ビビりと女神の邂逅(全身)
☆
見上げても見回しても、緩やかな月の光に囲まれた場所。
はー…… 不思議空間。
こちら、夜の村から妖精の世界へ移動中のスライです。
温くて重たい風を受けて、段々と下へ降りていく。
異界と世界と妖精界はそれぞれが隣り合っているけれど、隙間があり、それを越える術式が『尽き鏡の潜り戸』。
水の中を進む様な感覚は、エスカレーター(下り)。
大地母神の力を借りて月の光と共に沈んで行く。
これからしなくてはならない仕事に震えてしまいそうだけど、先程まで居た世界には、大切な人達が居るからね。
がんばるぞー。
出来るだけね。
[ふふふ…… もう少しで到着します]
周囲には銀色の泡が流れ、それを縁取りにした姿見が足元にあり、僕を運んでくれている。
写している像がピンぼけに見えるのは何故だろう。
……板に乗って、泡…… 波の上。
(さーふぃん?)
実際にはやったことないけど。
[着きましたよ]
足下の姿見に体が沈んだ瞬間、青くて冷たい風が吹いた、気がした。
「……、……」
……何か聞こえた?
カレンさん。
[いえ?]
(……聞こえたね)
あ、お兄ちゃんには聞こえたんだ。
(お帰り私の~…… 何とかかな?)
小さくて聞き取り難かった。
女性の声。
[……警戒します!!]
いや、うーん、敵意は感じなかったよ。
現象としてはホラーッポイけども。
[私には貴方を守り、村へ連れ帰る義務があります]
いやぁ…… 何か優しい感じだったよね?
(うん、寒気はしたけど)
あ、そうだね。
僕も警戒しておかなきゃ。
[いいですか? 魔法はダメですからね?]
さて?
姿見から抜け出た先は上下方向がズレていて一瞬、蹈鞴を踏んだけれど着地。
周りはオレンジとピンクと赤と…… 混ざり合ってモヤモヤしてる。
遠くは見えない。
地面は黒い砂地。
あ、この回りに浮いてる青と緑の球体は、カレンさんの守護結界の具象化かな。
……層が8、9、10…… スゴイ厚さで展開してませんか。
[魔素が濃いので、貴方には有害です]
え、そんなに。
[妖精界の基礎知識おさらいです。まず時間感覚が違います。
……肉体的には変わりなくとも認識的に約9倍で進み、こちらでは妖精も精霊も会話の制約はありません。
魔素濃度は約6倍。スキルの詠唱簡略系を使っていないと魔法は暴発する恐れがあります。なので、魔法は使わないでください。
肉体による空間認識力は働かなくなるので、方向感覚的に動いてはいけません]
は~い先生。
分かりました。
[よろしい]
(あ、何か来た)
靄の向こうから、赤い影が近付いてきた。
「いらっしゃいませ」
ものスゴイ嫌そうな顔してる。
背丈は僕と変わらないから子供かと思ったけれども、声は渋い。
赤いパーカーと焦茶色の革鎧、白いパンツという取り合わせは何かちぐはぐなコーディネートだね。
顔立ちは整っていて、美少年、西欧風。
ゲームで見た、エルフって種族を小さくしたカンジ。
[そのエルフです]
え。
(ちっちゃい)
「我が名はジレドレハマンマカッファスと申します。妖精界には何の御用でしょうか神よ」
あれ。
こっち見てない。
(無視?)
ん、僕の左上…… 今、カレンさんが居るであろう場所を見てる…… のかな。
[彼には私の姿が見えていますが、声は届いていない様子]
ふうん。
僕にはカレンさんの姿、普段見えないのに。
いいなあ。
[……少し神力を使えば…… 具象化出来ますが]
や、偶像化すると流動性が乱れたり、慾望を含んだり渇望に濁った信仰心が届くって言ってたでしょう、ダメですよ。
カレンさんの体に良くないのは。
[でしたら、貴方の前でだけなら……?]
……それなら、まあ。
(ほっといて良いの?)
