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ルストの栄光と『虹彩傭兵隊』

 これで主だった人物への評価は伝え終わったことになる。後に残ったのは私一人だ。皆の視線が私の方を向いた時、メイハラ中佐が言った。


「さて、エルスト・ターナー2級」

「は、はい!」

「今回の一連の事件においては、あなたにこそ解決に際して最も功績があったのは誰の目にも明らかだ。これに対して異論のある方はいらっしゃいますか?」


 皆に声をかけて意見を乞えば、即座に答えていた。

 

「異議なし」とカークさん、

「同じく」とゴアズさん、

「同じく」とバロンも同様だった、

「当然の評価でしょう」とのたまうのはパックさん、

「だろうな」とドルスが言えば、

「当然だ」とプロアも答えた。


 そして最後に、ダルムさんが意味ありげに笑いながら、核心へと進む。ダルムさんは言った。

 

「で? どんな論功行賞になるので?」


 その言葉に頷きつつメイハラ中佐が言った。


「エルスト2級の今回の功績に対してですが、軍の将校から多数の推挙と、フェンデリオル賢人会議の全会一致の採決によりある決定が下りました」


 メイハラの言葉に場がざわめく。ダルムさんも驚きの声を漏らした。

 

「まさか?」


 この状況で、軍の推挙や賢人会議の採決などというのが絡んでくる人事評価はひとつしかない。

 ワイアルド支部長は腕を組んだままじっと説明に耳を傾けていた。

 メイハラが言葉を続ける。

 

「今回、貴女(あなた)には職業傭兵として最上級の【特級】の資格が与えられる事が決定しました」


 流れるように語られたその言葉に会議室の中の全ての人々の顔が喜びと驚きに変わった。


 意味ありげに微笑むソルシオン将軍とワイゼム大佐が居れば、ワイアルド支部長は私の方をしっかりと見つめながら満足げに頷いていた。


「おお!」と感嘆するカークさんやゴアズさんたちに、

「まじかよ?」とドルスはぼやく、

 その隣で満足気にじっと笑みを浮かべるプロアが居れば、

 パックさんも頷いていた。

 

 ソルシオン将軍が言う。

 

「特級は現時点までで57名しか資格者が現れていない。現在存命の特級資格者は7名、エルスト君、君はその8番目となる」

「は、はい!」


 そしてダルムさんが私にこう告げて来る。

 

「良かったな、実家の爺さんやおふくろさんにも顔向けできるだろうぜ」


 本当にその通りだ。職業傭兵を続けると言う決断がこの結果につながったのだ。お爺様もお母様も喜ばないはずがないのだ。


「はい! ありがとうございます!」


 そこにカークさんが言った。

 

「特級職は軍の上級将校と同格に扱われる。さらに官報にその名が記載され政府や軍内部でその存在が知られる事となる。その重圧はハンパないものだが」


 だがプロアが私を励ますように言った。

 

「俺達がいる。心配すんな」


 ドルスが言う。

 

「そう言うこった」


 私たちもそんな会話に満足気に頷きつつソルシオン将軍は告げる。

 

「チームワークは良好なようだな。さて、貴殿たちもう一つ告げる事実がある」


 意味ありげなその言葉にみんなの視線は一つに集まった。

 

「今回の一件で、軍中枢ではある結論を導き出すに至った」

「ある採決ですか?」


 私がそう問えば将軍は答えた。


「すなわち、軍単体で困難な事例を解決するには限界があると言う事実だ」


 その言葉に一番はっきり頷いたのはドルスだった。


「でしょうね」


 彼なりに軍の現状には忸怩たる思いがあるのだ。


「現状のまま進んで行けば、いつか致命的な事態が生じかねない」


 将軍は頷きながら言った。


「その通りだ。フェンデリオルの防衛体制が正規軍と職業傭兵と市民義勇兵の3極体制で動いている以上、それらをどう連携させるかは今までもこれからも続く重い命題になる」


 カークさんが将軍に言った。


「今回のワルアイユ領の騒動などは、軍内部の自浄機能がまともに働いていればここまで被害が拡大することはなかったはずです」

「そのとおりだ。全く面目もない次第だ。現在、我々は正規軍の大幅改革を目指して人事面でも大鉈を奮っている最中だ。現在の元帥であるベッセム候は現状の責任を取り退任する運びとなった」

「元帥閣下が退任!」

「そうだ。すでに後任は策定済みだ」

「軍の大改革って訳ですか」

「そのとおりだ。今こそこの国の軍隊は生まれ変わらなければならん」


 将軍の言葉はまさに覚悟そのものだった。

 ドルスがしみじみと言う。


「国家の命運と、戦場に立つ連中の命がかかってます。今度こそ、確実にお願いいたしますぜ」


 ゴアズさんも言う。


「本当に、確実な一手を心から願います」


 ふたりとも戦場で巨大な無念を背負うこととなった経歴を持っていた。もっと早く改革が始まっていればと心のなかで思っているに違いなかった。そんな無念を受け入れるように将軍はうなずいた。


