第27話
第27話
静寂の中、アストレウスの声が続く。
「先に言っておくが、やり方はお前に任せる。我々は基本的に干渉できない。指示も強制もできない。できるのは選択肢を示すことだけだ。邪神の欠片をどう集めるか、どう扱うか、どう滅するか、すべてお前が決めろ」
ルシアンは短く頷いた。
「問題ありません」
「そしてもう一つ。私は善神の代表としてここに顕現している。他の神々からわずかに力を分けてもらっている状態だ。この場と条件が揃っている今だけ、お前に干渉できる」
わずかに間を置く。
「だからこそ、お前に力を与えることができる。望む力を言え」
「少しだけ、考える時間をください」
「いいだろう」
ルシアンは邪神に対して、どのような力で対抗するべきか考えた。
そして。
「……あらゆる力を取り込めるものを。魔力でも、技でも、性質でもいい。触れたものを吸収して、自分の力に変える」
短い沈黙。
「理に適っている。だが制限はある」
声がわずかに重くなる。
「己の器を超える格上の存在には通用しない。干渉できないものは取り込めない」
一拍。
「……あの魔族、ゼルキスのような存在には、今のお前では届かない」
その名が出た瞬間、空気がわずかに張り詰める。
ルシアンは動かない。
「……分かっています」
事実として受け入れる。
「よろしい」
次の瞬間、見えない力が流れ込む。内側の構造が静かに変わる。魔力の流れが広がり、“受け取る器”が形を持つ。
やがて収束する。
「これでお前は、取り込み、変換する力を得た」
ルシアンは自分の手を見る。変化は見えない。だが確かに“掴める”。
アストレウスは続ける。
「加えて――これは私からの加護だ」
静かに告げられる。
「秩序の加護。暴走する力を抑え、流れを整える。ほんの僅かだが、お前の出力と安定性は向上する」
ルシアンの内側で、魔力の流れがわずかに変わる。
荒れていた流れが、一本の軸を持つ。
劇的ではない。
だが確実に“扱いやすく”なる。
「……助かります」
短い言葉。
だが本音だった。
「だが、それでも足りない。この先は神話の領域だ」
断言だった。
「この王国の北方、ドワーフの山岳地帯の近くに、ここに似た空間が存在する。祭壇のような場所だ。そこにも神話の環境が残っている」
「そこには消えかけた三柱の神がいる。最後の力をお前に託すことに同意している」
ルシアンの目がわずかに鋭くなる。
「そこへ行けば、さらに力を得られる」
「……分かりました」
迷いはない。
「行きます」
それで十分だった。
アストレウスの気配が薄れていく。
「時間の調整も終わる。ここから先はお前一人だ。選び続けろ」
その言葉を最後に、存在は消えた。
空間が揺らぎ、現実へと戻る。
ルシアンは静かに立っていた。
新たな力と、次の目的地を得て。