あ。
「おいそこの神の下僕」
「はい。初めまして。僕はスライと申します」
「神は何と申されたのか答えよ」
(上から目線のちびっこ)
[年齢は、村長位ですか]
うん、合法ショタでしたか。
なら下手で、通しましょう。
[解りました。妖精の王にお目通り願いたいとお伝えください]
「我が神は妖精の王にお目通り願いたいと」
「……それだけか? 何かをご所望ではなかったのか」
[待たせてしまったので勘繰られていますね]
(イチャイチャしてるから~)
イチャモンが付いたって。
「いえ。僕がこのフェアリアに慣れていないもので」
「亜人種族などが神の守りを戴いて訪れるのは、我の知る限りで初めてではないかな」
「そうなのですか」
「神の選別による適応性の違いが大きな理由だろう」
(所々に嫌味が入ってるね)
彼の呼び名はザンスさんで決定。
「神よ、こちらへ」
[まぁ、行きましょう]
あっ。
(あ)
カレンさん、だ。
[全身を見せるのは、初めてでしょうか]
うん、初めてだ。
白と青を基調にした鎧下の様なワンピースに、三つの菱形に細い六角?
その紋章の入った薄紅色の半身鎧、そして剣。
背中にあるのは、菱形の、盾ですね。天秤と薔薇が装飾されている。
その上には豊かな黒髪が、編み込まれて背中に流れてる。
(カッコいい)
[……どう、でしょう?]
うん、ストライク。
凄くイイ。
[あ、良かった……]
顔は何回かチラ見出来たんだけどね。
生まれ変わり前と一歳祝いの時。
優しい瞳と微笑みに安心感が溢れたよ。
(……イメージ変わったかも?)
そうだね。
最初は性別不明の事務的な喋り方だったし。
(OLさんみたいな?)
どっちかというと秘書的?
かなー。
それがホントは女性剣士の姿だもの。
びっくりだよ。
[いえ、あっていますよ、OLと秘書]
へ?
(嫌な予感がするYO☆)
[創造主が秘書を欲しがった結果、女性形態にスーツという姿になっていました。今のこの姿は、私の大元と現在の役目が顕現材料となっています]
……あのスケベ想像主め。
いや、妄想主とするべきか。
(因みに、タイトスカート? パンツスーツ?)
[スカートの時もありましたが、パンツスーツが主でしたね]
ちくしょう、良く解ってやがるっ!!
(ねー。創造主は伊達じゃない)
[今は…… カレン・メディエイタですから]
うんまあ以前は以前、今はここ。
あっ、何かが見えてきた。
というか膨れ上がっていく?
[肉体による感覚は正常ではないんですよ]
(視覚的にはもう見えていた距離も、意識が他を優先した結果、存在を認識した瞬間に視覚的に知覚されたので、おかしな映像に感じてるだけなんだろうね)
[正解。意識が主で、感覚は加速と共に解離しかけているのですよ]
うーん、良く解らない。
不思議空間なのは解った。
(解ってない)
[まだ大丈夫ですから。着きましたよ]
「よくぞいらっしゃいました異邦の神」
城の中に飲み込まれたかと思ったら、階段を滑るように駆け下り、駆け登り、謁見の間へ導かれ、玉座らしき場所に居る小さなシロクマと対面していた。
(加速がスゴい)
[ここからは対話に集中してくださいね]
……集中はしたいですが、ちびシロクマだよ?
ヌイグルミじゃないよね?
やべー、モフモフだぞ。
これは手強そうだ。
(集中は無理そう)
[称号、強制変更します……]
スライ・オーニス Level=10
年齢=6才 状態=混乱(加速)
職業=精霊使い見習い 称号=誠実な徒弟(神の愛し子)
ギフト=「壁無き友垣」対話、心理学、人類学、生物学、多言語の優良性
「狙い違わぬ指」目星、回避、隠密、追跡、投擲、技能数値への補助
スキル=「構成編集」
「全種族魅了」封印中
精神力向上(大)
集中力向上(大)
身体強化(小)
学習指導(中)
悪戯耐性(中)
身体俊敏化level.6/10
片手剣術level.7/10
盾・両手操作level.7/10
演算強化level.5/10
説法技術level.3/10
魔法=無属性魔術(上級)
空間魔術(中級)
黒魔術(上級)
白魔術(上級)
精霊魔法(中級)
ミュゼラ・オーニス Level=0
年齢=6才? 状態=魂(スライの中)
職業=なし 称号=なし
ギフト=「狙い違わぬ指」目星、回避、隠密、追跡、投擲、技能数値への補助
「壁無き友垣」対話、心理学、人類学、生物学、多言語の優良性
スキル=「構成編集」
魔法=?




