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論功行賞 ―皆への評価―

 そして、ソルシオン将軍が言う。


「さて、いよいよ諸君らに対する論功行賞の発表となる。すでに特別報奨金の支払いは行われているのは皆承知していると思う」


 皆が無言で頷きながらソルシオン将軍の言葉に耳を傾けていた。


「事件関係者の処罰が確定したことに合わせて、諸君らに関する評価が下されることとなった。今から、それについて申し渡す。メイハラ中佐」

「はっ」


 いよいよだ。あのワルアイユでの出来事を経て、私たちがたどり着いたその結果が明らかになるのだ。

 メイハラ中佐は落ち着き払った顔で告げた。


「それでは、ここに集まった皆様の論功行賞について階級順にお伝えしたいと思います。まずは3級職の3名から」


 該当する人の名前が順次呼ばれる。


「ルドルス3級」

「はい」

「ルプロア3級」

「はい」

「ランパック3級」

「はい」


 まずはこの三人が呼ばれた。


「皆さんには、いずれも準1級への昇格が確定しました。さらにランパック氏についてですが」

「はい」


 パックさんが緊張した面持ちでメイハラ氏に視線を向けている。そして語られたのは驚くような現実だったのだ。


「貴方の今回の功績が高く評価され、フェンデリオル政府、ならびに法務局から〝帰化〟が認められる事となりました」

「帰化が?!」

「はい、貴方はフェンデリオルの国民として認められ正式に国籍が授与されます。もちろんこれはフィッサールの政府筋にも承認されている採決です」


 パックさんは驚きのあまり言葉が出せないでいる。そんな彼の背中を押すようにワイゼム大佐は言った。


「ランパック殿」

「はい」

「君は自由だ」


 それはあまりにも大きい成果だった。

 故郷であるフィッサールを離れ、海を越えて、諸国を巡って幾歳月。彼の心の中には常に大きな影が差していた。

 だがその影はついにはらわれた。やっと自由の身分を手にしたのだ。


 パックさんは、右拳を握り、それに左手を添えて武術家としての最大限の礼儀である抱拳礼(ボウチェンリィ)を示した。そして彼の口から絞り出されるように、切なる思いが語られたのだ。

 

「自由を夢見て幾星霜――宿願は叶いました。この御恩、決して忘れません」


 ダルムさんがパックさんに言う。


「パック」

「はい!」

「ついにやったな」

「ありがとうございます!」

「もう、悪夢にうなされる事もなるなるだろうぜ」


 奴隷身分からの開放。それがとうとう達成されたのだ。

 私も彼に祝福の言葉を送った。


「パックさん。おめでとうございます!」

「はい、ありがとうございます」

「これからもあなたのその拳をこの国のために使ってくださいますね?」

「無論です! 生涯をかけてこの恩に報いたいと思います」


 それは包み隠さぬ本心だった。彼なら本当にやってのけるだろう。将軍も大佐も満足げにうなずいていたのが印象的だった。

 メイハラ中佐が言葉を続ける。

 

「続いて2級職3名となります」


 再び、3人の名前が順番に呼ばれた。


「ダルカーク2級」

「はっ!」

「ガルゴアズ2級」

「はっ」

「バルバロン2級」

「はっ!」

「皆さんには、いずれも1級へと推挙されました。1級職は本来であれば短期の軍事研修が必須なのですが、皆様は元軍人である事から、これまでの軍歴を評価してこれをもって必要な研修と判断しました。よって今回の事例交付をもって正式に1級に昇格となります。

 そしてバルバロン・カルクロッサ」


 ここで意外な人物の名前が呼ばれた。彼に対しても驚くような決定がなされていたのだ。


「はっ」

「あなたには特赦にともなう刑の執行の停止が課せられていましたね?」

「はい」


 そうだ、彼には妻殺しの罪に対する刑が課せられているのだ。


「ですが今回は功績が多大であると評価され、これにより本来の刑の減刑の判断がなされました。死刑から懲役10年へ減刑です。さらにこの事実に対して特赦判断があらためて適用されたことで放免と言う判断となりました」


 すなわち、罪に対する処罰の全てが解除されたことになるのだ。


「えっ!?」


 驚くバロンさんに、ソルシオン将軍が言った。


「バルバロン。君には君自身の意思で戦場に立ってもらいたい。今の君ならできるはずだ」

「身に余る厚情、痛み入ります。粉骨砕身の思いで事に当たらせていただきます」

「うむ! 期待しているぞ」

「はい!」


 今の彼ならこれからもその腕前をいかんなく発揮してくれるだろう。

 メイハラ中佐の報告はなおも続いた。

 

「そしてギダルム準1級」

「はい」


 うなずくダルムさんにワイゼム大佐は言う。


「貴君には本来であれば1級への昇進がふさわしいのだが――、どうかね?」


 そう言われてもダルムさんは苦笑するしかない。

 

「勘弁してください、この歳で改めて軍事教練はきついですぜ」

「であろうな」


 ワイゼム大佐もソルシオン将軍も苦笑いしていた。

 

「その代わりとしてだが、貴君をワルアイユ領運営の領主補佐として、推挙しておいた。聞けば亡くなられたワルアイユ領前領主バルワラ候のご親友だと聞いた。領主補佐の立ち場があれば、ワルアイユの者たちからの相談にも公私ともに乗りやすくなるはずだ」


 これはこれで粋な計らいだ。

 

「こいつはありがてぇ。アルセラの嬢ちゃんや、メルト村の連中の事が気がかりだったが、門外漢の立ち場では言える事できる事に限りがあります。謹んで受けさせていただきます」

「うむ、たのんだぞ」


 これもまた満足の行く評価の結末だった。

 勝利と安寧をもたらした彼らに、それぞれに見合った栄光がもたらされたのだった。


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