ビビりベビーに保護者が増えました。
頼もしい仲間が、増えました。
☆
昔々は戦乱の頃……。
確か1000年位前。
たぶん。
緑風の狂瀾怒涛というモンスターが居ました。
今は居ません。
めでたしめでたし。
はい。
私の話は終わり。
今は村の守護者というか、村長というか、ただの樹華霊人として静かに暮らしたいのよ。
だから村に産まれた子供が異界人とか、そーゆー波瀾の予兆的なの、いいので。
……って思っていたんだけどね。
「スライー、はい、木苺ジャムよー。あーん」
兎人族の母親が木匙で差し出したジャムを、そのままパクッとして、その子は笑った。
「……ぁんまあーっ!」
なに。
何この生き物。
ヒヨコをぽてまるっと赤ん坊にしてみました、どう?
って最高だよこの世界に乾杯!!
人の笑顔が眩しいなんて、無いと思ってた。
はぁん、雛鳥より新芽より子猿より仔犬より小兎より仔猫より可愛いぃいぃ。
顔面崩壊しないよう全力で繕いながら、頭を撫でてみる。
眼を細めて手のひらに寄り掛かってきた。
あっ、温かあい。
眠いのかなぁ、体温高いなぁ、髪の毛ふわっふわだぁ、マズいニヤける……。
「美味しい? よかった、また持ってくるわ」
撫でる手を止めずに、微笑みをキープ。
不自然にならないよう、魔力を使ってでも動悸をコントロールする。
でも治まらない。
ドキドキしちゃう。
落ち着くのよ。
何なのこの昂りは!?
何か解らない衝動が、この子から視線を逸らさせない。
「すみませんグリン様、態態お越し頂いた上、お土産まで……」
「いえ、いいの、新しい命は私も嬉しいもの」
此処に来るまでの私は嘘だ。
この子、可愛い。
全身全霊全力で愛でよう。
しかし、おかしい……。
この村の他の子供にこんな気持ちを持ったりしなかったのに。
……ひょっとして…… 一目惚れ、かしら。
グリン・ガラル・ムート、齢千と250才になって、初体験だわ。
番いとして吸い尽くした人型は数多く居たけれど。
傍に居続けたいと思ったのは初めて。
精気を吸いたいとも思わない。
頼られたい、求められたいと感じているのは…… 母性とも、違う。
自分の子供は、あくまでも子供だわ。
私の場合は、種蒔き、芽吹き、苗と成ったら独り立ちだから、何処で如何しているのか知らないけれど。
「ぃーにぉぃ……」
はあぁん。
手に頬擦りされたアァアっ!!
よし連れ帰ろう。
っ、待て。
状態異常回復!
回復力が足りないかしら。
「あ…… ら、眠そうね」
「この子、夜泣きしないんですけど、人見知り凄くて。グリン様は大丈夫みたいですねー」
何それ私は大丈夫?
って、アタシも大丈夫よ、良い子ね。
じゃあ一緒に帰りましょ。
っ、ま、待ってー!
状態異常回復!
「可愛らしい…… こと」
「匂い、かしらー。好きな匂いがするのかもねー」
「い…… やだ、何か臭うかしら」
「いーえー、この子、過去の記憶を持ったまま生まれ変わっているらしいので、昔の生活で好きだった香りがするから、きっと落ち着くんですよー」
記憶を保持した生まれ変わり?
それって転生者?
「異界人じゃないの?」
「境界渡りの生まれ変わりとは違うらしいですー。詳しくは夫か、ティグルから聞いてください。私じゃ、上手く説明できなくてー」
異界と現世界を往き来してしまった人を、境界渡りと呼ぶ。
大体、健常なままでは戻って来られない。
体の構造に異常を来していたり、精神状態が異常だったり。
だからこちらに戻れた時に、輪廻に戻れるように祝福印を魂に付呪し、留めを刺される。
産まれた子供に祝福印のアザが有れば、生まれ変わり出来た境界渡り、つまり異界人と呼ばれる。
多くが変わったギフトを受け、多様なスキルを発動するらしい。
異界の異能と、忌避する人も少なくない。
隠れ里たるこの村でさえ、そんな人は居るだろう。
厭な偏見だ。
しかし、転生者といえば、また別の話。
転移勇者や、転生賢者と伝説に語られる物語的な人じゃないの。
「じゃあこの子、重複存在なの?」
「え」
「生き返ったとは聞いていたの」
転生者が宿る、つまり、元々の赤児に加えて魂が重なる。
二つの魂が、存在が重なっているから、重複存在と言う。
そんな不安定な…… 危うい心、精神を持つようには見えないけれど。
掌にちゅっ。
キス?
ふあっ、ちょー可愛い!!
危ういのは私の意思だった。
状態異常回復、状態異常回復、状態異常回復!!
「すみません、よく、解らないんです。神の代行者が現れて助けてくれたのは秘密にしろって夫から言われていたので」
さらっとバラしてますけど?
神の代行者ぁ?
私の眠っている間に何て事。
……そう、そうか。神の、代行者が、誘ったのならば。
「そうね…… 秘密は守るけれど、この子、神の庇護下なのね?」
我が祖は…… 神の子を助けるために生まれた、らしい。
つまり私が、この子を助けたいと感じているのは、種族的な直感が働いていたのかも。
助けてあげたい、守りたい、保護したい。
確保して独り占めした…… っ、状態異常回復!!
神の繰り言が聞けたなら、親にも祝福が掛かっていても良さそうだけれど…… 相変わらずね。
多種族に偏見は無いし、寧ろ人型は番いとして全て均しいつもりだったから。
この子を……。
「私が…… いえ、この村で護りましょう」
「それは、有難いです!」
神の顕現なんて、我が根の届く範囲では200年位聞かない。
大事件発生なのにのんびり屋ね。
この赤児に、神が何をさせるのかは解らないけれど、私はそれを助けるために生き永らえているのだろう。
静かに暮らしたいというのはあるが、思し召しには逆らいたくない。
「私も立ち会えば、良かった……」
波瀾の予兆どころではない出来事、その中にあって、赤児は眠り込む。
守りたい寝顔。
邪魔をする者には狂瀾怒涛に立ち返ってでも鉄槌を下すわ。
確実に。
徹底的に。
(状態異常=魅了(溺愛)、狂気(先祖返り))
スライ・オーニス Level=1
状態=ハイハイ新記録更新中
称号受領待ち(二件)
職業=赤ちゃん 称号=神の愛し子、誰彼誑し
ギフト=?
スキル=全種族魅了
?
魔法=?
ロギー・オーニス Level=72
状態=魅了(溺愛)
称号受領待ち(一件)
職業=狩猟者 称号=騎士
ギフト=「空気の階段」高低差無効、跳躍、登攀
スキル=跳躍力向上(大)
剣術特化
槍術特化(大)
防御力増加(大)
弓術特化
魔法=無し
グリン・ガラル・ムート Level=621
状態=魅了(溺愛)、狂気(先祖返り)
称号受領待ち(一件)
職業=村長 称号=隠者
ギフト=「大地の友人」気配察知、探索、自然環境支配Level/8
スキル=白、精神魔術強化
常時体力回復
変身Level/4
魔法=白、精神魔術、地霊呼応




