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二つの世界を救う者達  作者: こんたろう
第一幕 東の勇者
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旅立5


「へぇ。ここをよく見つけたね。」


そこには金色に輝く髪をツンツンにセットしている少年の姿があった。両手にべったりと整髪剤をつけて、一生懸命に髪を逆立ててセットしているところだった。その後ろには多くの魔物が控えていた。その数は20以上はいると思われる。


「あんた・・魔族?」


魔族の身体的な特徴の一つとして、瞳の色が紅であることが挙げられる。その少年の瞳の色もその特徴を現していた。


「そっちのおっさんは人間で、そっちの女の子たちは魔族・・いや、ハーフかな。あ、もしかしてアレスとリリスの知り合い?なんでここに来たの?」


彼の大きな瞳はキラキラと輝いている。思いがけずオモチャを発見した子どものように。


「質問しているのはこっちよ!あんたの名前を教えなさいよ!」


ユフィは虚勢を張るように、知らず知らずのうちに声を張り上げていた。


「あーごめんごめん。僕の名前はギルドレッド、僕のこと知ってる?」


彼の名はギルドレッド。魔族の王であるルシウスの弟であるヴェルドの一派であり、以前アレスと死闘を繰り広げた少年である。


「っつ!??」


「その反応だと僕のこと知ってるみたいだね!やっぱりアレスとリリスの知り合いなのかな?」


「そ、そうよ。なんか文句あるのっ!?」


ずい、と一歩前に出るユフィ。


(ユフィンの姉御、やばいっスよ!なんでそんな喧嘩腰なんスか!??)

(分かんないわよ!口を開くと、勝手に言葉が出て行くんだもん!)


慌ててユフィに小声で諭すレインが焦るのも無理はない。ギルドレッドのことはアレスやリリスに聞かされていた。ギルドレッドの性格は温厚ではあるが、とても好戦的である、と。そして、その実力は魔族の中でも屈指であり、今の三人が束でかかっても大抵太刀打ちできないであろうことも。


「いや、全然文句ないけど。ふ〜ん、アレスとリリスはいないの?」


「今回はアレスとリリスとは、別行動よ。」


「そ〜なんだ、良かったぁ。リリスは本当に苦手なんだよ・・。んじゃ、なんでこんなとこにいるの?」


「ギルドの依頼よ、この精霊の森で突然、魔物が暴れているって聞いて・・。それはあんたの仕業なの?」


「暴れているつもりはないんだけどな・・。あぁ、何人か人間がやってきたから、帰ってもらったけど。この場所の重要性を考えれば、しょーがないことでしょ?」


「この場所の・・・重要性?」


「うん、って、もしかしてこの場所がどんな意味があるか知らないの?」


「なによ、知らないものは知らないのよ!教えなさいよ!」


「そっか〜知らないんだ。そうだよね、ほとんどの人間にとって、この場所は必要ないよね。ヒントをあげよう!この場所の意味は石碑に刻まれている通りだよ。」


ギルドレッドがズビっと指差した先にあるのは、ユフィたちの足下にある石碑である。

その石碑に書かれてある文章は【力を示せ、さすれば汝に風の秘法を授けん】である。


「風の秘法・・・?」


「ヒントはこれぐらいにして・・・。そろそろ僕と遊んでもらおうかな?」


そう言って、最後に自慢の髪に櫛を通して、ビシッと髪型を整える。


「ま、待って下さい!私たちは、戦うつもりはありません。」


このまま戦闘になりそうな流れをソフィが必至に止めようとする。


「えーダメだよー。一応、僕の仕事で、ここに近づく人間たちは排除することになってるんだから。最初は君たちが魔族なのかな?と思って見過ごしていたけど。ていうか、暇だし!」


「す、すぐ、に、か、帰りますか、らぁ・・・!?」


ソフィの言葉が次第に途切れ途切れになっていく。その瞳にはじわりと涙が滲む。精霊のイヤリングを着けているソフィには分かってしまう。暴力的な密度の【風】の精霊達がギルドレッドに集まりつつあることが。その密度は、今までに見たことがない程だ。ソフィは初めて自分の身に死が近づいていることを肌で感じていた。


「だいじょうぶ、殺したりはしないから。見たところ、そっちの金髪で黒のローブの女の子は【火】、銀髪で銀のローブの女の子は【水】にすごく適性があるみたいだから、戦えるでしょ?そっちのおっさんは知らないけど。」


「ちょっと、一旦落ち着こうッス!」


「そーそー知ってるかな?僕の得意な属性が何だったか?」


そう言って、ギルドレッドが何気ない動作で、ふと手を振り払った。


「来ます!」


ソフィが叫んだ数瞬後、鋭い風の刃が三人を切り裂いた。

舞い上がった土ぼこりが収まるにつれて、三人の姿が徐々に浮かび上がる。


「そうこなくちゃ!」


ギルドレッドは喜色を浮かべた。


三人ともほぼ無傷であった。

ユフィは【火】の爆風で自分を吹っ飛ばすことにより、回避。

ソフィは【水】の魔法で作り上げた厚い氷により、防御。

レインは己の大剣を地面に突き刺し、その後ろに隠れて、回避・・しきれず。


「い、いてぇええ!」


体剣に隠れきれなかったレインのお尻の先が風の刃により刻まれていた。幸い、傷は1cmにも満たず、動くのに支障はない。


「やるしかないわ!」


痛がるレインを無視して、ユフィとソフィは己の体に、自分が出しうる最大の魔力を集中させる。ユフィの頭には逃げることがよぎったが、すぐにその考えは捨てた。ギルドレッドの得意な属性は【風】であり、【風】の魔法の速度は最も速い。三人がバラバラに逃げたとしても、背を見せた瞬間に、風の刃で全員が切り裂かれることが用意に想像できたからだ。それならば、正面から戦ったほうがまだ勝機がある。それが例え、万に一つもないとしても。


「後ろの魔物たちには手を出させないからさ。あそぼう!」


言葉を発したあと、ギルドレッドの姿が消えた。








圧倒的だった。三人は成す術が無かった。


ギルドレッドの攻撃方法は単純なものだ。【風】の魔法で自分の体を動かし、その握りこぶしで殴る。それだけだ。


しかし、その移動速度は尋常ならざるものであった。ギルドレッドの姿は線でしか捉えられない。


ユフィやソフィの全力の魔法もすべてギルドレッドの【風】にかき消されてしまう。


レインが繰り出す剣も勿論当たるに適わず、全て空を切り裂くことになった。


ものの3分も持たず、三人は地に打ち据えられていた。




「ふ〜ん、まぁこんなもんか。」


つまらなさそうに息を吐くギルドレッド。


この精霊の森では【風】の属性の力が最大限に発揮され、その他の属性の力は半分以下に制限される。そもそもの地力に大きな差がある上に、この地で戦えば三人が負けてしまうことは明らかだった。



「もういいや、さよなら」


急につまらなくおもちゃを投げ捨てる時の子どものように、ギルドレッドは大きく下から右手を振り払った。


凄まじい音ともに、地面の土を削りながら、特大の【風】の魔法がレイン達に目がけて突き進んできた。


(や、やられる・・・・)


魔法が直撃すると確信し、目を瞑ったレイン。


ズォオオン!!というけたたましい爆音が広場一帯に響いた。




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