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果てなき世界  作者: 影川明空人
第4章 学園1年目 武闘大会編
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第157話

第157話


 初日を終えた夜。

 昼間の喧騒が嘘のように、訓練場は静かだった。夜風がわずかに草を揺らし、遠くでまだ数人の生徒が訓練を続けているのが見える。


 レオンは剣を抜いた。


 対するルシアンは――剣を地面に置いた。


「……剣、使わないのか?」


 レオンが少し驚いたように言う。


「ええ」


 ルシアンは静かに答える。


「リオルドは徒手空拳です」


「なら、こちらもそれを想定すべきでしょう」


 ルシアンが軽く構える。


 拳を前に出すでもなく、自然体に近い姿勢。だが隙はまったくない。


 レオンが小さく息を吐く。


「……行くぞ」


「ええ」


 レオンが踏み込んだ。


 剣が閃く。


 速い。


 だがルシアンは最小限の動きで回避する。身体を半歩ずらすだけで剣が空を切る。


 レオンが追う。


 二撃目。


 三撃目。


 ルシアンはすべてを避ける。


 そして――


 軽く腕を払った。


 レオンの体勢が崩れる。


「……そこです」


 ルシアンが静かに言う。


 レオンが後退する。


「やっぱり、近い距離は厄介だな」


「ええ」


 ルシアンが答える。


「リオルドはこの距離を一瞬で詰めてきます」


 再び構える。


 レオンが踏み込む。


 今度はフェイントを入れる。


 剣を振るうと見せて、すぐに軌道を変える。


 ルシアンが回避する。


 だが――


 わずかに反応が遅れる。


(……)


 ルシアンの目が細くなる。


 レオンの動きが鋭くなっていた。


 今日の三試合。


 一回戦は余裕。


 二回戦は技術戦。


 三回戦は激戦。


 そのすべてがレオンの動きに反映されていた。


 レオンが踏み込む。


 速い連撃。


 ルシアンが避ける。


 だが、距離が詰まる。


 ルシアンが踏み込む。


 拳。


 レオンがとっさに剣で防ぐ。


 衝撃。


 ルシアンの拳は重い。


 レオンが後退する。


 だがすぐに体勢を整える。


「……今の」


 ルシアンが言う。


「悪くありません」


 レオンが息を吐く。


「……少しは成長してるか?」


「ええ」


 ルシアンは淡々と答える。


「今日の戦いを経て、判断が速くなっています」


 再び打ち合い。


 レオンが距離を意識する。


 踏み込みすぎない。


 相手の間合いに入らない。


 ルシアンが踏み込む。


 拳が迫る。


 レオンが後退しながら剣を振るう。


 牽制。


 ルシアンが回避。


 レオンがさらに距離を取る。


(……いいですね)


 ルシアンは内心で思う。


 リオルド対策としては正しい。


 無理に近距離に付き合わない。


 距離管理を意識している。


 レオンが言う。


「やっぱり距離が重要だな」


「ええ」


 ルシアンが答える。


「近距離ではリオルドが有利です」


「あなたは距離を活かすべきです」


 レオンが頷く。


 再び打ち合い。


 今度はさらに長く続く。


 レオンが攻める。


 ルシアンが避ける。


 ルシアンが踏み込む。


 レオンが回避。


 数十合。


 レオンの動きが、徐々に鋭くなっていく。


 ルシアンが拳を突き出す。


 レオンが剣で受ける。


 すぐに反撃。


 ルシアンが避ける。


 レオンが追う。


 連撃。


 先ほどよりも速い。


 ルシアンが半歩後退する。


(……成長していますね)


 疲労があるはずだ。


 それでも動きはむしろ良くなっている。


 レオンが息を吐く。


「……勇者の力は、やっぱり使わない方がいいか?」


「ええ」


 ルシアンが答える。


「なるべく温存すべきです」


 レオンが頷く。


「リオルドに勝っても……」


「次があります」


 ルシアンが続ける。


「レティシアかテオドール」


「どちらも簡単な相手ではありません」


 レオンが苦笑する。


「……だよな」


 少し沈黙。


「使わずに勝てるかな」


 ルシアンは静かに答える。


「……難しいでしょう」


 率直だった。


「ですが、不可能ではありません」


 レオンが小さく笑う。


「厳しいな」


「事実です」


 最後の打ち合い。


 レオンが踏み込む。


 剣が閃く。


 ルシアンが避ける。


 拳。


 レオンが回避。


 さらに連撃。


 ルシアンがわずかに後退する。


 数十合。


 レオンの剣がわずかに掠める。


 ルシアンの目が細くなる。


(……いいですね)


 確実に成長していた。


 ルシアンが最後に拳を払う。


 レオンの剣が逸れる。


 体勢が崩れる。


「……ここまでにしましょう」


 レオンが息を吐く。


「……ルシアンはやっぱり強いな」


「あなたも成長しています」


 ルシアンが答える。


 レオンが空を見上げる。


「……明日だな」


「ええ」


 準々決勝。


 リオルド戦。


 ここを勝てば一年生代表が見える。


 レオンが剣を握る。


「……勝つ」


 ルシアンが小さく頷いた。


 夜の訓練は終わる。


 だが――


 明日の戦いは、さらに厳しいものになるのだった。


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