ビビリがまだバブリシャス
やっと動けるようになった主人公って、遅すぎやしませんかねぇ。
☆
現在、産まれてから半年程。
掴まり立ちにチャレンジしている今日この頃。
皆様、如何お過ごしでしょうか。
スライ(ビビリ)です。
赤ん坊としてただじっとしていたくないので色々考えたり動いてみたりしています。
けれど、体がちっちゃいのは辛いね。
体は赤子、中身は大人?
でも知識が足りないんですよ。
事件も起きて欲しくないし。
自分はどうやらこのフルオロ村で久し振りの子供だったらしい。
喜んでくれていた両親と、異形のご近所さんが話してた。
村の全人口は80人ちょっと。
少ない。
辺境(仮)地域の隠遁生活なので、時事的には多いらしいけれど。
14才以下の「子供」は俺を含めても6人だけとか。
13才の女の子に、12才の男の子、6才の女の子と、5才の双子の兄弟。
15才からは成人扱いなのだそうだ。
飲酒も、喫煙も、結婚も成人ならOKと。
因みに麻薬とかの薬は厳罰化されてない。
嗜好品の一つとして高い税金が掛かっているだけで。
税とかは隠れて暮らすこの村には関係ない。
国に属していないから税金は掛からない。
その分、国の政策やら事業計画やら貿易やらの恩恵もないが、振り回される事もない。
国についてはその内詳しく聞いておこう。
しっかりした国家体制の残る国は近くに無い様だ。
……奴隷制度ある世界に、政治は期待してないけどね。
ベビーベッドという檻の中で奮闘する俺に、声がかかる。
「こんにちはーっ。スライ君は、元気?」
「あぶっ?」
「あっいたいた!!」
基本、この村の住民は多種族、亜人と呼ばれる人々が殆どだ。
外見も多種多様。
しかし、あ、無理。
「うっ…… ぁんぁ~!!」
泣いてしまった。
「ゴメンねぇ、怖がらせちゃったわ」
「あー、レモちゃん、いらっしゃいー」
「あぁ~あん!!」
ダメだった、ごめんなさい。
この外見、見慣れねえ。
「一つ眼が恐かった~?」
「仕方ないわぁ、赤ちゃんだものー」
単眼鬼人のムキムキお姉さんがギョロッとこちらを見下ろしながら笑う。
目の色が紫色で、肩にとどくか位のボサボサの髪の毛は白い。
その髪の中に小さな黒い角が3本見えた。
悪い子はいねがー?
……と言われても違和感ない。
村唯一の鍛冶屋の娘さん。
レモテトラ・ゴォド。
13才。
うーん今ならお姉さん、か。
身長は父と同じくらいだから、170㎝以上ある。
胸は、まだない。
いいか、まだだ。
「ぁんぁあ~!!」
外見がちょっと特徴的で、子供の感性的にアレなので泣いてしまってゴメンナサイ。
言葉に害意がないのも分かっているのだけど。
父の英才教育のお陰で、名詞や動詞などの単語、喋り言葉は聞く分にはだいぶ解る様になりました。
読み書きはまだサッパリ…… 書けないしな。
毎日寝物語と、会話だけじゃフォロー仕切れない名前、形容詞とかは辞書を何度も読んでくれた。
英才教育とは、父が根気よく教え続けてくれた結果。
ありがとうを早く言いたい。
全く、流石は賢者様。
歯もろくに生え揃ってない口はまだまだ喋るに足りないので、よく飲み、よく食べ、良く泣き、良く寝て成長を促しております。
歯は二本だけ生えてきて、ちょっとムズムズする。
今の段階では俺、まだ0.5才。
そりゃあ一つ眼相手ではビビるよ。
女の子と言えども。
ま、母以外の女(の子)に何かを求めたりしないし、色恋なぞ、まだまだ未開の大地だ。
……前も今も。
な、泣いてなんか、いないんだからねッ!!