「無論、心得ている。戦場での兵の命を無駄に費やすことのないように、正規軍内外の根本的な改革が行われることが決定している。さらに、ここに揃っている諸君はすでに知っているだろうが、エルスト君の

ご実家筋でモーデンハイム家、そこの現当主であられるユーダイム候が先の元帥を努めていたのは承知のことと思う」


 その言葉にカークさんが頷いた。


「はい、承知しています。先だって、ルスト特級のご実家でお会いいたしました」

「そうか、なら話は早いな。元帥が新任の者に交代するに当たり、ユーダイム候が正規軍に正式に復帰することとなった。参謀本部特別相談役と言う肩書きで後進の育成に当たるとのことだ」

「お祖父様なら、まだまだ活躍できると思います」

「ほう? 孫である君から見てそう思うか?」

「はい、年寄扱いを嫌う人ですし、むしろ、かねてから復帰してくてウズウズしていたのだと思います」

「そのとおりだ。軍上層部ではとうとう帰ってきたと噂しあっておるよ」

「やっぱり!」


 将軍と私の会話に皆は笑い合っていた。

 将軍閣下は更に語った。


「それらの改革案の一つに今までにないプランが実行に移されることとなった。そのための軍上層部の決定が下され、それを申し渡すために我々がこの地に訪れたというわけなのだ」

「今までにないプランですか?」


 私はおどろきつつ問う。


「そうだ」


 その明快な言葉に対して驚きの声が漏れる中で将軍は言う。


「さて、今回君たちに申し渡す軍上層部の採決だがこう言うものだ。すなわち『優秀な職業傭兵による専任特殊部隊』を創設する必要性だ」


 一瞬、場がざわめく。驚きの声が次々に漏れた。私は私見を述べた。

 

「つまり、私達みたいなメンバーをあつめて特殊部隊チームを造ると言う事ですか?」


 私の言葉に将軍は言う。


「察しが良いな。ルスト〝隊長〟」


 さらにメイハラさんが言った。


「今回、全員を準1級以上に昇格したのはそのためです」


 準1級以上ならば、中隊長以上の指揮が採れるし、少佐以上相当の指揮権となり、部隊そのものの独立性が維持できるのだ。

 ワイゼム大佐が告げた。


「ここに集められた8人をもってして、軍外郭専任特殊部隊を創設することを宣言しここに辞令を発する事となった」


 メイハラ中佐が8枚の書類をわたしたちに渡してくる。


「これがその辞令書です。異議のある者は申し出てください」


 だがそこにみんなが言う。

 ドルスが答える。

 

「あるわけねぇでしょう」


 ゴアズさんが満面の笑みで言う。

 

「このメンバーでやれるなら本望です」


 パックが抱拳礼(ボウチェンリィ)を示して言った。

 

「謹んでお受けいたします」


 バロンさんがうなずき、プロアがぼやく。

 

「やるしかねえな。目の離せない〝隊長〟が居るし」


 ダルムさんも笑いながら言う。

 

「どこすっ飛んで行くか分かんねえからな」


 そして最後を締めるようにカークさんが答えた。

 

「そういう事ですぜ。将軍」


 みんなの声が集まったことでソルシオン将軍は言った。


「良いだろう。異論無しとしてここに部隊創設を正式に宣言する。そこで名称だが、なにか希望はあるかね? ルスト隊長」


 その言葉に皆の視線が私のもとへと一斉に集まった。

 その視線の一つ一つに答え返しながら私はこう応えた。


「『すべての色が意味を持ち絵画は成り立つ』――昔教えを受けた恩師の先生から聞いた一節です。組織の中で個々の人間の在り方と意義についての言葉ですが、この世には意味のない無用の存在の人はいないと心得ています」

 

 そして力強く私は言った。

 

「虹のようにオーロラのように、あまねくすべての彩を放つ者たちの意味を込めてこう名乗りたいと思います」


 私は力強く告げる。


虹彩(イリーザ)傭兵(ソルドゥーロ)(トルーポ)


 その部隊名が誇らしげに響いた。

 ワイゼム大佐は大きくうなずいて宣言した。


「良いだろう、それでは部隊名コードを正式に虹彩(イリーザ)とする!」


 振り返って仲間たちの顔を眺めれば納得してくれているように頷いていた。


 プロアが言った。


「いい名前だな」


 バロンさんが言う。


「ええ、悪くありません」


 私が決めた部隊名については、みんなの感想と反応はまずまずのものだった。

 そして最後を締めるようにワイアルド支部長がこう言ったのだ。


「頼んだぞルスト! この国の明日はお前の双肩にかかっているからな!」


 私はそれに誇らしげにこう答えた。


「はい! お任せください!」


 今こそ私たちの冒険の旅は始まったのだ。

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