこ職員から3枚のギルドカードをもらい、ユフィとソフィにそれぞれのカードを渡す。


「はい、これがユフィの分。」


「うん、ありがとー。」


「こっちがソフィの分。」


「あ、ありがとうございます。」


ユフィとソフィはもらったギルドカードをまじまじと見つめている。


そして、どことなく嬉しそうな表情をしている。


「どうした?そんな嬉しそうな顔をして?」


「今まで私たちに身分なんてものはなかったから。初めて自分が認められたような気がするの・・」


「・・・そうか。」


それを聞きアレスは表情を曇らせる。


無理もない。魔族と人間のハーフは忌み嫌われる存在なのだ。


魔族からも、人間からも。


ユフィとソフィの今までの暮らしを聞いていないが、物心つく頃からずっとそうだったのであろう。


それを自分から聞こうとは思わない。


大事なのはどう生きてきたかではなく、これからどう生きるかだとアレスは考えているからだ。


「この【ライオン】がこれからのお前達の居場所だ。」


「・・ありがと。でも、そんな恥ずかしい台詞よく言えるわね。」


「うるせー、でもな、これからこの【ライオン】はどんどん有名になっていく。勿論ユフィとソフィの名も知れ渡る。2年後には、この国の誰もがお前達のことを認めているようになっているさ。」


「ほんとに?」


「まあな。楽しみにしておけよ。」


「楽しみにしてるわ。でも・・その【ライオン】っていうネーミングセンスなんとかならないの?」


「え、かっこよくないか?強そうだし。ソフィはどう思う?」


「・・わ、わたしもイマイチだと思います。」


「うっ・・。次からは相談します・・。」


アレスは肩を落とし、しょんぼりする。


「アレス、あんた、意外にセンスないわね。」


「う、うるさい。と、とりあえずいくぞ!」


そうユフィとソフィに声をかけ、ギルドから出て行こうとすると、突然横から現れた人物がアレスの前で土下座をしている。


土下座をしているため顔は見えないが、体格がかなり良い若い男に見える。その男が突然大きな声で叫びだした。


「キ、キング!俺の師匠になってくださいッス!」


・・・アレスは無言でそっとユフィとソフィの手をひき、その男を華麗にスルーする。


「ソフィ、世の中には変な人がたくさんいるから気をつけるんだよ?」


「は、はい、気をつけます。」


「さ、行こっ。」


3人はその男の横を通りすぎようとすると、その男はアレスの足にひしとすがりつく。


「キ、キング!そんな、ご無体な!」


「・・色々聞きたいことがあるが、なぜお前は俺の足にへばりついているんだ?」


「俺、物陰からずっとキングのこと見てたッス!超かっこいいし、魔法とかすげーの見て、そんとき俺のハートにビビーっと来たんスよ!運命ッス!」


「ソフィ、いいか?これが変態ってやつだよ?目を合わせたら変態が移るから気をつけてね?」


「は、はい。これが変態さんなんですね。」


心優しいソフィの変態さんへの哀れむ目が痛い。俺なら死ねる。


「俺変態じゃないッスよ!マジでしびれたんスよ!キング、俺の師匠になってください!」


「・・分かった、分かった。次、なんで俺がキングなんだ?」


「ギルドの名前も【ライオン】ていう超シブい名前つけてるし、ライオンのリーダーならキングしかないと思ったッス!」


「・・・キミ、採用!」


「ちょ、アレス!そんな適当に決めちゃっていいの?!!この人、変態なんだよ!??」


そうユフィは慌ててアレスを止めようとする。


「【ライオン】のセンスが分かる奴に悪い奴はいない。」


そう、アレスは断言してウンウンと頷いている。


「キ、キングー!!!!一生、ついていきますッス!」


目を輝かしてその変態はアレスを見つめてくる。上目遣いで。


はぁ、とユフィはため息をつく。



その場のノリで仲間にすることを決めたように装っているが、実際はそうではない。


アレスはギルドに入ったときから、その男に気づいていた。


そして、以前にギルドに来たときもその男はギルドにいたのだ。


やけに体格のいい若い男がギラついた目つきで周りを見渡しているのを見逃すアレスではない。


その男は優秀なギルドメンバーと師匠になる人物をずっと探していたとアレスは判断した。


そして、土下座という普通の男では出来ないことをさらっと行動できる行動力も評価していた。


ユフィ、ソフィを武闘派にするつもりはなく、アレスも武闘派ではない。


そのため、少なくとも一人は最前線で体を張れる男が欲しかったのだ。


「んで、なんて名前なんだ?」


「俺はレインと言います!魔法はダメッスけど、体力には自信あるッス!」


「よろしくレイン。俺はアレス、こっちのうるさそうなのがユフィ、こっちのかわいいのがソフィ。見て分かると思うけど二人は姉妹で、ユフィがお姉ちゃんだ。」


「な、だれがうるさそうよ!?フン、ユフィよ、よろしく。」


不満気だが、ユフィは簡単に挨拶する。


「ソ、ソフィと言います、あぅ、よ、よろしくお願いします。」


まだ変態ことレインのことが怖いのか、怯えながらソフィも挨拶する。


「ヘイ、ユフィとソフィの姉御!よろしくお願いしまス!!」


こうしてギルド【ライオン】のメンバーは4人となった。



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