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王国一の美少女らしいですが、三食昼寝より魅力的なことってありますか? 【連載版】  作者: 京野きょう


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第1話・薄幸の美少女?

 私は顔が良いらしい。


 王国一の美少女だのなんだのと、そんな噂が勝手について回っている。

 ただの子爵家の令嬢だと言うのに。


 見目麗しい。


 ただそれだけの理由で幼少期に誘拐されかけること数回から始まり──

 夜会に出れば途切れないダンスのお誘い。

 令嬢以外からの茶会の誘い。

 学園へ通い出してからは、中庭への呼び出し。


 確かに私は、この顔で得をすることも多かった。


 でも……。

 夜会では他の令嬢からのやっかみや、嫌がらせの数々。

 ワインを零され、ドレスを駄目にされたことが何度あったことか。

 ヒソヒソとこれ見よがしに噂を立てられる。

 私は彼女達には何もしていないというのに。


 普段お茶会などしない殿方達からのお茶会の誘い。

 一度行ってみれば、二人きりのお茶会という名のデートだった。

 これ以降くるお茶会と名のつくものには参加はしなくなった。

 元々、令嬢からのお誘いなんてなかったけれど。


 学園に通い出すと、初日からお茶会やデートのお誘い。

 学問を学ぶための場所だというのに、休み時間、放課後……常に誰かしらに話し掛けられる。

 その内容は私を褒め称えるものばかり。

 ひと月も経つ頃には、中庭へ呼び出され告白をされる。

 断り続けるのもしんどくて、いつからか中庭へは行かなくなってしまった。

 告白を断るだけで疲れるのに、その後「どうして駄目なんだ。」と聞かれるのはもっと疲れる。


 令嬢達から向けられる悪意も、この頃から露骨になった。

 教科書を破かれる、隠される。

 花瓶の水をかけられる。


 私がこの人達に何かをしたことは一度もないのに、殿方と仲良くしている、ただそれだけで嫌がらせは加速する。


 私は恋愛がしたくて学園に通っているわけではないのに。


 でも私は負けなかった。

 こんな人達に屈することもしたくなかった。

 学園へ通うたったの六年。


 私の夢のために。


 誘いが激化して以降、体調が芳しくないという理由で何かにつけて断り続けた。

 そして付いたあだ名が──


「薄幸の美少女」


 ぷぷっ。

 あ、笑っちゃった。

 今のなし。


 私の意思など関係なく、噂もあだ名も勝手に走り続ける。


 だからなのか。

 今までのツケが回ってきたのかもしれない。


 結婚適齢期の十六になった現在。

 今日も今日とて見合いの話が来る。



「リズリットお嬢様、こちら新しい釣書です」

「また……?」


 月に何度も届く釣書。

「この方なら家柄的にも釣り合いが──」とか、執事のセバスチャンが丁寧に説明をする。


 正直に言うと、釣書が届く量にはうんざりしている。

 釣り合うとか釣り合わないとか、どうでもいいのよ。


 私の外見ではなく、内面を見てくれる殿方と燃えるような恋がしたいの──


 そんな妄想をしていると、セバスチャンが釣書の束を目の前のテーブルに置く。


「お嬢様、聞いてますか?」

「もちろん聞いているわ。でもセバスチャンも私のこと理解してくれているでしょ?」

「お嬢様が生まれる前からこの家にお仕えしておりますからね」

「うふふ、そうよね」


 私は立ち上がり、その釣書の束を手に取った。

 そしてペラペラとめくりながら軽く目を通す。


「これお嬢様、歩きながらなんてはしたないですぞ」

「分かってるわよ──ああっ!」


 うっかり足がつまづいてしまい、これまたうっかり手を滑らせてしまった。


 ──ばさばさっ


 手にしていた釣書の全てが、暖炉に飲まれていく。

 薪をくべたばかりだからか、良い具合に燃えていた。

 あらあら、紙ってよく燃えるのねー。


「あっ、ごめんなさーい! つまづいちゃったわ!」

「……何につまづいたのですか?」

「うーん、絨毯の毛……かしら」

「以前も同じ理由でしたが?」

「うーん、人生につまづいたのかもしれないわ」

「誰が上手いことを言えと言いました」


 呆れ顔でため息をつくセバスチャン。


 結婚なんて嫌よ。

 なんでかって?

 そんなの理由はただ一つ。


 面倒だもん。


 どうせこの顔が良いと言われる私を、お飾り妻にしたいんでしょ?


 王族相手なら妃教育とか色々ね。

 貴族相手ならマナーや教養とか色々ね。

 分からないけどそういうのが始まるんでしょ?

 それでいて、愛想良くニコニコ笑って隣に佇んで。

 嫌がらせも国レベルとか家同士の規模になるんでしょ?

 ぜっっったいに、いや。


 私が今までのくだらない嫌がらせに屈しなかった理由。


 令嬢同士の嫌がらせと、国や家が絡む問題。

 どちらが面倒かなんて、比べるまでもないわよね?


 そして私の夢は──


 このまま両親の脛をかじって、三食昼寝付きでのんびりと過ごすこと。

 特にお昼寝は外せないわ。


 その為にはどんな困難も乗り越えてみせる。


 え? いいように言うなって?

 こちとら人間不信になりそうな令嬢なのよ。

 休息って大事なことだと思うのよね、うん。

 むしろ未だ人間不信になっていない私を褒めて欲しいくらい。


 爵位を少しでも上げたい両親には申し訳ないけど、その辺はお兄様に頑張ってもらって欲しい。


 燃えるような恋なんて必要ない。


 したがって、釣書なんてもっと必要ないのよ!!

 燃えるような恋の代わりに燃える釣書。


 なんちゃって。


 ぷぷーっ。

 セバスチャン、座布団持ってきてー!

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