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絡み合う愛情と憎しみ 少女は誰の手を掴むのか  作者: 如月麗羅
第2章 反乱軍,レオンルート
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エピローグ

遅れました。ごめんなさい

あれから、半年以上の時が経った。

森の奥深くの小さな家から、少女の楽しそうな声が聞こえてくる。


「レオン、早く帰ってこないかなぁ。今日は結構美味しそうなのが作れたから、早く褒めてほしいのに…褒めてもらうの、楽しみだなぁ!」


少女、レノアは自分で作った夕食を机に並べ、愛する人の帰りを待っていた。少しして、玄関のドアが開く音が聞こえる。レノアの表情が、キラキラと輝くような笑顔に変わった。鎖が引っかからないように気を付けながら、玄関へかけていく。


「レオン!レオン!!お帰り、お仕事お疲れ様!」

「レノア、ただいま…!」


帰ってきたレオンは、レノアから外を隠すようにすぐにドアを閉め、レノアを抱きしめた。


「レオン、あのね!今日は結構美味しく作れたと思うの!だから、たくさん食べて!」

「あぁ、もちろんだ。レノアの作ったものならいくらでも食べる」


2人は幸せそうに笑い合いながら玄関から部屋へ向かった。



◇◇◇◇



「レノア。今日は見せたいものがあるんだ」

「見せたいもの?」


食後、レオンにくっついていたレノアは、レオンの言葉に首を傾げた。見せたいものとは、なんだろうか?

「これだ」と言ってレオンが見せてきたのは、薄汚れた銀色のリボンだった。


「リボンだねぇ。汚れてるけど、どうしたのこれ?」

「……それだけか?」

「え?」


レオンの言っていることが良く分からなかった。それだけ、とは、どういうことだろうか?

首を傾げていると、突然レオンが満面の笑みを浮かべた。そして、力強く抱きしめてきた


「レオン?」

「いや、分からないなら良いんだ。レノア、愛している」

「っ!わ、私もっ、レオンが好きだよ!」

「はは、嬉しい。ありがとう……それでレノア、実はプレゼントがあるんだ」

「プレゼント?」

「あぁ、これだ」

「まっ、待って!」


プレゼントを出すためかレノアを抱きしめた腕を離そうとしたレオンを、即座に大声を出して止めた。


「どうしたんだ?レノア」

「実は、私もたまたまプレゼントがあって、先にそれ渡したいから、持ってくるね!」


そう良い、レオンの返答も聞かずに部屋を出てキッチンへ向かった。



「っ……なんで…!」

1人キッチンへやってきたレノアは、そっと自分の頬へ触れた。その頬は、冷たく湿っている。


見せられたリボンが、どういうものかなんて全く分からなかった。ただ、心になにかつっかかるものがあった。そして、胸になんとも言えない感情が溢れ出し、目の奥がつんとした。

涙が溢れ出す予感に、無理やり理由をつけてレオンの前から逃げ出した。自分でも意味の分からない涙を見せて、レオンを心配させたくなかった。それに、なんだかこの涙は見せてはいけないような、そんな気がしたのだ。


どうにか気持ちを落ち着けようと、深呼吸をする。そうすれば段々と落ち着いてきた。涙の跡を消すため、顔を洗う。

けれど、少しあのリボンのことが頭をよぎっただけで、また涙が溢れだしそうになる。



「レノア、何を考えてるんだ?」

“ビクッ”


突然背後から聞こえた声に、肩を大きくビクつかせた。その衝撃で溢れ出しそうになっていた涙は止まったが、何故か体が震えだしてしまう。


「レ、レオン!別に、何も……」


なんだかリボンの話題は出してはいけないような気がして、即座に誤魔化してしまった。

レオンが、背後からそっと抱きしめてくる。


「それなら良いけど……もし俺意外のこと考えたら、鎖の長さもとに戻すから」

「やっ、ヤダ!」


それだけは、それだけは絶対に嫌だ。

鎖が前の長さに戻ってしまったら、一人ぼっち、苦しくて、怖くて……


全身を恐怖が支配して、すぐにリボンのことを頭から追い出した。苦しいのはもう嫌だ。だから、考えるのをすぐにやめないといけない。

考えないために、別のこと、つまり、レオンのことを必死に考える。

体に回された腕も、手首足首についた枷も、今は何よりも恐ろしいものに感じた。



しばらくそうしていると、レオンがそっと声をかけてきた。


「なぁ、レノア。プレゼントってなんだ?」

「あっ!え、えっと…これ……今日作ってみたんだ。レオンに食べてほしくて……」


そう言い、小さなケーキを取り出しレオンに見せる。


「これ、作ってくれたのか。レノア、ありがとう!嬉しいよ」

「どっ、どういたしまして!」


レオンから感じる恐怖が無くなったように感じて、ほっと肩の力を抜いた。



「レノア、俺からも…誕生日おめでとう、レノア。これ、貰ってくれないか」

「へ、誕生日……?今日、私の誕生日なの?」


レオンが渡してきたのは、綺麗に包装された縦長の箱だった。レオンの誕生日という言葉に、目を丸くする。日にちなんて全く意識していなかった。今日は、自分の誕生日だったのか。


「あ、ありがとう、レオン!凄く嬉しい!」

「喜んでくれて良かった。レノア、これからも俺だけのものでいてくれ」

「…うん!もちろん!」


レオンの言葉に、大きく頷いた。

頷かない理由なんてない。だって、レオン以外の人のことを思い浮かべることが出来ないから。レノアの世界には、もうレオンしかいない。レオンに見捨てられたら、レノアは独りぼっちになってしまう。だから、レノアは永遠にレオンのものでなくてはいけない。

リボンのことも、胸につっかえる何かについても、考えてはいけない。


これでレオンルートその1は完結です。ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。

次はレオンルートその2です。10話 1番大切な人 の続きからです

投稿はしばらくお休みして、しっかり考えてから投稿再開しようと思っています。

いつになるか分かりませんが、また読んでくれると嬉しいです

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