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二つの世界を救う者達  作者: こんたろう
第一幕 東の勇者
22/37

激闘


人間と魔物との戦いは、激しさを増した。


人間が築いた陣は辛うじて形を成している程度で、人間と魔物とが完全に入り乱れて戦っていた。・・・ある一帯を除いては。


「燃やしつくせ!!!」


物騒な言葉と共にユフィの手のひらから放たれた火の魔法は、言葉どおり周辺にいる魔物たちを燃やしつくした。ユフィ達の周りだけぽっかりと穴があいたように、魔物が存在しない空間ができあがっている。


最前線で戦っている軍人にとっては、思いもよらない安全地帯となっていた。そのため、重傷を負った者や、魔力が枯渇してしまったものが多く集まってきた。


「ソフィ、あんたの魔力はどれくらい残ってる?」


「私は節約してるから、まだ8割程度はありますよ。姉さんは?」


「私は、半分切っちゃったくらいかも・・・。火の魔法は効率悪いわね。」


「じゃ、ここからは私が前に出ますから、姉さんはフォローに回って下さいね?」


「分かったわ!バシっと決めちゃいなさい!」


コクと頷くと、トテテ・・とソフィは魔物の方へと向かい、両手を上空へと差し出した。そしてむむむ・・と可愛らしい声で唸った後、その両手をゆっくりと振り下ろした。


すると、尖った氷の固まりが空中に数百と出現し、人間と魔物とが混戦状態になっている一帯目がけて一斉に降り注いだ。人間も魔物も、ただならぬ雰囲気に気付き、はっと空を見上げた時にはもう遅い、魔物の多くは氷が体を突き抜けて絶命してしまっていた。


今までの喧騒とは打って変わり、静寂が一帯を包み込んだ。ソフィ達の周りに退避していた軍人の一人がゴクリとつばを飲み込んだのが分かるくらいに。しかし、その3秒後には、また喧騒が戻っていた。それは歓声となって。


「す、すげーーよ嬢ちゃん!!!!」

「助かったぜ!!!」

「ぬれたぜ!!!!」


様々な賞賛の声をかけられたソフィは、顔を背けて恥ずかしそうにしていた。誉められることになれていないのだ。


「ソフィ、よくやったわ!じゃんじゃんやっちゃいなさい!」


「分かりました、姉さん。」






一方、その頃レインは必死にアレスの言いつけを守っていた。アレスの言いつけは「ユフィとソフィの周囲5mに敵を近づけるな。周囲5mに近づけたら、俺がお前を殺す。二人に傷一つついたら・・もっと殺す。」


こんな感じだったハズだ、多分。これを愚直に守ろうとしていた。そして今のところ、見事に守ることが出来ていた。何度か、5mのラインを越えられそうになったこともあったが、レインはこの戦いの最中に新しく編み出したこの技のお陰で何とか乗り切ることができたのだ。


「俺流奥義、『空撃』!!」


そう叫びながらレインは大剣を振り下ろすと、そこから見えない斬撃が飛び出して、それが遠く離れた敵に命中し、その敵を切り裂いた。


(これ、マジの奥義じゃないッスか?!すげーかっけーー!!)


新しく編み出した技の原理は分からずとも、できるもんはできる、で納得するのが脳筋のいいところである。


(どんどんやっつけて、キングに誉めてもらうッス!!)


そうして、レインは次々と迫り来る敵に新奥義を放っていった。





アレス達の活躍があったにも関わらず、少なくない軍人や冒険者が戦闘不能となっていた。


しかし、それ以上に魔物側は甚大な被害を被っていた。戦いが始まって1時間程度で、既に3割以上の戦力を失っていた。それなのに、魔物達の勢いは一向に衰えない。


(こいつらを束ねている指揮官がいるはずだ・・・。)


強敵をあらかた屠ったアレスは、次なる目標を探しに魔物達の合間を縫って、敵の本陣へと突き進んでいった。


魔物の本陣へと向かう際も敵から幾つもの攻撃をされるが、それは受け流すことに徹していた。奥へ奥へと向う程、魔力の霧が濃くなっていくのが分かる。


四天王(・・・)クラス・・とまではいかないが、それに近いレベルまで達しているな、こりゃ。)


そして、ついにアレスはそこにたどり着いた。


「へぇ。こんなとこにまでやってくる人間がいるんだ、驚きだよ。」


アレスはその声のした方向に目をやると、大きな10m程の岩の上に座っている人を発見した。その人物は足をぷらぷらと虚空に投げ出し、膝の上に頬杖をつきながらこちらを見つめていた。


「まあな。興味本位で寄らせてもらったよ。」


「興味本位で、この魔族の僕がいるところまでやってくるなんて・・それこそ興味深いよ。名前を聞いてもいいかい?」


「俺の名前はアレス。おたくの名前は?」


「僕の名前はギルドレッド。せっかく来てもらったんだし、ちょっと遊んでもらおうかな。」


そう言って、ギルドレッドは大岩からひょいっと飛んで、地面にふわっと着地した。


「後ろの連中のこともあるし、そんな悠長な時間はないんだけど・・」


「あぁ、大丈夫だよ、きっと。イーストシティって名前だっけ?あそこの城壁はけっこ丈夫そうだし、この魔物達の軍勢じゃあの街は落とせないよ。それくらい分かってるでしょ?」


「まあな。それより、やけに素直に話してくれるじゃないか。」


「僕はこの戦争乗り気じゃないからね・・。でも、上の言うことには一応従わないとね。」


そう言ってギルドレッドは、人差し指を上に向けて、力ない笑顔を見せた。


「上ってのは、ルシウス(・・・・)か?それともヴェルド(・・・・)か?」


「・・・それは今から戦って、僕に勝ったら教えてあげるよ。」


「分かったよ、お手柔らかに頼むぜ。こっちはずっと戦ってきて披露困憊なんだ。」


「なに言ってんだよ。かすり傷ひとつない、息ひとつ切れてない、それなのによく言うよ。」


そんな軽口を叩きながらも、油断なくお互いの間合いを図りながら、二人は徐々に距離を縮める。


「んじゃ…行くよっ!!!」


そう言って、目にも止らぬ速さでそれこそ砲弾のようにギルドレッドはアレスに突っ込んできた。


(は、速いっ!か、躱せない)


アレスはバックステップをしながら、腰に吊るした剣をとり、その攻撃を受けた。


「ガギン!!!!」


大きな鈍い金属音が周囲に木霊する。


ギルドレッドとアレスの戦いの火蓋が切って落とされた。


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