心配
ゆっくりと目を開けたレインの視界に映るのは、自分の胸元あたりに金髪のツインテールがゆらゆらと動いている姿だった。
なじみのあるブロンドのツインテールをしている少女がユフィであることに気づいたのは、数瞬の後であった。
「え・・、あっ!?ユ、ユフィの姉御・・なんでこんなとこにっ・・」
「うるさいうるさい!」
そう言いながらユフィは下を向きながら、レインの腹部をポコポコと殴っていた。
「い、いたた!いや、痛くないッスけど!やめてください姉御!」
しばらくした後、はぁはぁと肩で息をしていたユフィはゆっくりと上を向き、レインの方に目を向けた。
ユフィはすぅ〜と息を思い切り吸い込んだ。
「このバカ!おたんこなす!筋肉!あ、あほ!」
そう叫んだユフィの表情は怒ったような、そして少し心配そうなものだった。
「ふん!」
ユフィは鼻をならして、レインにくるりと背を向け街の方に歩いていった。
レインは草原にポツンと取り残された。
そのままレインは草原に背中から倒れ込み、空を見上げた。
澄み渡る青空に浮かぶいくつかの雲が、左から右へとゆっくり動いていく。
穏やかな風が草原を走り抜け、レインの鼻孔に青々とした植物の香りを届ける。
「あ、姉さん、どこいってたんですか?」
宿屋でくつろいでいたソフィ達の部屋のドアが開かれ、ユフィが不機嫌そうな顔をしながら入って来た。
「ちょっと散歩よ」
「散歩・・ですか。レインさんの様子はどうでした?大丈夫、でした?」
「な、なんのこと?知らないわ!あんな奴!」
「はいはい、そうですよね〜」
ユフィはなんだかんだ言って、本当は面倒見がとても良いことをソフィは良く知っている。それこそ、レインのことで一番心配しているのはユフィだろう。ただ、ユフィは心配しているということを相手に伝えることが苦手なだけなのだ。
ユフィはそのままベッドに入り、毛布を頭からかぶってしまった。
夜が開け、次の日もアレス達は贔屓にしている料理店で昼食をとっていた。レインがアレス達の前に現れたのは、その昼食が終わりかけのときだった。
比較的大柄なレインがアレス達のテーブルに近づいてくることに、最初にアレスとリリスが気がつき、その後にユフィとソフィも気がついた。テーブルのすぐ前まで来ると、レインは真っすぐな声でアレスに話しかけた。
「不肖、レインは恥ずかしながら戻って参りました」
そう言って赤くなった頬をポリポリと掻きながらレインは帰って来た。
「その・・昨日はすいませんでした、色々考えたんですけど、俺はやっぱり【ライオン】に残ります。いや、残らせて下さい!」
そう言って、アレス達に思いっきり頭を下げた。
「あの・・俺・・」
昨日必死に考えた事を言葉に紡ごうとするが、うまく続けることができなかった。
「さっきの言葉だけで十分だよ。これからもよろしく頼むぜ、レイン」
アレスは立ち上がり、嬉しそうな表情でレインの肩をぽんっと叩いた。
「・・・ッス!」
はっと顔を上げたレインに舞い降りたのは、天使の声だった。
「おかえり、レインさん」
ソフィは慈愛に満ちあふれた笑顔でレインを迎えた。
「ソフィの姉御、ありがとうございます。そして、ユフィの姉御、昨日はお世話かけました!」
デザートを口にせっせと運んでいたユフィはレインの方に一瞬目をやると、ふんっと鼻をならしてそっぽを向いてしまった。
その姿をみてリリスはくすっと微笑んだ。




