第153話
第153話
武闘大会初日。
一回戦を終えた闘技場は、先ほどよりも明らかに空気が変わっていた。敗者が去り、残ったのは実力者のみ。観客席のざわめきも、先ほどとは違う緊張を含んでいる。
レオンは掲示板に視線を向ける。
「……次、俺だな」
二回戦。
対戦相手はAクラス四位。
リヒト。
短めの金髪に、やや細身の体格。だが立ち姿には無駄がなく、剣を握る手にも迷いがない。落ち着いた雰囲気を持つ青年だった。
ルシアンは静かに観察する。歩き方、重心、視線の動き。どれも自然だった。戦闘経験がある者の動きだった。
(……悪くありませんね)
レオンも同じことを感じていた。
「……強そうだな」
リヒトが軽く笑う。
「Sクラスのレオンだろ?」
「ああ」
「正直、当たりたくなかったな」
だが、声色に怯えはない。むしろ落ち着いている。自分の実力に自信があるのだろう。
「でも、やるからには勝つつもりだ」
レオンが頷く。
「俺もだ」
二人が闘技場へ降りる。観客席がざわつく。
「Aクラス四位か……」
「そこそこ強いぞ」
「でもレオン相手だしな」
開始の合図が鳴る。
リヒトが先に動いた。
踏み込み。
速い。
剣が閃き、レオンが受ける。金属音が響くき、衝撃が腕へ伝わる。一回戦の相手とは明らかに違う重さだった。
リヒトがすぐに連撃へ移る。無駄のない剣筋。流れるような動き。レオンが捌くが、押し込まれる。
レオンは一歩下がる。だが、リヒトは間合いを離さない。距離管理が上手い。再び打ち合いになる。
数合。互角。
観客席がざわつく。
「お、いい勝負だな」
「リヒトか、やるな」
リヒトがフェイントを入れる。下からの斬撃。レオンが防ぐ。重い衝撃。続けて横薙ぎ。レオンが捌く。だが最後の一撃が頬をかすめる。
浅い傷。血が滲む。
リヒトが軽く笑う。
「やっぱり強いな」
レオンも笑う。
「そっちもな」
距離を取り、呼吸を整える。レオンは冷静だった。遠征や個別任務での経験が身体に残っている。
リヒトが再び踏み込む。今度は速い連撃。レオンは受けず、半歩ずれる。剣を流す。返しの一撃。リヒトが防ぐが体勢が崩れる。
レオンが追撃。一撃、二撃。リヒトが後退する。
観客席がざわつく。
「動き変わったな」
「さっきより鋭いぞ」
リヒトが息を吐く。
「なるほど……」
再び構える。今度は慎重に距離を測る。打ち合いが続く。互角の攻防。だが徐々にレオンが押し始める。
踏み込みが鋭い。反応も速い。リヒトの剣が弾かれ、体勢が崩れる。レオンが一気に踏み込み、剣を突き付ける。
静寂。
リヒトが息を吐く。
「……参った」
試合終了。
観客席がざわつく。
「やっぱり強いな」
「でもAクラス四位のやつもかなりやるな」
レオンが剣を下ろす。
「強かった」
リヒトが笑う。
「代表、狙ってるんだろ」
「ああ」
「頑張れよ」
リヒトが手を上げる。レオンも軽く頷く。
闘技場を降りると、ガイウスが笑った。
「いい試合だったな」
レオンが息を吐く。
「……思ったより強かった」
ルシアンが静かに言う。
「ええ。ですが、対応はできていました」
レオンが笑う。
「それならよかった」
二回戦終了。残る人数はさらに減る。試合はまだ続いているが、勝ち残る者の実力は確実に上がっていた。
そして――三回戦へ。
一年生代表の座をかけた戦いは、さらに激しさを増していくのだった。