「おーよしよし」
「びぇっ、えっ、ぇぅ……」
あ、俺、泣いてた。
俺の中に、元々の体の持ち主である魂がある。
……と言われても、実感は湧かない。
代行者さんにも
[暫くは同化で過ごしていただいて、何れ成長が見られたならばまたご両親と相談しましょう]
などと提案されているが…… う~ん。
同化。
赤ちゃんの魂と同化ね。
多分、俺のビビリと赤ちゃんの人見知りが併さって、どんな相手でも泣いてしまう現状がある…… 様な気がする。
やっと、落ち着いてきた。
「あ~ん、可愛いなぁ」
「でしょっ!?」
「黄色い羽根がまん丸いから、背中から見るとハートマークだね」
「可愛すぎて悶え死にそうよねー?」
「……イヤマアソウデスね」
母とレモさんの言っている意味が解らないが、母親に向けられた視線が痛いモノ見る時のだという事は解った。
「あっと、ロギーさん。ご注文の鍋、持ってきたの」
「ありがとー。うちの夫、まだ重たい物を持たせてくれなくてさ」
「ふふふ、ご馳走様です」
そう言いながらレモさんが、大人でも入れそうな黒々とした特大鍋を竃に乗せる。
すげえ。
軽々と設置しているが、置いた瞬間は重たい音がした。
単眼鬼人は伊達じゃないな。
この村ならではの混血だが。
お父さんはドワーフで、お母さんが単眼鬼人。
だから、半鬼人とも呼ばれている。
どちらかと言うと、見た眼の方が採用されてるけれど。
ん、上手い事言った。
「じゃっ、私はこれで! またね、スライ君」
手を振って立ち去ろうとするレモさんに、手を振り返そうとして右手を伸ばす。
もっと高く伸ばそうと左手でベビーベッドを掴む。
せめて、ちゃんと手くらい振りたい。
「……あ~っ?」
母が驚く。
レモさんも驚いていた。
「わぁ、たっち出来たね」
?
おっ、掴まり立ち成功ッ!!
頭も大きいし背中に羽根が有るし、バランス悪いんだよ。
蹌踉けた、と思ったら、予想通り尻餅をつく。
「うふふ、座っちゃったかー」
母はとても嬉しそうだ。
俺も嬉しくなる。
「アッ、きゃっ」
自然とレモさんに腕を振りながら、笑っていた。
「……ぅんッ!! かぅわッ……」
レモさんが、身悶える。
「うちの子マヂ天使」
母も、身悶える。
何ぞコレ。
流行ってるらしいが良く解らない。
「帰ったぞー。おや、レモちゃんいらっしゃい」
「お帰りなさいー」
「お邪魔しています」
父が帰ってきた。
今日は鹿が獲物だったのか。
首が傾いだ鹿が足元に横たわっている。
……凍ってるみたいだ。
このまま解体を頼みにお隣へ持って行くのだろう。
父は毎日、昼前から狩りに出掛け、夕方には帰ってくる。
弓も使わず、魔法だけで仕留めるそうだ。
「スライが、掴まり立ち成功したわー」
「なん…… だと……」
そんなに驚く事でもないよ?
「見逃したか…… あ~」
しかし本当に残念そうだ。
「私はその後の腕ぶんぶんと笑顔にやられました」
「そんなコンボまで? くっ……」
うーん、述語や比喩が難しくなってるのか?
またレモさんの言っている意味が解らない。
頑張って比喩も身に付けないと。
「よしっ、今日もお祝いだな」
「そうねっ、レモちゃんも来ないー?」
鍋と鹿を見て、母は手を打ち合わせて宣言した。
「紅葉鍋パーティーよっ」
「わぁい、鹿鍋料理~♪」
どうやら、またご近所と賑やかに夕食だ。
見た目はまだ恐怖けど、父と母が嬉しそうだから楽しい。
前は、両親にこんな気持ちを抱く事は無かった。
あの二人は、きっと未だに自分達の足元だけを見ているだろう。
振り返らず、手を取り合わず、結果としてしか俺を見ていなかった。
数字や大学の名前、そこから対価として養っているという事実だけ。
何だか、寂しい気分になってしまった。
「びぇっ、びえぇっ、あ~あん」
あ、俺、泣いてる。
「あらあらら、よしよしー」
「ゴメンねぇ、ウルサかったカナ?」
「おぉ、鍋が届いてたのか。ちょうど良いな」
「あ、じゃあ私が鍋に油を馴染ませておきます」
「うん、助かるー…… けどいいのかい?」
「お肉のお裾分けいつも貰ってますし」
「じゃ、早いとこ切り分けてもらおう」
「ゴォドさんちには私が話してくるー」
母に抱かれて、近所の散歩だ。
文字通り羽根を伸ばして、気持ちを切り替えよう。
子供だからこそ、成長しなきゃ。
この気持ちを、伝えたいから。
俺 Level=?
状態=掴まり立ち成功
職業=赤ちゃん
ギフト=?
スキル=???(調整中)
魔法=?
バァン・オーニス Level=76
状態=魅了(溺愛)
称号受領待ち(一件)
職業=魔術研究者 称号=賢者
ギフト=「遠き呼び声」気配察知、聞き耳、神学
スキル=黒、白、空間、精神魔術強化
常時ステータス異常回復
常時魔力微量回復
鳥目
魔法=黒、白、空間、精神、召喚魔術
ロギー・オーニス Level=72
状態=魅了(溺愛)
称号受領待ち(一件)
職業=狩猟者 称号=騎士
ギフト=「空気の階段」高低差無効、跳躍、登攀
スキル=跳躍力向上(大)
剣術特化
槍術特化(大)
防御力増加(大)
弓術特化
魔法=無し




